時計の針が、一定の間隔で進む
時の足音が、静かな部屋に響き渡る
その部屋に一人、仰向けになっている私
電気もつけずに、ベランダから入る風に包まれている
陽が落ちてきて、少しづつ空気が冷めてきた
目線だけを時計に映すと、17:26ごろを指していた
時計の針が重なっていて、一瞬短針が取れたのかと思った
そうか、もう、夕飯の時間か
そう意識した途端に、お腹が空いてきたと感じる
ゆっくり体を起こして、台所に向かう
…冷蔵庫の中になんかあったっけ
初めて一人で旅をした
君が自分勝手に予定して、計画して、つくった旅行計画
それを実行する前に、自分勝手にどこかへ行ってしまった
自分勝手で、自己中で、最低だった君が、最後に残したこの計画
それを、実行してみた
その計画は、時間とか、休憩場所とか、いろいろ細かく調べられてて
結構私のペースに合ってて、私のことを考えてくれたのがわかったんだ
本当は私を思ってくれてた君は、もう隣にいない
勝手に出て行ったって思ってるけど、本当は私に原因があったりして
まぁ、そんな君とはもうサヨナラしよう
感傷に浸りながら、君を想いながら、心を整理しながら
この旅は、君を思う、最後の時間だ
君と見上げる月は、一人で見上げる月より暖かい
いつもは涼しげな光をしているのに、君がいると暖かく輝いている
これは、君の魔法かな
それとも、君は本当は月の住人だったりして
理由がどうであれ、今は君と月が見られる幸せを噛み締めていたい
君がいなくなってから、世界は色褪せて見えた
空の青さは眩しすぎて、外に出ることが嫌になった
行き交う人々の目が怖くて、誰にも会いたくなくなった
君がいたから、僕の心のピースが埋まっていた
それがなくなって、僕の心には空白ができた
君は、僕の人生を、つくっていたんだね
19:00の電車を待つ
この時間の空は、向こうが何も見えないほど暗く、周りでは虫の音楽が奏でられている
誰もいない無人駅で、一人イヤホンを付けて待つ
こうして一人で電車を待つのも久しぶりだ
少し前まで隣にあった熱が、まるで幻のように消えてしまった
夜。誰もいない駅にひとりきり。
今までの暑さが嘘のように、ぬるい風がホームを冷やしていく。
心も、体も、冷えてゆく。