空蝉

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6/23/2024, 5:13:55 PM

『子供の頃は、』


人は過去の事を笑って話せるようになる時がくるらしい
だが、暗い過去を笑って話す大人は嫌いだ。
これは単なる妬みかもしれないが、
暗い過去を背負っているのに笑えているその人の強さに
嫉妬しているだけかもしれないが。
とにかく、成功した人の昔の不幸話が嫌いだ。

「あの頃は、学校や家が全てでしたけど大人になれば
世界は広がりますからね。」
「今思えば、あの頃傷ついた経験があるから
今、こうして笑えているのかもしれません。」

とか、うんざりだ。

失敗を経験した者は強くなる、とか
傷ついた事がある人は愛情深い、とか

やめろ、うるさい、黙れ。

親がアルコール依存症だったからなんだ、
虐められて不登校だったからなんだ、
片親で贅沢できなかったからなんだ、
兄弟の中で1人愛されてなかったからなんだ、
ヤングケアラーだったからなんだよ。

それを笑顔で話すな。
ここまで這い上がってきたんだぞアピールするな。
今思えばそれも経験でした、とか言うな。

お願いだからやめてくれよ。

過去に縛られたまま前に進めないで
ずっと底でギリギリで生きてる人間の傷をえぐるなよ。
頑張んないといけないことなんて分かってんだよ。
「頑張りたいって自分でも思ってるんだよ。」
って言うくせに本当は過去を盾にして殻に閉じこもって
いたい自分にとっくに気づいてるよ。
それでも頑張れないんだよ。殻から出たくないの。
陽を浴びたくないの。ずっと病気でいたいの。
心配されたいの。仕方ないね、って言われたいの。
辛い思いをしたんだからちょっとぐらい、あわよくば
一生休ませてよって弱い心が言うんだよ。
自分より辛い過去があるのに頑張ってるやつ見ると
もう本当にだめなんだよ。
踏ん張りが効かないよ、足に力が入らない。
やめてよ。これ以上輝くのはやめてよ。

6/21/2024, 3:33:26 PM




帰り道、微笑ましい中学生の会話が聞こえてきた。


「なぁ、お前の好きな色ってなに?」

「んー?どうしたのさ急に。合コン始まった?」

「いやなんか唐突に気になってしまって。」

「ふーん。
逆になんだと思う?僕の好きな色。」

「茶色とか?小学校の時のランドセル茶色だったし。」

「おー正解、」

「なんで正解したのに腑に落ちてないんだよ。」

「合ってるんだけどね、
これにはちゃんとしたわけがあるんですよ。」

「へぇー?理由あるんだ。
お前直感で好きになるタイプだと思ってた。」

「いや普段はそうだけど、
これだけはちゃんとわけがあるわけ。」

「ここにきてだじゃれか?ちょっと寒くなってきたわ。
で、その理由はなんだよ。教えろよ。」

「いやそれは言えないですわ。」

「はぁー?なんだよそれ。
そんな大それた理由があるのか?」

「いやー別にー?
じゃあ俺こっちだから。また明日な。」

「ちょっと気になってきたんだけど。
明日理由聞くからな。じゃあな。」

と、まぁこんな感じ。好きな色の話をしてたみたいだ。
途中で気になって2人の様子を横目で見ていたが、
何となく分かった。茶色が好きな彼の理由が。
あまりに、もう1人の子の瞳を見つめてたもんだから。
きっと、彼の真っ直ぐな茶色い瞳が好きなんだろう。

 
『 好きな色 』



6/19/2024, 3:27:26 PM

相合傘

嘘をついた
用なんて無いから雨が止むのを待てばいいのに

嘘をついた
1人で雨に打たれながら帰ってもいいのに

嘘をついた
傘はカバンの中にあるというのに

6/19/2024, 7:58:21 AM


ある日落ちたんだここまで。
深く深く落ちたんだ。
胸が苦しい、それに光が見えない。
ここから抜け出したいのに抜け出せない。
そういえば落ちる直前、
今まで見た他の誰より綺麗な
天使のような人を見た気がする。

落下

6/15/2024, 2:43:36 PM










『 好きな本 』

みにくいマルコ










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