きっと明日も
きっと明日も いい日だ
きっと明日も 何も変わらない
きっと明日も…
明日 が来る確証はないのに
それでも明日に賭ける
静寂に包まれた部屋
静寂に包まれた部屋、とはまさに今現在のこの部屋の事を言うんだろう。ちゃぶ台を挟み、我が家のトップ、じいじと弟が向かい合う。じいじは齢八十を過ぎても矍鑠としており、真っ直ぐな姿勢も相まって威厳、貫禄は充分だ。対して弟はすでに背を丸め、後ろめたいことがございますと言わんばかりに身を縮めている。
「で、庭の盆栽が折れてるんだが、本当に知らないんだな?」
「っ知らないって。大体、いつ折れたかなんて分かんないだろ」
「見くびるな。毎日世話しとるわ。昨日までは枝も異常なかったわ」
お前が庭でボール遊びしていたことも知っとる。
決定的な証言を突き付けられ、弟の目がこちらを向く。裏切り者、バラシタな。そんな言葉が聞こえそうな、恨みがましい視線に肩を竦める。
バカだねぇ、じいじ相手に悪事を誤魔化すなんて無理だ。ならばさっさと正直に謝った方がいいのだ。俺も何度、往生際悪く言い訳をしてどやされたことか。
「そうだ、タマだよっ」
唐突に弟は声を上げる。
「タマが、盆栽倒してた」
「…ほう」
突如として容疑者にされたタマがのそりと起き上がる。
本当にバカだねぇ。我が家の愛猫タマを一番可愛がってるのはじいじだし、タマが一番懐いてるのもじいじだ。そんな二人の絆を崩すような発言しようもんなら
成り行きを理解しているワケではないだろうが。濡れ衣を着せられたタマは力一杯弟の手を引っ掻く。
静寂に包まれた部屋に。弟の絶叫が響き渡った。
別れ際に
別れ際に、キスをひとつ。
ちゅっ、なんてらしくない可愛らしい音を響かせ。
一瞬遅れて真っ赤に染まる君の顔に口角が上がる。
「また、デートしようね」
通り雨
今日の部活は外周のランニング。まだまだ残暑が厳しいなかのそれは結構キツくて、不評なメニューランキングTOP3に入る。…だったのだが。
HR最中に雲行きが怪しくなりとうとう雨粒が窓を叩き出した。っよしっ。
普段なら鬱陶しい雨も今日は歓迎してやろう。
雨のため外に出るわけにもいかずとりあえず人の少ない廊下で柔軟。
「ラッキーだったなー」
「お前ら俺の日頃の行いに感謝しろよ」
「なんでお前なんだよ。俺だろ」
「違う違う。俺が雨男なんだって」
口々に勝手なことを言いつつ柔軟に勤しんでいると。ふと廊下に陽が射す。
「…あ?」
一斉に窓辺に張り付き外を見ると。いつの間にか青空がのぞいている。あー、葉っぱの雫がキラキラ、きれいだわー。
「おー、お前ら。雨上がったからランキングなー。よかったな、通り雨で」
無情に響く顧問の声に項垂れる。
「ったく、誰の日頃の行いがいいって?」
「それよりも、自称雨男、外出た瞬間また雨になったらぶっ飛ばすぞ」
「八つ当たり反対ー」
やはり口々に勝手なことを言いながら外へ飛び出す。雨上がりのこもる熱気の中、見上げた空には。
「虹だー!」
「久々に見たわー」
「やっぱ俺ら日頃の行いいいわー」
通り雨後のご褒美にテンション高く駆け出す。
秋
秋とは。日本における四季、春夏秋冬の季節のひとつ。夏と冬の間の季節。
昔はあっという間に過ぎる夏に、切なさや刹那的なものも感じていたが。最近はいつまでも続く猛暑にただただウンザリである。
しかしそんな事を言ってると急に冷え込みすぐさま冬がやってくるのだ。
秋とは?