【コーヒーが冷めないうちに】
会社の業務中。
後輩「あっちゃー、やっちゃった(泣)」
どうやら後輩がミスしたようだ。
ここは先輩として傷口をえぐ、じゃなくてフォローしよう。
私「どしたん?話聞くよ」
後輩「実は先輩と一緒に作っていたプレゼン資料を誤って消してしまって」
私「え?」
私は動揺した。一緒にと言ってもほとんど私が作ったものだ。3徹して。
私「まぁまぁ落ち着いて」
私は深呼吸した。
よく考えればバックアップが私のフォルダにあるし、最悪紙の資料も印刷していたはずだ。
後輩「それがバックアップも消してしまって。紙の資料も遊び半分でシュレッダーしちゃいました」
私「殺す、じゃなかった。はぁ全くやれやれ」
絶望的な状況だが私は冷静だった。
実はこんなこともあろうかと資料のバックアップをUSBメモリに保存して家においてあるのだ。
セキュリティ上よろしくないが、今回はそれに助けられたな。
しかし、
後輩「実は、先輩が隠れてUSBを家に保管していたのは知っていました。昨日それを課長に耳打ちしたのですが、、、」
私は顔面蒼白になった。コイツ、、、。
私「それで?」
後輩「激昂した課長が先ほど先輩の家を燃やしに行きました」
私「あああああああああああああ」
私は崩れ落ちた。もはやこの感情がなんなのか分からない。
バチーン。
不意に後輩が私の頬を叩いた。
後輩「しっかりして下さい。先輩が取り乱したら誰がこの場を収拾するんですか」
私「は!確かに」
後輩のおかげで少し冷静になれた。代償に歯が何本か抜けたが。
私「よぉーし」
私はコーヒーを飲みながら冷静に現状を分析し、解決策を模索し始めた。
30分後。
私は退職した。
【ふたり】
高橋「はぁー」
後輩の高橋がため息をついていた。
私「何かあったの?」
高橋「いや、僕って仕事できるじゃないですか?」
私「いやまったく」
高橋「天才というか。容姿も完璧だし、気づかいもできるし」
私「何一つ同意できない」
高橋は愛嬌の無いアンパンマンみたいな顔だ。
高橋「あえて欠点を言うなら万能がゆえの孤独感、ですかね」
私「相談するなら人の話も聞こうな」
高橋「僕も先輩達みたいに毎日何も考えず脳死でお気楽に生きて行こうと努力はしたのですが、溢れ出る素質はそれを許さなくて」
私「言葉のキャッチボールって知ってる?」
高橋「で、最近思ったんです。僕はこの会社に収まる器ではないと」
私「はぁ」
高橋「つまり転職しようかと」
私「おお!」
初めて生産的な言葉を聞き私は感動した。
高橋「と思ったんですけど調べるのが面倒くさいので今日も居眠りしながら床のシミを数えます!僕の分の仕事もお願いしゃーす!」
高橋はいつものように職務を放棄した。
私「ああああああああーーー」
私はいつものように脳が破壊された。
【もう一歩だけ】
職場にて
私「神戸のお土産を買ってきたよ」
後輩「何ですか?」
私「はい、後輩君には神戸で拾ってきた石をあげよう」
後輩「え?それは、、、まぁ、どうも」
田中(新人)「ちょっと待って下さい。僕の分は無いんですか?」
私「安心して!他の人にはお菓子の詰め合わせを人数分買ってるから」
後輩「え?は?」
理由は分からないが後輩君は不満そうにしていた。
私「まぁ確かにちょっと釣り合いが悪いかもしれないな」
後輩「そうでしょう。僕にももう少しいい物を下さい!」
私「分かった。じゃあ、これはなるべく渡したくなかったが」
後輩「ごくっ」
私「後輩君にはさっきよりも大きめの石もあげよう。特別だよ」
後輩「。。。」
後輩君は嬉しすぎて言葉が出ないようだ。
田中「ちょっと待って下さい。それは流石にやりすぎですよ。石を2つもなんてもらいすぎです」
確かに言われてみればそうだ。私は後輩君を贔屓しすぎていたようだ。反省しよう。
私「分かった。それならこうしよう。後輩君は1ヶ月毎日サービス残業をする。これで釣り合いが取れたかな?」
後輩「。。。」
田中「まぁ、悪くないでしょう。それでいきますか」
その後、なぜか後輩は憤死した。
【やさしさなんて】
今日は職場の皆で川遊びに行く日だ。
後輩の高橋を車で駅に迎えに行くとそこには女子用のスクール水着を着た高橋(男)がいた。
モッコリしている。
高橋「あ!先輩来たんですね」
私達が衝撃のあまり口を開けずにいると高橋が勝手にしゃべりだした。
高橋「あれ?もしかしてこの水着ですか?実は着たまま来たほうが効率がいいことに気づきまして。タイパですよタイパ!」
高橋「来るまでに職質に20回ぐらい会いましたけど全部撒いてきたんで大丈夫ですよ」
私「いや、それも気になるけど」
高橋「ああ!なぜ女性用の水着を着ているかですか?これ妹の水着なんですよ。もちろん許可は取ってませんけど、家族の物なんで犯罪じゃありませんよ」
コイツ無敵過ぎない?
私が高橋の才能を職場で生かす方法を考えていると
高橋「とりあえず車に乗りますね」
車に乗ろうとしてきた。
その時、
バチーン。
スクール水着が弾けた。完全にサイズが合っていなかったようだ。
高橋「あ、僕の立派なアレが、、」
そしてたまたま近くを歩いていた警察官に取り押さえられた。
警察官「早くその粗末なものをしまえ!」
それを聞いた高橋は崩れ落ちた。
私達は知らないフリをしてその場を去った。
【眩しくて】
突然だが津波警報が発令された。
おいぼれ老人「大変じゃ、わしの海が。海を見に行かねば」
村の衆「そんな畑みたいに」
そこで私は言った。
私「皆さん。老人のたわごとに耳を傾けてはいけませんよ!」
村の衆「おお!」
ここは皆の憧れである私がビシッと言わないと。
私「な〜にが、わしの海ですか。海はみんなのものですよ。あなたが独占していいものじゃない!!!」
村の衆「そうだ。そうだ」
おいぼれ老人「ぐぬぬ」
しかしこれではおいぼれの体裁も良くない。私は妥協案を出した。
私「ではこうしましょう。みんなで海を見に行くのです。これで平等ですよね」
村の衆「なるほど。賢い。彼は賢者だ」
おいぼれ老人「まぁ、それなら」
そうしてみんなで海水浴に行くことになった。めでたし。めでたし。
ちなみにみんな海に飲み込まれた。