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1/15/2025, 8:16:12 AM

 あっ、やべ。
 そう思った時にはすでに荒れに荒れまくる心の内が口から漏れ出ていた。

「ほんまにおるぅ……」

 画面の向こう、自分の端末にあるデータの中で、俺がこのゲームを始めたきっかけが立っている。
 声がよくて、顔がよくて、衣装も仕草も品があって。飛び付いた先には居なかった──俺が始めた頃には既に獲得キャンペーンが終わっていた為である──が……否、居なかったからこそ、ずっとずっと憧れていた存在。俺の理想の生き写し。
 それが画面越しとはいえ、今、目の前にいるのだ。これが震えずにいられようか!

 ふと、瞼の裏にかくれていた射干玉と目が合う。
 俺は地に伏した。

 もちろん嬉しいさ。跳び上がるどころか硬直してしまうくらい嬉しい。
 ……だけど!
 これまで何年間も待ち続けて、何度神頼みしても来なかったくせにこんな日に来るか普通!?
 十周年だぞ。今日でゲーム十周年だぞ。全プレイヤーが咽び泣くちょ~お目出度い日に来るな。軽率に運命を感じてしまう。惚れてしまう。

 あっまって微笑んだ。顔を背けながらすごく小さな声で「……よろしく」って言ったよこの子。
 知識としては知ってたけど実際に見て聴いてみるとさらに可憐だな。今更だけど。惚れ直しましたありがとう。

 あああ供給過多だ!
 いっそだれかころしてくれ───!!


▶そっと #82

1/12/2025, 11:34:54 PM

 夢を見るにはなにがいる?


▶あの夢のつづきを #81

1/11/2025, 11:27:47 AM

「あったかあい」

 私の手を頬にあてて、あなたは笑った。
 さっきまで手袋もなしに屋外で作業をしていたのだからそんなはずないのに……と思ったけれど、朗らかなこの笑顔をまだ見ていたくて「そうだね」と返した。

「ねえ知ってる? 手が冷たいのは心があったかい証なんだって」
「そうなの? 知らなかった。あなたは物知りね」
「へへ、そうでしょ」

 軒の先でしんしんと雪が降り積もる。
 彼女の頬から奪った熱が、痛いほど冷えた指先の氷を溶かしていくのがひどく心地好かった。


   ***


 記憶のページをていねいに捲って、ひとつずつ、ゆっくりと見比べていく。
 あれは楽しかったとか、これは今でも許せないとか、その時は冷たい態度を取ったけど実は飛び付きたいほど嬉しかったとか、そんな他愛のないことばかり話していたので、すっかりのどが渇いてしまった。
 白湯でも飲もうかとテーブルに目をやると、向こうの窓の外の景色が視界に入る。そうして白くて軽い妖精がはらりふわりと空を踊る様子を目にしたのだ。
 その時、ふとあの日を思い出した。
 数秒考えて、彼女の頬に手をあててみる。
 雪の降り積もるあの日、私がしてもらったように。陶磁器のような肌へ、優しくていねいに。

「いつもはちゃんとカイロ持ってるんだけど、今日はバタバタしてて忘れちゃった」

 どんなに話しかけても返事はないし、どんなに笑いかけても無反応なまま。まるで当時の私を彷彿とさせる態度に、おもわず笑みを溢した。
 窓のフレームが小刻みに震える。
 あの頃と比べれば、私もずいぶんと素直に感情を出せるようになった。今なら脇目もふらずあなたのもとへ飛び込んでいける……ような気がする。

「どう? あったかいでしょ」

 あの日奪った熱を返すにはどうしたらいい?
 あの日貰った優しさを返すにはどうしたらいい?
 そんなことを考えるには、すべてが遅すぎた。

 もし本当に、手が冷たいことが心のあたたかさの証であるなら、あなたの心は、あの時よりももっとずっとあたたかくなっているはずだ。


▶あたたかいね #80

1/2/2025, 12:16:52 PM

【今年の抱負】
①規則正しい生活(早寝早起きetc.)
②ひとの話を最後まで聞く
③余裕を持って行動する
④自分を甘やかさない
⑤かといって追い詰めすぎない
⑥何事も楽しむこころを忘れない!


 謹賀新年 明けましておめでとうございます。
 どうも気力が湧かずひっそりと筆を置いていたら年を飛び越えてしまいました。皆様、変わらずお元気でしょうか。
 昨年は人のあたたかさを実感した年でした。
 年月は変わりましたが、だからといって景色が一日で移ろいはしないように、私自身の何かが突如変化したというわけではありません。ですから今年もあまり無理をせずマイペースに、しかし昨年よりもほんの少しだけ自分に厳しく日々邁進して参ります。
 2025年が皆様にとっても喜びに満ちた良い一年になりますように。
 今年もよろしくお願いいたします。

12/1/2024, 3:55:01 PM

 眠らない限り明日が来なければいいのに。
 そうしたら、嫌なことも全部遠くへやれる。
 自分を守ることだってもっと容易になるし、自衛の手段が増えれば心の余裕にも繋がる。
 余裕というものは財産だ。間違った処方をしなければいいこと尽くしである。

(ああ、だけど、それじゃあ不眠症の人はずいぶんと苦しくなってしまう)

 いつものようにおとなしく薄い二枚の毛布の隙間に体を捩じ込み、枕元に常駐するリモコンで部屋の電気を消した。
 きょうも僕らは背中を丸める。そうして、光の薄い明日から目を反らすように、夢を見るのだ。


▶距離 #80

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