【脳裏】
「わー」
今日は後輩の田中と一緒に課長の新築祝いに来ている。
「いい家ですね」
私は社交辞令を言って適当に場を和ませていたが、
田中「なんか狭くないですか?」
ピシ。
後輩の何気ない一言により空気が凍りついた。
まずい。なんとかフォローしないと。
私の脳裏には怒り狂って暴れまわる課長の姿がよぎった。
私は壁に拳を叩きつけた。
「こら田中。本当のことでも言っていいことと悪いことがあるだろ」
壁には穴があいた。
課長「あ、」
私は続けた。
「なにがオンボロのほったて小屋だ!課長がこの犬小屋にいくらお金をかけたと思ってるんだ!」
田中「いやそこまでは、、」
私は言い訳をしようとする後輩を諌めた。
「口ごたえするな!」
ボン。
私は料理が並べられていたテーブルをひっくり返した。
ガチャーン。パリンパリン。
課長「君、そこまで言わなくても」
温和な性格の課長は気にしていないようだがここで新人に調子に乗らせていいことはない。
「課長!甘やかしてはいけません。彼はこの家をバカにしたんですよ。狭すぎて刑務所かと思ったとか、こんな家に住んでいる課長は犯罪者予備軍だとか。言われっぱなしでいいんですか?」
田中「いや僕は」
「いいから謝れ!」
私は壁に掛けていた絵を投げつけた。田中は避けたので絵はテレビに当たり2つとも壊れた。
課長「もうやめてくれ」
「は!」
課長の声で私は正気に戻った。
少しやりすぎたようだ。
収拾しよう。
「田中。反省しろよ」
私はタバコをソファに押し付けながら後輩に道徳を説いた。
それが後に火災に発展するとは当時の私は考えてもいなかった。
【眠りにつく前に】
夜中の出来事。
「はー花火楽しぃーーーー」
私はロケット花火を警察署に打ちまくっていた。
当然すぐ警察官が出てくるだろうがいつものように頭がおかしいフリをすればなんとかなるだろう。
これが処世術というやつである。
などと考えていると
「おい、何をしているんだ」
誰かが声をかけてきた。
私はとっさに鼻に指を突っ込み間抜けな演技で対応した。
「あひぃぃぃーーー?」
「あっ先輩じゃないですか!」
よく見ると会社の新人だった。
これは先輩として体裁的に良くない。
私は冷静に対応した。
「何か用かね?」
すると新人は
「花火ですか?皆でやりましょうよ!」
と言い出した。
見ると警察官がぞろぞろと出てきた。
手には花火を持っている。
意外だ。
「いいんですか?」
私が恐る恐る聞くと警察官は「皆でやれば怖くありませんからね。やりましょうよ」
と気さくに答えてくれた。
「いよっしゃぁぁーーーー」
言質を取った私は遠慮なく警察署に花火を打ちまくった。
─翌日
私は国家転覆罪で死刑になった。
ちなみに会社の新人はキ◯ガイの真似をして難を逃れていた。
【鋭い眼差し】
私はいい人。
人助けが趣味だ。
私があてもなく歩いていると公園で寝ている男性を見つけた。
注意してやろう。
私「昼間から働きもしないでいいご身分ですね。人生舐めてます?」
男性「なんすか急に。カルトの人ですか?」
私はあきれてゲロを吐いた。
びちゃびちゃ。
男性「え?やば。すみません。仕事サボって休んでるだけですけど何か?」
なんてやつだ。
これが日本型雇用制度の闇か。
私は男に鋭い眼差しを向けた。
私「お前みたいな奴がいるせいで日本の経済は停滞してるんだ。分かってんのか!」
バキィボキァ。
男性「痛。やめてくださいよホントに」
私「土下座しろ」
男性「え?」
私「土下座ちろぉおおおおぉぉぉーーー」
私はたまたま持っていた日本刀を抜いて切りかかった。
悪く思うなよ。これも全て私の視界に入ったお前が悪い。
そうして一人の儚い命が消えた。
〜その後。警察署にて。
男性「アイツは一体何者だったんですか?」
ポリスマン「ただの無職だよ」
【大事にしたい】
台風到来前日。職場にて。
「台風が来たら田んぼを見に行きたくなりますよねー」
新人の田中は言った。
毎年、台風が来ると田んぼを見に行って行方不明になる人が後を絶たないのは周知の事実である。
しかし田中が茶化したように言うのを聞いて私は思わず田中を殴り飛ばしていた。
「ぐふぅ。は?え?」
何が起きたか理解出来ていないままうめいている愚かな新人のために私は丁寧に説明した。
「はー馬鹿。ほんと馬鹿。救いようのない馬鹿だわ。お前みたいな浅はかな奴がいるせいで周りの人が迷惑してんだわ。少しは自重しような」
すると田中は理解したようで、
「サーセン」
と短く謝った。
〜翌日
私は台風が来ると思わず家から飛び出していた。
「風やっべぇぇぇーーーー雨も凄げぇぇぇーー」
そうだ。田んぼを見に行こう。
たしか近所に田んぼがあったはずだ。
見に行くついでに罠を張ろう。あと花火を股間に挟みながら◯ouTubeの配信もしないと。
私は田んぼに着くと服を脱ぎ興奮のあまり踊り始めた。
やはり台風といえば田んぼだな。
新人には見栄を張ったが気をつければ大丈夫だろうし。
しかし
「あっ」
私は足を滑らせて近くの川に落っこちてしまった。
なんとか上がろうともがいたが、自分が仕掛けた罠に引っかかり這い上がれない。
「チクショー調子に乗るんじゃなかったぁぁぁーーーーー」
そのまま私はどこかに流されていった。
命は大切に。
【海へ】
私はクレーム大好きマン。
「今日も迷惑の限りを尽くすか」
私は邪悪な笑みをこらえつつ今日海辺にオープンしたカフェに入っていった。
店員が来ると私はすかさず言った。
「いつものヤツをくれ」
〜2時間後
「こちらがご注文の品です」
届けられた料理を見て私は絶句した。
どう見ても手抜きだったからだ。
店員は言った。
「右からみかんの皮、冷えた塩、ぬるい水です。ナイフとフォークでお召し上がり下さい」
私はすかさずクレームをいれた。
「なんで水がぬるいんですか?氷ぐらい入れて下さいよ」
すると店員は反論した。
「この店の飲み物は全てぬるい状態で出てきます。メニュー表にも書いていますよ」
私は即座にメニュー表を確認した。
すると確かにメニュー表の最後にミジンコレベルの大きさでそんな記載があった。
なんてことだ。これはこっちの落ち度だ。
「すみません。なんでもないです」
私が素直に謝ると、しかしそれを聞いた店員は調子に乗りはじめた。
「はー(ため息)。謝るぐらいなら最初からゴチャゴチャ言うのやめてもらえます?こっちはオープン初日で忙しいのにあなたみたいなみすぼらしいブサイクに時間を割いてる暇は無いんですよ。底辺は底辺らしくゴミでも漁って飢えをしのいだらどうですか?」
ピッキーン。
さすがの私も限界が来た。
なんだこの店は。馬鹿にしやがって。
そもそも冷えた塩ってなんだよ。冷やすなら飲み物を冷やせよ。
「ざけんなぁアアアアアアー」
私は手をテーブルに叩きつけた。
が、その反動でテーブルのフォークが胸に突き刺さり私は泡を吹いて倒れた。
異変に気づいた店員が2時間後に救急車を呼んだが、間に合わず私は息絶えた。