約束した。
去年の春。
来年の今日、一緒に綺麗な花吹雪を見ようって。
今年の僕の目の前には、冷えたベッドと、空になった棚があるだけ。
手には少ない荷物があって、窓からは綺麗に咲いた桜が、青い空を見上げている。
何か言わなきゃいけない気がして、でもなにも思いつかなくて、ただこの景色を、眺めていることしかできない。
「あの…?」と、看護師さんに呼びかけられてすみません、と言って白い部屋の出口に向かう。
寂しそうな、広く、冷たい部屋に、深々と、一礼して
静かに扉を閉じた。
部屋の中には、あたたかくもつめたい、久方ぶりの静寂が、戻ってきたようだ。
3/4/2025, 11:01:29 AM