圧倒的にペンギン

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10/6/2023, 4:24:33 PM

【過ぎた日を思う】

卒業式後の教室。
私は机に体をこすりつけて感傷に浸っていた。
「アッアッアッヒィー」
これで最後かと思うと名残惜しい。
私は机の上に立つと服を引っ張りながら踊りだした。
「カオナシのまねーアヒィィィー」
だんだん楽しくなってきた。

しかし、

「何をしている!」
警備員が来た。大声ではしゃぎすぎたか。
私は弁解した。
「実は卒業したばかりで浮かれてしまって、すみません」

すると警備員はニヤッと笑った。
「つまり、卒業したお前は学校とは関係がないということだな。建造物侵入罪で貴様を処刑する」

「あへ?」
私は間抜けな声を出してしまった。
コイツは何を言っているのだ。
「待って下さい。薄汚い下民風情が適当なこと言わないで下さい。地獄に落ちますよ」

「しね!!」
警備員は火炎放射器で教室を燃やし尽くした。
「あひょひょー」
私は間抜けな声を出しながら息絶えた。


─時刻は深夜2時を回ったところだった。

9/29/2023, 4:50:16 PM

【静寂に包まれた部屋】

今日は休日だ。
私は部屋でストローを舐めながら口の中で引き裂かれた刺身の気持ちを考えて虚しい気持に浸っていた。

「友達がいればな」
こんな時友達がいればもう少し充実した時間を過ごせるのだろうか。
すると窓から誰かが入ってきた。

「おーす元気にしてたか?」
知らない人だった。
しかも武装しているし、人の生首を持っている。
そもそも窓は施錠されているしここはタワーマンションの20階だ。
何かがおかしい。
部屋は静寂に包まれた。

が、そこから私の行動は素早かった。
部屋の電気を消すと不審者が困惑している間に緊急脱出装置で外に出てタワマンの爆破装置を起動した。
タワマンは住民とともに消滅した。

「ふーいい汗かいたな。しかし今日からホームレスか」
私は軽く絶望しつつ公園に向かった。

ちなみに部屋に入ってきた不審者の正体は、友達がいない人のところに遊びに来る善意のボランティアだったらしい。
図らずしも人の善意を踏みにじった私は、後に後悔の念から彼の跡を継ぐことになる。

9/20/2023, 11:28:43 AM

【大事にしたい】

私はベテラン社員。
既に完璧になりつつある私であるが、未だ経験のない役割がある。
新人教育だ。

しかしそれもすぐに過去の話となるだろう。
明日から来る新人の教育担当は私なのである。
無論心構えも完璧だ。
高圧的な態度や言動は当然しないし、無理な仕事も与えない。暴力なんてもってのほかだし、最近話題のLGBTへの配慮も完璧にこなすつもりだ。
明日から私は教育の天才と呼ばれることだろう。私は成功を確信した。

─3日後

「やり直しだ!」
私は新人が作った企画書を破り捨てた。今日も残業フルコース確定だ。

「お前のせいでみんなが迷惑してるんだよ。死んでお詫びしろ」
私はイスを蹴飛ばした。
新人は縮こまって震えている。まったく情けない。
「ナヨナヨしてんじゃねーぞ。それでも男か」

しかし、ここで思わぬ反撃があった。新人はポケットからスマホを取り出し操作を行った。
するとさっき私が言った言葉が再生されたのだ。
録音していたのか。

新人はニヤッと笑った。
「いい加減あんたの横暴にはうんざりしてたんだよ。これを労働局に持っていけばあんたは終わりだ」

私はすかさず新人に渾身の地獄突きをくらわせ、窓から放り投げた。
あっぶねー。
大事になるところだった。

でもスマホを処分するのを忘れていたので普通にクビになった。
みんなも気をつけよう!

9/10/2023, 9:37:04 PM

【喪失感】

早朝。
「こんなもん食えるか!」
がちゃーん。

ちゃぶ台に乗った美味しそうな料理はすべて台無しになった。

特に料理に不満があるわけではない。
料理を作るために他人が費やした時間を無駄にする感覚がたまらないのだ。

「やば、漏れそう」
私はしばらくのあいだ歓喜に打ち震えていたが部屋は静かなままだ。
それも当然。
この部屋には私しかいない。
自分で作った料理を自分でひっくり返しただけだ。

一段落すると私は無言で散らばった料理を片付け始めた。
そろそろ仕事の時間だ。
続きは会社でやろう。

9/6/2023, 1:13:19 PM

【時を告げる】

突然だが医者に余命1年と宣告された。
ヒェェー。
そんな時友達が言った。
「死ぬ瞬間に持っていたものはあの世に持っていけるらしいよ」

─え?まじで?

私は手早く親戚に借金を繰り返し、さらに闇バイトで稼いで得た合計1億円を体に巻き付けた。
このまま死ねば来世は金持ち確定だ。
私はそのまま車道に飛び出しトラックに突っ込んだ。
ぐしゃあー。これは死んだな。

しかし私の意識が遠のこうとするその時、声がした。

「大丈夫か?今助けるぞ!」
見るとハゲたデブのオッサンが心臓マッサージをしようとしているところだった。
え?何この状況。

当然体に巻いたお金は外されている。
オッサンは私の手を握り言った。
「私がずっとついているぞ!」
やめろハゲ。お前はいらん。

私はそのまま息を引き取った。

─来世

私は異世界で英雄となっていた。
一緒に転生してきたオッサンが勇者だったため、一緒に付いていき魔王を討伐したのだ。
ちなみに私の役割は荷物持ちだ。

危なかった。
来世が中世風の異世界だったので、仮に1億円を持っていたとしても何の役にも立たなかった。

やっぱ世の中、金じゃない。
コネよ。
私は世の真理を理解した。

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