終わりにしよう
もうさお互い辛いだけだからさ、
こんな関係行き着く先がないもの。
あの日そう言った君に言えばよかったんだ。
行き着く先なんてないよ、分からないよ。
だけど僕は君が好きなんだ。
一緒にいたいんだ。って
ただ強く抱きしめればよかった。
目が覚めると
カーテンの隙間から光が漏れている、暖かい。
隣にいる君は、まだ寝ているようだ。
君の寝顔を暫く見つめる。 幸せだ。
長い睫毛がぴくぴくしてきた。
ぱち、黒い瞳が僕を捉える。
「おはよ。」
「おはよう。まだ寝ててよかったのに。」
君にそう言った瞬間目の前が明るくなる。
堪らず目を閉じ、もう一度開けると
見慣れた天井が見えてきた。
あぁ、やっぱり
まだ寝ててよかったのに 。
日差し
彼女は夏が嫌いらしい
肌が焼けるからだそうだ
「日差しつよ、無理焼けちゃう。」
また泣き言を言っている
「健康的でいいじゃん。」
「はぁー?舐めてんの?」
どうやら彼女の気に触ったらしい
だけど本当に良いと思う
夏の日差しに照らされてる君は
なんだかすごく綺麗だ
窓越しに見えるのは、
沢山のプリントを両手で抱えた彼女。
職員室にでも行くのだろう。
絹のような髪が風で揺れている。
「先生、」
思わず窓を開けてそう口にした。
彼女は振り返らない。当たり前だ。
ここは4階の教室。
声が、届くわけない。
この気持ちが、届くわけない。
『 入道雲 』
暑かった。とにかく暑かった。
梅雨が明けたばかりだというのに蝉は鬱陶しい程
鳴いていて、アスファルトには影の下まで辿り着けなか
った悲しいミミズ達がそこかしこに転がっていた。
空にはでっかい入道雲。
雨降ってくるんかなー。と呑気に思いながら、
ふと思ったことをあいつに言った。
「なぁ、俺達夏はもういいが、会わなくて。」
「なんでさ。これからなのに。」
「いや、夏だからさ。」
「あーまぁそうか。」
「うん、じゃ。」
ほら、あっさり了承する。あいつはそういう奴だ。
夏だからという言葉に明確な理由が俺にはあるが、
普通は意味がわからないだろう。夏だからなんだよ。
俺達は週の半分は会うような仲だった。
いや、ただ沢山会うだけの、それだけの仲だった。
俺達の絆は堅い様で、あまりに脆かった。
俺達の関係は綺麗なようで汚く、色褪せていた。
俺達の心は黒く、そして小さかった。
今でも入道雲を見ると、
その姿とは似ても似つかないあの頃の2人を思い出す。