仕事の帰り道、何を考えたのか、いつもより遠回りして帰った。
道の途中には、小さな公園がある。
ベンチが三つ並んでいて、花壇が公園を囲んでる。今は寒くて何も咲いてないけど、春になると何かの花が咲く。
公園の中心には一台のブランコ。
あれを二人で漕いでいた。あの子に恋をしていた。
二人並んで、きぃきぃと鳴くブランコを、青空に飛び出していきそうなくらいに漕いだ。
久しぶりに腰をかける。ギィ…と鳴くブランコ。私たちが歳をとるように、ブランコも、歳をとるみたいだ。
空を見上げると、藍色の空に、白く瞬く星が散らばっている。
あの時とは違う空。あの時とは違うブランコ。あの時とは違う私。
あいつ、元気かな。まぁ、どこにいっても元気だろ。
そんなふうに昔の記憶を思い出して、空を見上げながら穏やかに笑う。
一つため息。ゆっくり立ち上がる。キリキリ…と、チェーンが擦れる音がする。
このブランコは、来週で取り壊されるそうだ。あいつとの思い出も、これでなくなる。
空から見ていて。ブランコに乗りながら。あの頃のように、笑顔でさ。私も、あとちょっとで、そっちに行くから、その時は、あの頃のように、10年前のように、ブランコに並んで座ろう。
約束だ。そう言って、ブランコの前に立つ。一瞬だけ、笑うあいつがブランコに座っているのが見えたのは、気のせいだと思う。
旅路の果てに
この世に「生」というものを受けた時から、旅は始まっている。
生まれた時は、目の前に、無限の選択肢が広がっている。
しかし、一度この道を進む、と決めると、どんどんと選択肢は減っていって、最後に辿り着くのは、「死」という旅の終わり。
これは、みんなそうだ。
人の旅路は、それぞれの人生。その道を、どんな選択をして、どんな路を通っていくのか。みんなの自由だろう?
親、先生、おじいちゃん、おばあちゃん。みんなは、長い長い旅路を、歩んできた先輩の旅人。その人たちから、何を話してもらうか。
「このルート、楽しいよ!でも、これは大変だったよなぁ。」
「大変な旅になるぞ。心して挑め。」
「一緒に、この路を歩まないかい?」
そんなふうに、旅の思い出話や、旅の誘いを受け取って、僕たちは旅路を決める。
「お前はこっちに進むべきだ。」「こっちにしなさい」
とか、強制されちゃダメだ。みんな、自由な旅をしていかなくちゃ。一度きりの旅だ。楽しめ。
僕ら、生きとし生けるもの全て、「生」という名の旅をしている。それぞれの旅の先で、最後にたどり着くのは「死」という旅の終わり。
しかし、その途中であった、まだ若い旅人は、その先輩旅人の思い出話を忘れることなく、自分の旅の糧にしていく。
君の旅は、自由か?誰かに、何かを与えたか?
君の旅は、どんな旅だろう。聞いてみたい。
この思い出話が、旅路の果てにたどり着いた時、俺の旅路は、充実していた、そう感じるための種である。
そう、「生」というのは、長く、そして短く、儚い。自分の、自分だけの、旅路なのだ。
あなたに届けたい
あなたに、この気持ちを。
私の想いを、届けたい。
あなたは聞こえない。この声が。たとえ伝わっても、出しは友達だから、受け取られることはない。
悲しいなぁ。届かない想いを、あなたに届けたい。
受け取って、もらいたい。
君を愛してる。他の誰よりも。
この気持ち、君に伝わるかな。どんな言葉を使おうかな。
君だけ愛してる。他の人は知らない。
どんな言葉が合うのだろうか。どんな言葉が、君に響く?
大好き?愛してる?いいや、それだとダメだね。
そばにいる?君だけをみてる?あぁ、全部くさいなぁ。
君が振り向く言葉は何?どんな言葉なら、僕をみるかな。
君の視線が他の人に向くだけで、胸が痛くなるんだ。
君が好きな言葉は何?憧れのシチュエーションは?
君の視線を独り占めにしたい。あぁ、この言葉にしよう。
柄じゃないけれど、聞いておくれ。
I love you…
街へ
あの街へゆこう。この街へゆこう。
君と話そう。楽しく話そう。
楽しい時間、幸せな時間。
君の笑顔、明るい横顔。
あぁ、続くかな?この時間が、いつまでも。
あぁ、終わるのか?この時間が、いつの日か。
そうはさせない、いつまでも。
僕の隣で、話し合おう。
「どこに行こう?」「ここに行こう!」