暗闇に浮かぶ、一等星のような
暗い夜空を彩る、小さな星たちのような
人々の道標となった、北極星のような
それが、僕にとってのあなただった
僕をその輝きで照らしてくれて、僕の道標となり、神秘的な光を放つ存在だった
でも、喧嘩して、すれ違って、仲直りもろくにせず、なんとなくの距離感でいた君を、星とは思えなかった
僕にとっての今の君は、道端に転がっているようななんでもない小石で、鬱陶しいと感じるような雑草で、変わり映えのしない理解できない絵画のようだ
君を追いかけることはもうやめてしまった
君を追いかけていると、自分が自分でいられなくなってしまうから
君とは、もう分かり合えない
人の思いや想いを運ぶ風とか
春を運ぶ風とか
希望を運ぶ風とか
温もりを運ぶ風とか
風は、たくさんのものを運ぶ
…と言うわけではない
風が運ぶのは、というより、風は、空気を運び、冷たさを感じさせるのだ
人の気持ちとか、希望とか、温もりとか、季節とか、そんなものは、運べない
…これが現実、これがリアル、これが真実
これを知って、僕は心底絶望した
風のことが好きだったのに、風に希望を持っていたのに、風の奇跡を信じてたのに
でも、僕がこの真実を知って、絶望したところで、世界は変わらず回って、人生は進み、風は変わらず吹くんだ
僕って、ちっぽけな存在だよ
約束した。
去年の春。
来年の今日、一緒に綺麗な花吹雪を見ようって。
今年の僕の目の前には、冷えたベッドと、空になった棚があるだけ。
手には少ない荷物があって、窓からは綺麗に咲いた桜が、青い空を見上げている。
何か言わなきゃいけない気がして、でもなにも思いつかなくて、ただこの景色を、眺めていることしかできない。
「あの…?」と、看護師さんに呼びかけられてすみません、と言って白い部屋の出口に向かう。
寂しそうな、広く、冷たい部屋に、深々と、一礼して
静かに扉を閉じた。
部屋の中には、あたたかくもつめたい、久方ぶりの静寂が、戻ってきたようだ。
冷たい風が足の隙間を縫って吹き抜ける
この前少しだけあったかくなったと思って、「もう春かなぁ」なんて、柄でもないことを思ってたのに、まだ冬の気配はいなくならない
「うー…さぶい…」
マフラーに口元を埋めて、精一杯縮こまり、早足で家に向かう
周りを歩く人々も、イベントでもないのに、急足で帰路を進んでいる
みんなが思ってることが、手に取るようにわかる
まだまだ冬だなぁ…とか思って歩いていたら、一際強い風が、びゅうっと、何かをさらっていった
寒さで立ち止まり、身を縮こめて足元を見ると、一輪の、名も知らない花が咲いていた
それを見て、心がぽっと、暖かくなった気がした
心に小さな春を携えて、少し背筋を伸ばして、冬の吐息に向かっていった
たま〜に見る、空に浮かぶ虹色のアーチ
いつもだったら「あ、きれい」で、終わってるはずなのに
君とみた虹は、いつもよりも綺麗で、キラキラしていて、神秘的なものだった
今でもあの虹を思い出す
君とみた虹は、君がいなくても、ずっと覚えてるから