どうしようもなく大好きだった。今でも夢に見るぐらいに。
君と好きな作品が同じだ、なんて言って一緒に帰った日。
江ノ島を一緒の班で回った修学旅行の日。
最後に告白しようと書いたラブレターを渡せなかった日。
別に後から両片思いだったなんて知りたくなかった。
どれもこれも、甘くて苦い私にとっての初恋の思い出。
初恋に、貴方に、さよならを。
【初恋の日】
その瞬間、時計の針で刺されたように動けなくなった。
進んでいく時間。何も最後までやりきったことがない自分。段々と自分が見る世界が汚くなっていくんだ。と笑っていた幼なじみの彼が昨日、死んだことを母から告げられた。
隣に私が居なくてもこれからの道、幸せな人生を歩んで欲しいと願っていた彼が。
彼はいつも明るいから「弱音を吐くなんてらしくないね」なんて言葉が大事な、大切な彼を追い詰めてしまったのだろうか。どくどくと心臓が早まりぐるぐると頭の中が掻き回される。
あの日から時計の針はずっと刺さったまま、
思わず視界に捉えた彼女に手を伸ばす。刹那びゅうと木枯らしが吹く。
吹かれた葉に乗せられたようにそこにいたはずの彼女は消えていた。
未だに僕は幻想に囚われてしまっているようだ。
親友の結婚式。改め元好きな人の結婚式。
私の親友は他の男に奪われていく。そんな事実を複雑に抱えながらお祝いをする。
「来てくれてありがとう」
そう言う親友は純白のドレスに包まれてとても綺麗だ。
きっと親友にとって世界一幸せな日。
「ううん、こちらこそ招待してくれてありがとう。すごく綺麗だよ」
そんな言葉に親友は照れながら肩を叩く。
「ちょっとだけ時間あるからさ。座って思い出話でもしようよ」
親友が椅子に座りその対面にある椅子に私も座る。
「私さ、実は大学生の時君のこと好きだったんだよね」
ひとつの思い出話のように苦笑しながら親友は話す。胸がどきりと音を立てて心臓が高鳴る。息を吐く音すら繊細に聞こえて。
「私も好きだったよ」
そう蚊の鳴くような声で話すと彼女は驚いたように目を見開き悲しそうに目を伏せた。
「えへ、私たちいつの間にすれ違ってたんだね」
好きだった。いやもしかしたら今でも好きだから。今からでも可能性があるならあの時言えなかった言葉を。ひゅっと息を吸い言葉と一緒に息を吐き出す
「ね、今からでも」
「私たちあの時なにか少しでも勇気を出してたら今の関係も変わってたかもね。」
そんな私の言葉に被せるように彼女は話す。
それはきっと今の関係はもう変わらないということ。少しでも期待してしまった、未練タラタラな自分を嘲笑しながら私はこう言った。
「結婚おめでとう、幸せになってね」
【すれ違い】
忘れたくても忘れられないこびりついた記憶。
きっとそれは君を傷つけてしまった後悔。
嗚呼どうか神よ、私に罰を。