REINA

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8/27/2024, 12:37:10 PM

雨に佇む



夏。突然のゲリラ豪雨。 
傘を持っていなかった私はずぶ濡れになった。
たまにはこういうのもいいかと思い、雨の中をゆっくり歩く。

白のワイシャツで下着が透けていたが、そんなのも気にしない。道行く人たちの訝しけな目線も気にはならない。

そもそも私は雨は嫌いじゃない。
普段は傘をさすけれど、ごく稀に濡れながら雨の中を歩きたい気分の時もあるのだ。

シャツが肌にまとわりつく。
だがそんな感覚も、こんな天気じゃないと味わえない。

小学生の頃とかは楽しいと思ったことをやれた。
少しずつ成長するにつれて、理性がきいてくる。
雨に打たれることを躊躇するようになる。
もっと、もっと自由でいいのに。
そう、自分に言い聞かせながら。

雨の冷たさ。濡れた肌。
ねず色の空。髪から落ちる雫。
湿り気を帯びた空気。吐き出されるため息。
私の耳に聞こえる雨音。

それらが全部、愛おしい。


8/26/2024, 10:52:26 AM

私の日記帳



私にはお気に入りの手帳がある。
すごく好きな人ができて、その人のことを考えると、胸がドキドキしすぎて、声を上げたいくらいに。
でも本当にそんなことしたら恥ずかしいから、私はこの思いの丈を手帳に記すことにしました。

大好きな人への日記帳。
彼の大好きな食べ物、苦手な食べ物。
よく読む本や、よくやる癖。
気付いたことはこの日記帳に綴った。

日記帳には好きなように自由に書けるのに、言葉にするのはとてもじゃないけれど、しんどい。
『好き』っていうたった2文字が、日記には書けるのに、言葉には口に出来ない。

勇気がない自分が少しだけ嫌いになってしまう。
告白する人って、みんなどうやって告白してるのかしら?

私は今日も日記帳に記す。
まるで誰にも読まれないラブレターみたいだ。
いつかこの日記帳に綴った言葉が、私の口から語られる日が来るんだろうか?
でもそうしないと相手には伝わらないよね。

私の大事な日記帳。
今日も想いのままに綴られていく。

8/25/2024, 11:22:44 AM

向かい合わせ


何年振りかに再会した、かつてのクラスメート。
そして私の中学時代の片想いの相手。
同じクラス、同じ班、そして隣同士の席。
彼はクラスのムードメーカーで、面白くて、優しくてかっこよかった。

高校も同じだったけど、クラスは違ってしまった。
それだけで、あんなにたくさん話していた関係が、あっさりと終わりを告げた。

ただ隣のクラスになっただけで、こんなにも隔たりが出来てしまうとは。
いや、私が勇気がなかっただけだ。
遠くから見つめることしかできなかったのだから。

そんな片想いをしていた相手と再会した。
中学校の同級生同士が結婚したからだ。
再会しても彼は当時と変わらずで、ほっとした。
むしろ、大人になった彼に変わらずドキっとしてしまった。

と言っても、もう私の中では消化した恋だ。
懐かしいなと思うくらいで、それ以上の胸の高鳴りはない。

二次会は向かい合わせの席になった。
何だか中学校の給食の時を思い出した。
向かい合わせで食べていた時のことを。

昔も、そして今も彼のムードメーカー役は相変わらずで、私は笑った。
中学同士の友人たちが集まれば、昔話に花が咲く。

私は『今だから言うけどね』と言って、昔好きだったことを告白した。
当時は『好き』なんて言葉に出すのが恥ずかしかったけれど、今はこんなにも素直に言える。
それが自分の中で、清々しかった。

彼は一瞬驚いた顔をしたけれど、にこりと笑って『実は、オレも』と言った。

「なんだ、告白すればよかった」とお互いに笑いあった。両思いだったんだと知れただけでも、何だか嬉しかった。

向かい合わせで座る彼から、熱を帯びた視線が刺さる。

「今、付き合っている人いるの?」
「いないよ」

一瞬の沈黙。

「じゃあさ、どう?今からでも」

周りの友人がどんなに騒いでいても、彼の声はハッキリと聴こえた。

中学校の時に向かい合わせで見ていた彼の顔。
こんな真剣な顔は初めて見た。
男の人の顔になっていた。

そして私も女の顔になっているのだろう。

8/24/2024, 10:58:25 AM

やるせない気持ち


幼馴染みに自分の気持ちを伝えた。
君はすぐに首をかいた。
それは君が困ったことを表す癖だ。

『考えさせて欲しい』と言われた。
すぐに振られないだけ良かったのかもしれないけれど、
翌日から君がよそよそしくなった。

ああ、本当に困らせた。
そう、実感した。

好きな男でもいるのだろうか?
それとも幼馴染み以上には考えられないんだろうか?

気持ちを伝えてすっきりした反面、伝えなければ良かったと思う自分がいる。

何ともやるせない気持ちだ。

『考えさせて欲しい』とはいつまでのことを言うのだろうか。期限が決まっているわけじゃないから、もやっとする。

だけど焦ったところで状況が変わるわけでもない。
今は、君の返事を気長に待つしかない。
待っている間に何かできないだろうか。
悪あがきでも何でもいい。

君がオレのことを好きになってくれるのなら。

8/23/2024, 12:28:37 PM

海へ



ステージから見える景色はまるで海のようだ。
青いペンライトがたくさん光る。
私はそれが見たくて、みんなの喜んでいる笑顔に会いたくて、ステージに立つ。

小さい頃、私は空の絵と海の絵を描いていたみたい。
それほど青色に魅了されていたのだろう。
地元の海にも遊びによく行った。
空の青と海の青が好きだったから。

今はなかなか海へ外出できるほど、休みが取れないけれど、代わりに青いペンライトに囲まれている。
これからもアーティストであり続ける限り、私はこのファンタスティックな空間を大切にしていきたい。

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