窓越しに見えるのは、
沢山のプリントを両手で抱えた彼女。
職員室にでも行くのだろう。
絹のような髪が風で揺れている。
「先生、」
思わず窓を開けてそう口にした。
彼女は振り返らない。当たり前だ。
ここは4階の教室。
声が、届くわけない。
彼女に、届くわけない。
/入道雲
暑かった。とにかく暑かった。
梅雨が明けたばかりだというのに蝉は鬱陶しい程
鳴いていて、アスファルトには影の下まで辿り着けなかった
悲しいミミズ達がそこかしこに転がっていた。
空にはでっかい入道雲。
雨降ってくるんかなー。とか呑気に思ってた気がする。
少し離れた影にあいつ。
入道雲とあいつ。似ても似つかない。
なのになんで思い出す。もうなにもわからない。
ただ、真っ白な入道雲は俺をひどく虚しくさせる。
あれから三度目の夏、二度と戻らない君と いちご飴
小さい頃からずっと見ていた夢があった。
一日中お祭り騒ぎで何処からも祭囃子や太鼓の音が
聞こえてきて人がいっぱいいて、とにかく楽しかったし
幸せだった。大好きな夢だった。
最近はあの夢をまるっきり見なくなってしまったせいか
無性にあの夢のあの場所に行きたい。
昔のことでもうはっきりと覚えてはいないが、
少なくともここではないどこか。
隣で寝ている彼女を見てもなんとも思わない。
だって僕は彼女の親友だから。僕のなにより大事な人だから。
彼女に毛布をかける。親友の仕事はここまで。
僕の思い全部込めて、だけど隠して毛布をかける。