『雨と君』
雨が降る放課後
私は校舎の軒先で外をぼんやり見つめていた
雨の日にだけ現れるあの人
名前も知らない
話したこともないのに
どうしてか気になってしまう。
空を見るその背中
どこか淋しそうで儚い
鞄を頭にかざして走る君
私は息をひそめるように
遠くから見守るだけだった。
雨の匂いと混ざって、胸がきゅっと痛む。
「今日こそ、声をかけられたら…」
毎回そう思いながら、いつもすれ違う。
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また、雨が降っている。
傘を持ってこなかった日に限って雨が降る
でも、雨は嫌いじゃない
雨の日だけ会う、知らないあの子
退屈そうに
頬を膨らましながら
空を眺める君
「声をかけたい。」
毎回同じことを思いながら
僕は君の横を駆け抜ける
あの子の存在が
雨の匂いと一緒に心に残り続けるのも
また、確かだった。
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雨が弱まり
駅前の軒先で二人は立ち止まった。
偶然にも、目が合う。
お互いの存在を確かめるように、ただ見つめ合う。
彼が少し微笑んだ。
私も小さく笑い返す。
雨の匂いと少し濡れた髪の感触
胸が高鳴るその気持ち。
あの駅で
私たちの恋が静かに、動き出した音がした。
『ふたり』
放課後の教室。
西日が差し込み
カーテンが風にゆれている
机に頬杖をつく私の目の前で
幼馴染が笑う
何でもない話をしているだけなのに、
その笑顔が近いだけで胸の奥がじんわり熱くなる。
…こんな時間がずっと続けばいいのに。
「今日はどこ寄って帰る?」
彼が何気なく言う。いつもの言葉。
ほんの少し前までは、それが当たり前の日常だった..
だけど、もうその日常は崩れかけている。
「ねえ!」
教室の扉が開いた
その声に彼が振り向く。
そこには
彼が最近よく話すあの女の子
眩しい笑顔で
私の隣を少しずつ奪っていく
「一緒に帰ろ?」
彼女の声は軽やかで、
それに応える彼の笑顔は
私の知らない表情だった。
そんな顔、私には見せたことない
胸の奥がズキンと痛む
視界が少し滲んだのは、夕日のせいにした
彼は鈍感だから...
私の気持ちにも...
彼女の気持ちにも気づいていない、
「じゃあ、三人で帰ろっか」
その優しさが苦しい..。
なにそれ…
ずるいよ。
でも、隣を奪われたくない...
……
気づけば、私は二人の後ろを歩いていた。
隣だったはずの場所が、
今は彼女のための場所になっている。
…私はただの幼馴染。
一番近くにいるはずなのに、
一番遠いところにいるみたいだ。
2人の笑い声が夕焼けの風に乗って、
私の心に突き刺さる。
――好き。
言いたいのに、言えない。
この空気が壊れるのが怖いから。
彼の視線が私から逸れるたびに
胸の奥の想いが重く沈んでいく。
カーテンが風に揺れて、
その影が私の顔を隠してくれる。
それが少し、ありがたかった。
きっと私は今、
誰にも見せられない顔をしているから。
『見知らぬ街』
ドライブ中
見知らぬ街に降り立った
ドキドキとワクワクで
なんとも言えない
不安の中
どこか懐かしい…
以前、どこかで
見たことのある風景に感じた
広大な敷地
田んぼ道
稲の香りと
心地よい風
そこから見える街並み
小さい頃
もしかして
来たことある?
「まさかね」
なんて考えながら
夕日を眺めて
1枚写真を撮った
その瞬間
胸の奥が、ふっと温かくなる
忘れていた記憶に
触れたような気がして
知らないはずの街が
不思議と
私の一部になった
『きっと忘れない』
きっと忘れない。
いや、忘れることはできないだろう。
畳の香る部屋、
夕日が差し込む台所、
手作りのいちごミルクを飲んだ、お風呂の時間。
そして、
シーンとした夜の部屋。
眠れなかったことを思い出す。
寝てしまえば朝が来る。
また朝が来てしまう。
でも、眠らなければ仕事に支障が出る。
それでも眠れない。
あのときのオルゴールの音は、
もう聞くことはできない。
同僚と会っているときは楽しいのに、
「じゃあね」と言った瞬間、涙がポロリ。
心に空いた穴は、
そんなに早くは塞がらない。
あのときの孤独は、
きっと忘れない。
心に刺さった深い傷は、
なかなか消えない。
私に向けられた言動、
心をえぐったあの人のことも、
一生忘れない。
許すことはしない。
でも、
あの人のおかげで、
生き方を変えることができた。
あの出来事があったからこそ、
今の自分がいる。
あの出来事があったからこそ、
強くなった自分がいる。
少しだけ、感謝している自分もいる。
許すことはしないけれど。
その出来事があったからこそ、
本当にやりたいことを見つけられた。
心が傷つき、悩んでいる人の
役に立ちたいと決めた。
悩んでいる人の笑顔を見るために、
国家資格を取ります。
悩んだ経験、
辛い経験を通して、
次は、
悩んでいる人を、
私が助ける番です。
あのときの記憶は、
きっと忘れることはできない。
けれど、
あなたのせいで…
あなたのおかげで…
感謝しています。
『君(犬)が見た景色』
お散歩のとき、
私は街並みを眺める。
青く広がる空、
道端に咲く小さな花、
遠くを走る電車。
でも、君は違う景色を見ている。
風に混じる匂いで
昨日の雨を思い出し
草の影に残る知らない犬の足跡をたどる。
人混みの向こうに、
見えない友達の存在を見つける。
家の中、
私はスマホやテレビに目を向けるけれど、
君はずっと私を目で追っている
台所に立つ私
スマホを触る私
笑う私
同じ場所にいても、同じ時間を過ごしても、
私と君の世界は少しずつ違う。
君の見ている景色はどんな世界?