廊下ですれ違っても、同じ教室にいても、朝の電車で見かけても、部活に勤しむ姿を見ても、何も思わなかった。
今までは。
今では、あなたを見かけると、自然と目で追ってしまうし、一挙手一投足に注目してしまう。
髪を撫で付ける仕草。寝癖なんてないのに、髪型を気にしていてかわいい。
真剣に話を聞く姿勢。緊張感を感じさせないけど、失礼でもない、不思議な姿勢で、おもしろい。
太陽のように笑う顔。あなたが笑うと、空気が温まって、すごい。
じっと観察していると、顔を上げたあなたと目が合った。その瞬間に、あなたは微笑んだ。
初めて知る、初めての表情。思わず顔を逸らす。
そんな私に、あなたは近づいてきて、「どしたん?」って、笑顔で聞いてくる。
恋は、今まで何も感じていなかった人に、フィルターがかかったように感じさせる。
好きで好きで、たまらない。
もう立秋だと言うのに、気温が30℃を超える日が続いている
しかし、最近の早朝と夕方は、空気が冷える
半袖に半ズボンでいると寒く感じる
久しぶりに出した薄い長ズボンに、半袖の上から軽く羽織る
これで丁度いいくらいだ
澄んだ空気を、山の上の太陽があたためるのを感じる
暖かさを背中に感じながら、学校に足を踏み入れる
コンクリートで作られた校舎の中は、冷やされた空気で満たされており、寒ささえ感じる
まだ生徒は誰もきていない
人の気配は感じられない
そんな校舎で、誰もいない自分の教室に入り、席につくなりうたた寝を始める
空気が少しづつ温度を上げる
静かな教室で、誰もいない校舎で、ただ一人
赤から青に変わった信号
それを合図に、君が「じゃあね」と言って歩いていく
今までは、「またね」だったのに、今日はもう違う
ただの別れの言葉なのに、もう君とは会えないように聞こえて、心が締め付けられる
何か言おうとしたけど、何も言えなくて
「…じゃ」
と、呟くことしかできなかった
君に恋をした
誰かにバレることもない、叶うことの無い、静かな恋
この気持ちは、私が心に閉じ込めておこう
きっと、この気持ちをあなたが知ってしまったら、困ってしまうだろうから
ずっと友達だと思ってた人が、いきなり愛してるって言ってきたら、誰だって困っちゃうし
だから、私はこの思いを隠し通す
あなたへの、秘密の愛
僕の心は、ここにあるよ
君を待ってるんだよ
だから、戻ってきてよ
聞こえてる?