小さい頃からずっと見ていた夢があった。
一日中お祭り騒ぎで何処からも祭囃子や太鼓の音が
聞こえてきて人がいっぱいいて、とにかく楽しかったし
幸せだった。大好きな夢だった。
最近はあの夢をまるっきり見なくなってしまったせいか
無性にあの夢のあの場所に行きたい。
昔のことでもうはっきりと覚えてはいないが、
少なくともここではないどこか。
最後になると分かっていれば
尤もらしい別れを告げたのに
「また明日」なんて馬鹿みたいに
言うことは無かった
あの日、無邪気に遊ぶ君の
いつもより少し寂し気な顔に
僕は気づけなかった
人間とは愚かなもので
明日は当たり前にあると
当たり前に思っている
僕も思ってたんだ
次もあの子に会える。と
そんな思いとは裏腹に
君はいなくなった
幼すぎた僕を置いて
君と最後に会った日
1年後はどうなっているだろう
隣でうたた寝している彼女を見て思う
中学の時に仲良くなってもう10年近く経つ
僕達の関係は「親友」とでも呼ぶのだろうか
少なくとも彼女はそう思っているだろう
月に数回こうしてどちらかの家で映画を見る仲だ
彼女は大抵映画の途中で寝てしまうが
今日も彼女の寝顔を見て
癒されると共に胸がたまらなく苦しくなる
彼女とどうこうなりたいわけではない
もちろん彼女の事はすごくすごく好きだが
それ以上に彼女の事を大切に思っている
ずっと彼女の傍にいられるのなら
一生このままでいいと、僕は思う
『子供の頃は、』
暗い過去を笑って話す大人が嫌いだ。
成功した人の昔の不幸話とか大嫌いだ。
失敗を経験した者は強くなる、とか
傷ついた事がある人は愛情深い、とか
親がアルコール依存症だったとか、
虐められて不登校だったとか、
片親で贅沢できなかったとか、
兄弟の中で1人愛されなかったとか、
ヤングケアラーだったとか。
「今思えばそれも経験でした(笑)」 とか。
お願いだから、やめてくれ。
過去に縛られたまま前に進めないで、
ずっと底でギリギリで生きてる人間の傷をえぐるな。
頑張んないといけないことなんて分かってる。
「頑張りたいって自分でも思ってる。」とか
言うくせに本当は過去を盾にして殻に閉じこもっていたい
弱い自分にとっくに気づいてるよ。
それでも頑張れない。殻から出たくない。
陽を浴びたくない。ずっと病気でいたい。
心配されたい。仕方ないねって言われたい。
自分より辛い過去があるのに頑張ってるやつ見ると
もう本当にだめなんだ。
踏ん張りが効かない、足に力が入らない。
これ以上輝くのはやめてくれ。
ある日落ちたんだここまで。
深く深く落ちたんだ。
胸が苦しい、それに光が見えない。
抜け出したいのに抜け出せない。
そういえば落ちる直前、
今まで見た他の誰より綺麗な
天使のような人を見た気がする。
落下