だから、一人でいたい。
大切な人が私の目の前から、いなくなったあの日。
枯れ果てた泉のように、一滴も涙は出なかった。
悲しいとか、苦しいとか、そういう感情が無かった。
いや、あったのかもしれないけれど、
後から思えばそれは自己を防衛するために、
固く扉を閉めていたのかもしれない。
埋葬されても何も感じることが出来なかった。
それから一年。
この日は命日だ。
父が大好きな花を買っていった。
小さい頃から、私によく薔薇をくれた。
正直言うと、私が薔薇を好きだったから、
父が買ってきてくれたのかもしれない。
お墓に添えるには違う花がいいのかもしれないけれど、
でも薔薇が良かった。
今日は学校をお休みした。
今日だけは父のことだけを考えたかった。
だから、一人でいたかった。
教会に行ってお祈りをした。
父の大事にしていた日記を見つけたので読んだ。
私のことがたくさん書いてあった。
書かれている文字のインクが涙で滲む。
ようやく泣けた気がする。
澄んだ瞳
君のその澄んだ瞳に写る僕。
君から見て僕はどう写っているのだろうか。
君の気持ちを聞かせて欲しい。
嵐が来ようとも
『嵐の前の静けさ』とはよく言ったものだ。
実際に私はかなり憤慨しているが、それでも頭は至って冷静な感じだった。
まるで、時が経てば猛烈な雨風が吹き曝すように、
現状の私の心はとても穏やかだった。
恋人が浮気をしていた。
そんなよくある話だ。
確定した証拠を掴んだ時は、何故だかスッと冷静になったが、自宅に帰って泣いた。
大泣きした。
その後、むしゃくしゃして、友達に電話をかけた。
今日は決着を付ける時だ。
別れを切り出す。
本当は別れたくない。
でも、浮気をする男は、次も浮気するだろうし、
私もそんな心配をしなくちゃいけなくなる。
『信じる』ということが出来なくなる。
別れを切り出したら、多分私は泣くだろう。
猛烈な雨風が自分に降り注ぐ。
いや、むしろ降り注ぐことを望んでいるのかもしれない。男への気持ちをすっきりと洗い流して欲しい。
振られたり振ったりするたびに、私は『恋』とか『愛』とか出来ないんじゃないかと思うけれど、それでもきっと恋をするのだろう。
例え嵐が来ようとも、私はまた素敵な青空を目指して歩いていくに違いない。
お祭り
好きな人との『お祭り』の思い出。
あなたは何を思い出しますか?
浴衣姿を褒められたこと。
はぐれないように手を繋いでくれたこと。
一緒に食べた綿飴。
逃しちゃったきんぎょすくい。
射的で取ってもらったぬいぐるみ。
最後に綺麗に散った花火。
私は地元の大学へ進学することが決まった。
あなたは夢のために上京すると言っていた。
告白をしたら何か変わるんだろうか。
そう何度も逡巡しながら、やっぱり勇気は出なかった。
そんな思い出。
数年振りに地元のお祭りに足を運んだ。
あの時と鮮やかな光景は変わっていない。
ただ一つ言えることは『あなたが隣にいない』こと。
あの時、勇気を出していれば変われたのだろうか。
今更、そんなことを考えてもしょうがないのに。
ふと、似た人とすれ違った。
思わず振り返ったけれど、こんな人混みでは『その人』だったかは分からない。
わざわざ確かめてまで、追いかけるような年齢でもなくなった。
花火がパッと上がって、そして散った。
神様が舞い降りてきて、こう言った
私には生まれる前の記憶がある。
それは天国にいた時のこと。
私は天使だった。
仕事に関しては完璧な天使。
でも『人間』という人種が理解できず、
私は彼らに対してそっけなかった。
そんな私に神様が舞い降りてきて、こう言った。
人間になって、色々な感情を学びなさいと。
複雑な心を持つ人間。
何でそんな面倒な種族にならないといけないのか。
神様の命令だから仕方ない。
仕事として与えられたのだから、
何を学べるというのかは分からないけれど、
行ってきます。