夜汽杏奈

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4/22/2023, 3:44:43 PM

「たとえ間違いだったとしても」

         夜汽杏奈

たとえこの世界の全てが間違いだったとしても
貴方を愛する気持ちは
貴方に愛される私の存在は
次元も空間も歴史も越えて、真実

4/21/2023, 10:48:07 AM

「雫」

水槽の底にある
ビー玉から覗いた世界
ため息と水草と気泡が
コポコポ音をたて揺れていた

うっすら七色に光る
ガラスの外の世界
あの時繋いだ二つの手と
あの時揃えた大きな革靴
世界は終わりなく美しいと信じてた

ガラスに両手を当て
このビー玉から出してくださいと
いうポーズをして
いつも自分がヒロインでいることに
溺れていたのかもしれない
何の意味があったのだろう
目に見える泡は水の中では見えるのに
本当はため息さえ幻
全ては偽りの映画のよう

気泡は涙
揺れる水草は諦めと怠惰
視点はありとあらゆる場所に映り
宇宙の星全てが監視カメラなら
貴方の居場所も分かっただろうに
ガラスも木製のドアも飛び越え
二人が映る星に飛んで行く

そうだ、いつか夜汽車に乗ろう
きっと大事なことを思い出した

ビー玉の中にいるのは私
その私を見ている私は誰

懐かしい貴方
水の中から取り出し
大きな手のひらにビー玉を乗せた
真っ直ぐこちらを見る眼には
大きな大きな一粒の涙の雫

「やっと見つけた、もう離さない」

私は偽りの両手をつくポーズを止めると
急に身体の力が抜け
だらしなくへたり込んだ
ビー玉は静かに割れた

貴方の暖かな涙の雫で
初めて濡れた髪
ガーゼのハンカチは
いつか私が贈ったもの
疲れきった私は
貴方の手のぬくもりの中で眠る

「大丈夫、いつか二人、夜汽車で帰ろう」

コポコポと水槽の音に紛れ
おぼろげに優しい声が聴こえる





4/19/2023, 3:20:12 PM

「未来は上流」

          夜汽杏奈

一日一テーマのお題が出る文章アプリ
今日のお題は
「もしも未来を見れるなら」

文章を書くアプリで
ら抜き言葉

もしも未来が見られるなら
もしも未来を見ることができたら
もしも未来が見えたなら

などに訂正して欲しいと言いたいところだけど、
そもそも未来とは、未だ来ていないと書く様に
今から行くものではなくて
まだ来ていないもの

私達は、過去から今を通り、未来に流れる川があると思っているけど、
それに自分が流されていくと洗脳されているけど、
逆なんだ
川の流れは未来から今の自分に流れ、過去に過ぎ去るもの
自分が流されていくのではなく
自分の位置は動かない

上流にある未来に
夢や希望のボールを投げれば
中流の今の自分に流れ着き、
下流の過去に過ぎ去る

本当は、「今」しかなくて
歳はとるけど
そもそもこの世界に時間は存在しない
日本語にはたくさんの真実が隠されていて
もし、下流に未来があるのだとしたら、
未だ行ってないとか、進んでないとか、
書くならわかるけど
まだ来ないとは、書かないだろう
エントロピーという言葉は難しいけど
マクスウェルの悪魔がボールを投げたから
いつか全ての洗脳が解け
真実に目覚めるときが来る
終わりも始まりもなく
永久に全ては巡り、循環し、繋がる

先人達が投げたボールは
私達に流れてきて、受け取ってきた
自分が投げたボールは
いつか自分に流れ着き、受け取る
誰かが投げたボールは
誰かに流れ着き、受け取る

新たに生まれ変わる新芽達に命達に
私達はどんなボールを投げられるのか


4/18/2023, 3:31:38 PM

「無色の世界」

            夜汽杏奈

「あなた方は生きる楽しさを伝えてください」
誰かがコメントしていた

バウムクーヘンの年輪
楽しいも楽しくないも
感情の波は穏やかでいい

「生きること≒楽しいこと、は良いことと決めつけ、それを伝え、執着させてしまうのだとしたら、死や病気に対する恐れや不安を強くさせてしまうことに繋がりかねません」
私はそう、コメントした

光と影は元々一つ
メトロノームの振り幅
誰かのリズムとメロディーは
どの章もどの♯も♭も
誰にも奪えない
鍵盤の上の一輪の薔薇
愛深き故
悪魔と散った遠い物語

統合するなら無となり
愛で包み統合するなら光となった
ニュートラルでいるか
森羅万象全てを信用し
宇宙へ手放すか
涙無しには語れない
その舞台の幕の内側で
誰にも気付かれず
永遠の熱いキスを交わすのか

世界がバラ色ならば幸せで
ダークなら不幸だと
どの時代も人は言う
人に優しくできる人は良い人で
頼るしかない人はダメな人で
お金持ちは偉くて
悪魔は悪者

誰がそんなことを、決めたの

全ては無色の無の世界から生まれた
生きることを感じる為に
存在を経験する為に
相対的なものは本当は一つだったと思い出す為に

とてつもなく果てしない次元の
宇宙の中で
好きも嫌いも感じ
良い悪いを判断してしまう、
未熟な自分も
全てを受け入れ、
森羅万象全てを信用し、
愛せたら、
ニュートラルになれたら、
手放せたら、

いつか無色の無の世界に
安らぎに似た想いを抱けるのだろうか

いつか悪魔の仮面の下で
涙すら忘れた瞳を
穏やかな愛で包めたら

この上ない優しい色の世界で
二人、微笑み、眠れるのだろうか



4/17/2023, 3:26:31 PM

「桜散る」
           夜汽杏奈

桜散る夕暮れ時の橋の上
手のひらに、一枚
孤独な花びらが舞い降りた

一人静かに
下に流れる川を覗き込むと
淡いピンクの花びらは
まるで恋の欠片のように
一枚一枚落ちていった
透き通る水を覆い
絨毯の様に敷きつめられ
優しく、時に熱く
水の音と鼓動も揺れていた

この世界の何処にも
どんな画面の中にも
目に見える確かなものなんて
ないと知った日から
下を向くことに慣れ
全てが無機質な
紙芝居でしかなかった
いつからか満開の桜の木さえ
見上げてこなかった、
何処かの私

儚い夢や、魂の歴史や、時の粒子
花の香り、生命の循環、
優しいメッセージ
守られていたこと
愛されていたこと
今ここにいること

目に見えない想いや愛に
気付く為
下を向く私の、目に映る水面の桜の花びらは
あまりに美し過ぎた

桜散る夕暮れ時の橋の上
永遠に手を繋ぐ二人
下を向かなければ気が付かない
水面の桜の花びらは
いつも心にある

どんな時も
小さな幸せは舞い降りている


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