文月

Open App

『ふたり』


放課後の教室。
西日が差し込み
カーテンが風にゆれている

机に頬杖をつく私の目の前で
幼馴染が笑う

何でもない話をしているだけなのに、
その笑顔が近いだけで胸の奥がじんわり熱くなる。
…こんな時間がずっと続けばいいのに。

「今日はどこ寄って帰る?」
彼が何気なく言う。いつもの言葉。

ほんの少し前までは、それが当たり前の日常だった..
だけど、もうその日常は崩れかけている。

「ねえ!」
教室の扉が開いた
その声に彼が振り向く。

そこには
彼が最近よく話すあの女の子

眩しい笑顔で
私の隣を少しずつ奪っていく

「一緒に帰ろ?」
彼女の声は軽やかで、
それに応える彼の笑顔は
私の知らない表情だった。

そんな顔、私には見せたことない

胸の奥がズキンと痛む
視界が少し滲んだのは、夕日のせいにした

彼は鈍感だから...

私の気持ちにも...
彼女の気持ちにも気づいていない、

「じゃあ、三人で帰ろっか」
その優しさが苦しい..。

なにそれ…
ずるいよ。
でも、隣を奪われたくない...

……

気づけば、私は二人の後ろを歩いていた。
隣だったはずの場所が、
今は彼女のための場所になっている。

…私はただの幼馴染。
一番近くにいるはずなのに、
一番遠いところにいるみたいだ。

2人の笑い声が夕焼けの風に乗って、
私の心に突き刺さる。

――好き。
言いたいのに、言えない。
この空気が壊れるのが怖いから。

彼の視線が私から逸れるたびに
胸の奥の想いが重く沈んでいく。

カーテンが風に揺れて、
その影が私の顔を隠してくれる。
それが少し、ありがたかった。
きっと私は今、
誰にも見せられない顔をしているから。

8/30/2025, 12:23:44 PM