あっ、やべ。
そう思った時にはすでに荒れに荒れまくる心の内が口から漏れ出ていた。
「ほんまにおるぅ……」
画面の向こう、自分の端末にあるデータの中で、俺がこのゲームを始めたきっかけが立っている。
声がよくて、顔がよくて、衣装も仕草も品があって。飛び付いた先には居なかった──俺が始めた頃には既に獲得キャンペーンが終わっていた為である──が……否、居なかったからこそ、ずっとずっと憧れていた存在。俺の理想の生き写し。
それが画面越しとはいえ、今、目の前にいるのだ。これが震えずにいられようか!
ふと、瞼の裏にかくれていた射干玉と目が合う。
俺は地に伏した。
もちろん嬉しいさ。跳び上がるどころか硬直してしまうくらい嬉しい。
……だけど!
これまで何年間も待ち続けて、何度神頼みしても来なかったくせにこんな日に来るか普通!?
十周年だぞ。今日でゲーム十周年だぞ。全プレイヤーが咽び泣くちょ~お目出度い日に来るな。軽率に運命を感じてしまう。惚れてしまう。
あっまって微笑んだ。顔を背けながらすごく小さな声で「……よろしく」って言ったよこの子。
知識としては知ってたけど実際に見て聴いてみるとさらに可憐だな。今更だけど。惚れ直しましたありがとう。
あああ供給過多だ!
いっそだれかころしてくれ───!!
▶そっと #82
1/15/2025, 8:16:12 AM