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9/25/2024, 12:59:00 PM

窓から見える景色

「ほら、あれ桜の木なんですよ。春には部屋にいながらにしてお花見できますよ」

そんな不動産屋さんの売り文句に誘われ契約した部屋。その年の桜の時期は終わっていたため、次の春を心待ちにしていた。
しかし。春を待たずになんと桜の木が伐採。かなり古くからの木であり、根元の腐敗もあり安全面を考慮すると撤去せざるを得なかった。らしい。

そしてやってきた春。窓から見えるのは幻想的なピンクではなく、なんとも切ない切り株。

9/24/2024, 11:17:48 AM

形の無いもの

あ、あれは恐竜だ。あっちは鳥だな、まさに飛んでるみてー。
ようやく連日の猛暑も落ち着いた、昼下がり。休憩に訪れた公園のベンチに寝転がり空を見上げる。よく晴れた青空に白い雲。その雲を眺めながら妄想に耽る。少し前には鳥だった雲はそのまま飛び立ち、今や形無いものとなり流れていく。
そうやってとりとめもない例えを繰り返し時間を過ごす。

あー、こうしててもしゃーない。さっさと詫びとくか。

上司から突き付けられた理不尽なミス。100%こちらに不手際はない。が。社会とはそういうものだ。形だけの謝罪をすべく公園をあとにする。

9/23/2024, 11:24:28 PM

ジャングルジム

ジャングルジムを制すものは公園を制す。

なんつって、ガキの頃思ってたなー。実際そんなことはないが、公園内で一番高いジャングルジム、そのてっぺんから周りを見下ろすと偉くなった気がしていた。

ガキの頃は高いと思ってたジャングルジムも大人になった今ではそれほどの高さもない。てっぺんに腰掛け、周りを見下ろす。深夜の公園は誰も居らず、静まりかえったその雰囲気がまさに自分の現状と重なりやるせない。

上にいくことが偉いんだと思ってた。そのてっぺんから他者を見下ろすことが偉いんだと思ってた。本当にそんなことはないというのに。

そういや、初めてジャングルジムのてっぺんまで登った時。スゴいねーなんて褒められいい気になって。結果、ジャングルジムを独り占めしてあの時も人が居なくなった。みんなと遊ぶからこそ楽しい公園なのに。

仕事も。周りのみんながいてこその会社だ。
…また、みんなとやれるかな…。

地面に降り立ちジャングルジムを振り返る。やはりそれほどの高さはない。これを制したところで上には上がいる。一人で登りつめたって楽しくもない。
公園はみんなで遊ぶところ。会社もみんなでつくっていくもの。
もう同じ過ちはしない。
明日は朝イチで謝罪行脚だ。

9/22/2024, 2:01:52 PM

声が聞こえる

「大森小学校、七不思議ツアー、レッツゴー!」
「イエーイ♪」
盛り上げるべくパチパチと拍手をおくる。学校に来るにはかなり遅い時間、塾に行くふりをして集まったのはいつものメンバー。タカオとマサキ、コウジとユキヒロ。

肝試しをしよう、じゃあせっかくだから学校の七不思議をまわってみよう。トントン拍子にそんな話が進んだのは、きっと勉強尽くめの日々に嫌気が差していたから。

夜の学校は独特の雰囲気がある。昼間は騒がしい廊下も物音ひとつしない。
「てか、うちの七不思議って何があんの」
「トイレの花子さんは?」
「いや、さすがに女子トイレには入れん」
「じゃあアレだ。動く人体模型」
「人体模型って倉庫に片付けられてなかったっけ」
「あー、理科室で見掛けないかも。あれは、二宮金次郎が走るってヤツ」
「そもそも二宮金次郎像ないから」
「えー。この学校何があんだよ」

「西校舎の四階で声が聞こえるってのがあるよ」

「そんなのあったっけ?」
声ってなに、あやふやだなー。ツッコミながらも西校舎へ向かう。辿り着いた四階はより一層暗く感じる。いつもの仲良しメンバー、普段は会話が途切れることもないのに雰囲気にのまれ口数も減る。
「…えーと、何だっけ、声だっけ」

「うん、そう。みんなと一緒にいれて久々に楽しかった」

…あれ。いつものメンバー、仲良しメンバー。タカオとマサキ、コウジとユキヒロ。…あれ。これは誰の声だっけ?

次の瞬間、絶叫が響き渡る。一斉に駆け出しその場をあとにする。

ふふ、久々に子供の驚く顔が見れた。まったく近頃のガキときたらゲームやスマホばかりでつまらない。かつてはどの学校にも存在した七不思議も廃れつつある。
花子は垢抜けたコギャルに転身してお洒落な複合施設のトイレに引っ越し。人体模型のガンさんは見た目のグロさからどこぞの倉庫へ追いやられ。金さんに至っては歩きスマホを助長するなんて言いがかりを付けられ、撤去されてしまった。

やんちゃな四人組にそっと声を掛け夜の学校へと誘い。普段は防犯の観点から忍び込むことも出来ない学校の扉を開け。

僕はここにいるんだから。たまには僕の声も聞いてね。

9/21/2024, 12:42:15 PM

秋恋

日本における四季。春夏秋冬。その中でも秋が一番好き。抜けるような青空、暑くもなく寒くもなく。お洒落も楽しめる。
そんな大好きな季節が失われつつある。いつまでも続く猛暑にうんざり。私の好きな季節を追いやりよって、けしからん。

あぁ秋が恋しい。

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