快晴
昨日の土砂降りの雨から一転。
カーテンの隙間から見えた光に吸い寄せられるように窓を開けば、思わず目を細めてしまうほどの青い空だった。
昨日は先輩に告白して振られた。
彼女、やっぱりいたみたい。
そりゃ、そうだよね、かっこいいし。
当たり前かと自分に言い聞かせる。
泣き腫らした瞳に、この青い世界は清々しすぎた。
もう少し感傷に浸りたいのに、どうも世界はそうさせてくれないらしい。
食い気だけはあったらしく、朝ごはんはそれなりに食べた。現金なもんである。
玄関を開けると、タイミング良いのか悪いのか、幼なじみと目があった。
私の赤くなっているであろう目をじっと見て、
『あんぱん食うか?』と言ってきた。
先程、朝ごはんを食べた癖に、手があんぱんを欲しがっていた。
失恋で費えた疲労を回復しようとしているのかもしれない。
久しぶりに幼馴染みと一緒に歩いた気がする。
必要以上に話さない、その優しさがありがたかった。
不意に『オレにしとけば』と言われた。
『オレにしとけば』とは?と喉元から出かかった言葉を飲み込んだ。
唐突な告白に私は混乱したが、それでも幼馴染みだから、何となく好意があることは知っていた。
『……いいかも』
吐息と共に言葉を返した。
透き通った青い空を見ていたら、悪くないと考えたからだ。
遠くの空へ
逃げ出したい。逃げ出したい。
やっぱり叶わなかった。あの子には。
分かっていたことだけど。
あの人はあの子を選んだんだ。
いや、そもそもあの人には、私の存在すらなかった。
アプローチが必要なのは分かっていたことなのに。
遠くから見つめているだけでは、いつかは負けることも分かっていたことなのに。
今は、がむしゃらに走ることしかできない。
流れる涙が羽になって、どこか遠くの空へと舞い上がればいいのに。
言葉にできない
たった4文字の言葉なのに。
世の付き合っている子たちは、どういう感じで自分の想いを伝えたのだろう。
到底、私には出来そうにない。
日記に『好きです』と書くだけでも、恥ずかしいのに。
あなたから言ってくれたら、どんなに嬉しいことか。
でもそれは望み薄だ。
自分から勇気を出さなければ、
一生想いは伝わらないのだろう。
鏡の中の私が口を紡ぐ。
『す・き・で・す』
ゆっくりと唇を動かしたものの、
きちんと言葉にできない。
春爛漫
桜の季節になると思い出す。
あの日、彼女から紡がれた言葉を。
ひらひらと舞い散る桜と同じように、
彼女の頬は薄く染まっていた。
あの時の僕は、その期待に応えることができなかった。
『友達』という枠から先に進むことが怖かったのかもしれない。
桜の季節なると思い出す。
あの日、彼から紡がれた言葉を。
ひらひらと舞い散る桜と重なって、
彼は凛とした声で答えた。
一年越しに発せられた彼からの気持ち。
去年は悲しみに頬を濡らしたけれど、今は違う。
ようやく2人の気持ちが交わった。
来年もこの桜の景色を2人で見たいと思う。
誰よりも、ずっと
誰よりも、ずっととどめておきたい。
本当は大事に大事に閉まっておきたいくらいだけど、
彼女は蝶のように、好きなところへ舞っていくから。
そんな自由な君が好きでたまらないけれど、
せめてオレが見ている範囲で飛んでくれ。
別な花なんかには目はくれないで。
誰よりも、ずっとオレだけを見てくれ。