空蝉

Open App


窓越しに見えるのは、
沢山のプリントを両手で抱えた彼女。
職員室にでも行くのだろう。
絹のような髪が風で揺れている。

「先生、」

思わず窓を開けてそう口にした。
彼女は振り返らない。当たり前だ。
ここは4階の教室。
声が、届くわけない。
この気持ちが、届くわけない。





7/1/2024, 11:24:21 AM