仕事の帰り道、何を考えたのか、いつもより遠回りして帰った。
道の途中には、小さな公園がある。
ベンチが三つ並んでいて、花壇が公園を囲んでる。今は寒くて何も咲いてないけど、春になると何かの花が咲く。
公園の中心には一台のブランコ。
あれを二人で漕いでいた。あの子に恋をしていた。
二人並んで、きぃきぃと鳴くブランコを、青空に飛び出していきそうなくらいに漕いだ。
久しぶりに腰をかける。ギィ…と鳴くブランコ。私たちが歳をとるように、ブランコも、歳をとるみたいだ。
空を見上げると、藍色の空に、白く瞬く星が散らばっている。
あの時とは違う空。あの時とは違うブランコ。あの時とは違う私。
あいつ、元気かな。まぁ、どこにいっても元気だろ。
そんなふうに昔の記憶を思い出して、空を見上げながら穏やかに笑う。
一つため息。ゆっくり立ち上がる。キリキリ…と、チェーンが擦れる音がする。
このブランコは、来週で取り壊されるそうだ。あいつとの思い出も、これでなくなる。
空から見ていて。ブランコに乗りながら。あの頃のように、笑顔でさ。私も、あとちょっとで、そっちに行くから、その時は、あの頃のように、10年前のように、ブランコに並んで座ろう。
約束だ。そう言って、ブランコの前に立つ。一瞬だけ、笑うあいつがブランコに座っているのが見えたのは、気のせいだと思う。
2/1/2024, 11:52:05 AM