春爛漫
桜の季節になると思い出す。
あの日、彼女から紡がれた言葉を。
ひらひらと舞い散る桜と同じように、
彼女の頬は薄く染まっていた。
あの時の僕は、その期待に応えることができなかった。
『友達』という枠から先に進むことが怖かったのかもしれない。
桜の季節なると思い出す。
あの日、彼から紡がれた言葉を。
ひらひらと舞い散る桜と重なって、
彼は凛とした声で答えた。
一年越しに発せられた彼からの気持ち。
去年は悲しみに頬を濡らしたけれど、今は違う。
ようやく2人の気持ちが交わった。
来年もこの桜の景色を2人で見たいと思う。
誰よりも、ずっと
誰よりも、ずっととどめておきたい。
本当は大事に大事に閉まっておきたいくらいだけど、
彼女は蝶のように、好きなところへ舞っていくから。
そんな自由な君が好きでたまらないけれど、
せめてオレが見ている範囲で飛んでくれ。
別な花なんかには目はくれないで。
誰よりも、ずっとオレだけを見てくれ。
これからも、ずっと
これからも、ずっと変わらない。
この景色。
早朝に2人で歩いた砂浜。
爽やかな潮風と、柔らかい陽の光。
穏やかな波の音に反して、
私の鼓動が急く。
少し汗ばんだ手がどうにも心地いい。
小さな頃から変わらない、その優しさ。
これからも、ずっと。
沈む夕日
楽しい時も悲しい時も、決まって私は海に来る。
『好きです。付き合って下さい』
『うん、分かった。いいよ』
隠れていたから告白していた女の子の顔は分からなかったけど、先を越されてしまった。
告白する前から私は振られたのだ。
部活は、正直サボった。
さすがに出る気にはなれなかった。
走るのは得意だから、一気に海まで駆け抜けた。
砂浜がほんのり暑い。
もうすぐ夕日が沈む頃だ。
沈んだら思いっきり泣こう。
夜の海に甘えさせてもらおう。
君の目を見つめると
君の細い指に触れた。
君が見上げる。
君の目を見つめると、
君が微笑んだ。
君の瞳には僕が映っている。
君が僕に近づく。
君の香りがした。
君が僕の頬に触れた。