文月

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『雨と君』


雨が降る放課後
私は校舎の軒先で外をぼんやり見つめていた

雨の日にだけ現れるあの人

名前も知らない
話したこともないのに
どうしてか気になってしまう。

空を見るその背中
どこか淋しそうで儚い

鞄を頭にかざして走る君

私は息をひそめるように
遠くから見守るだけだった。

雨の匂いと混ざって、胸がきゅっと痛む。

「今日こそ、声をかけられたら…」
毎回そう思いながら、いつもすれ違う。


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また、雨が降っている。
傘を持ってこなかった日に限って雨が降る

でも、雨は嫌いじゃない
雨の日だけ会う、知らないあの子

退屈そうに
頬を膨らましながら
空を眺める君

「声をかけたい。」
毎回同じことを思いながら
僕は君の横を駆け抜ける

あの子の存在が
雨の匂いと一緒に心に残り続けるのも
また、確かだった。


---


雨が弱まり
駅前の軒先で二人は立ち止まった。

偶然にも、目が合う。
お互いの存在を確かめるように、ただ見つめ合う。

彼が少し微笑んだ。
私も小さく笑い返す。

雨の匂いと少し濡れた髪の感触
胸が高鳴るその気持ち。

あの駅で
私たちの恋が静かに、動き出した音がした。

9/8/2025, 12:04:11 AM