だから一人で、いたい
この前書いた小説じゃないけど、別にそんなに多くの友達なんていらない。
本読んでる時に話しかけられても迷惑なだけだし、本が1番面白い時に話しかけられたらほんとにイライラする。
だから一人でいたい。
でもみんなはそうじゃない。
誰かと一緒にトイレ行ったり、移動教室の時に誰かと一緒に行ったりする。
でもさ、それって必要ある?
別にトイレも移動も一人でできるじゃん。
何で友達と一緒に動かないといけないの?
ほんと不思議。
何で固まって動くの?
自分のしたいことを曲げてまで誰かと一緒にいる必要なくない?
でも多くの人と関わらないと小説のネタなんか思いつかないし。ずっと本読んでたら周りが見えない。
それだけ。たまに人と仲良くしないとって思う理由は。
前に普通に仲良い子Aちゃんから遠足の時一緒に弁当食べよう。
って弁当の前に言われた。
私は別に良かったからオッケーして一緒に食べた。
そして、Aちゃんと一緒に食べてるとBちゃん達が言ってきた。
B「Aちゃん、前に一緒に弁当一緒に食べようって言ったじゃん。なのになんで一緒に食べないの?行こうよ。」
A「え〜、Aちゃんとそんな約束したっけ?」
B「したやん。忘れたの?ほら、食べよう。」
A「え〜、してないもん。」
でもAちゃんはその約束を忘れていた。
BちゃんはAちゃんに怒るんじゃなくてまだ一緒に食べようと言っていた。
私は別にその場に一人ぼっちってわけでもないし、
Aちゃんに
私「Aちゃん。Bちゃん達と食べてきたら?」
私はそう言った。
なのにAちゃんはBちゃんの元へ行こうとはしなかった。
B「はやく、約束破るのAちゃん。」
A「知らないよ。約束してないもん。」
結局、AちゃんはBちゃん達と食べずに私と食べた。
Bちゃんは呆れて結局別の人と食べてた。
あーあ、めんどくさいなって思ったよ。
そして、私にはすごく不思議だ。
Bちゃんだって一緒に食べる人はいるんだよ?
なのになんでそんなAちゃんに執着するの?
別にBちゃんだって他に食べる人がいて別に一人じゃないのに。まあ、約束してたんならどうしても一緒に食べたかったんやろうね?
不思議でたまらない。
あなた達は人と何でも行動したい人達はさ?
弁当の約束とか自分が一人にならないためにわざわざ前の日から約束するんじゃないの?
一人になりたくなくないから約束するんじゃないの?
まあ、分かんない。
その子の気持ちは。
どうしてもBちゃんはAちゃんが良かったのかもしれない。
でも、よくない?別にあなたが一人な訳じゃないんだから。食べる人はいるんだから。
その出来事に対して私は
くそめんどくさいと思った。そんなに一人になりたくないの?
まあ、人それぞれだよね。
私は別に一人でも平気って思っててもBちゃんは嫌なんだよね。
別にそこは私の考えなんて押し付けられないし、その子と私の考え方は全く違うんだなーで終わるし。
ただ女ってめんどくさいなー。
それが私が常に日常の中で思うこと。
別に一人でもいいし。
後からわかった話。
AちゃんはBちゃんと前にちゃんと約束してたらしい。
まあ、Aちゃんが忘れてただけですね笑笑
Bちゃんが少しイラつきながら私に言ってきて、その話の真実を知った。
その真実はLINEの中の履歴でした。
あーあ、しょーもな。
心の底から思う。
嵐が来ようとも
「嵐が来ようとも絶対俺はずっと、りいの隣にいるから。
世界中のみんながりいの敵だとしても俺はずっとお前の味方だ。愛してる。だから俺を信じて付き合わないか?」
高校2年の夏、彼氏に振られて1人で泣いていた私に彼は真剣な顔をしてそう言った。
そんな告白が今の弱ってる心には痛いほどに響いた。
私は必死に涙をぬぐいながら笑顔を作って
「ありがとう。」
そういって、彼の言葉に頷き彼の手をとった。
ーそれから3年後ー
「あゆくん!大丈夫!?
怪我して救急車で運ばれてびっくりしたよ。
痛いところない?多分入院だよね!
なんでも言ってね。なんでも持ってくるし今度は私があゆくんを支えるからね?ていうか、ほんと無事で良かったよ〜」
3年前あゆくんは傷ついた私に『ずっとお前の味方だ。愛してる。』と言ってくれた。今までずっと一緒にいてくれたあゆくんには感謝の気持ちでいっぱいだ。
今はお互い大学生で、大学を卒業したらしたら結婚してくれとも言われていた。
だから今度は私だ。あゆくんが怪我で辛くてもわたしが支えるんだ。
そう言う気持ちであゆくんに笑いかけた。
するとあゆくんは
「はっ?誰あんた?」
っ!?
あ、ゆくん?
あゆくんどうしたの?
あゆくんは学生の時私に告白してくれる前のような冷たい他人を見るような目つきをしていた。
「あ、ゆくん?誰あんたってりいだよ?
今までずっと一緒だったりいだよ?どうしたの?」
あゆくんの変わりように恐怖を抑えながら聞くと、
「あぁ、小川さん来てらっしゃったんですか。
今から大事な話をします。
ひとまずこちらへ。」
あゆくんから返事が来る前にお医者さんが来た。
「はい・・・・・・・・・・」
どういうこと?
あゆくんのあの目、私に学生の時告白してくれた前のようだった。あゆくんは私に告白してくれる前、中学生の時に女関係で酷い目にあったらしくて女嫌いだった。
ただただ混乱しているとお医者さん言いにくそうに話し出す。
「小川さん。
落ち着いて聞いてください。
松原あゆとさんは事故の際、頭を強く強打し、人間関係の家族以外のことの記憶を失くしてしまいました。日常生活には支障はありませんが、高校生になってからの交友関係などの記憶をなくしています。
しかし、中学生になるまでのことは覚えているようです。松原さんの頭の中ではおそらく自分が忘れてしまった人物は消え、自分の中で成り立つようになっていると思います。
脳に良くないため、無理に思いただせることは絶対に避けてください。」
う、そでしょ?
信じられない。あゆくんが私のことを忘れているなんて・・・・・・・・・・
そこからの先生の話は上手く頭に入ってこなかった。
話が終わりあゆくんのいる病室に向かう。
どんな顔してあゆくんと会えばいい?
あゆくんは私の出会ったことも高校生の時告白してくれたことも全部忘れてしまっているんだ。
あゆくんにもう一度あの敵意を込められた目で見られるなんて想像するだけでも辛かった。
行きたくない。
でも行かないと。
どんなに酷く接されたって私はあゆくんが好き。大好き。その思いはずっとこれからも変わらないんだ。
よし。行こう。どんなこと言われてもあゆくんと一緒にいるんだ。支えるんだ。
覚悟を決めて笑顔でノックをして中に入る。
「ちっ、女かよ。
入ってくんな。俺は女が大っ嫌いなんだ。
りいだかなんだか知らないけど出ていってくれ。
空間に女がいるだけでも迷惑なんだよ。」
っ!
入ってすぐ鋭く強い言葉の刃が飛んできた。
でも、ここであゆくんのいうことに従う訳には行かないんだ。
負けない。どんなことを言われても。
「ごめんね。私、小川りいっていうんだ。よろしくね。」
笑顔で言う。
「よろしくなんてしねえし。出てけよ」
睨みながらあゆくんは言ってきた。
やっぱり辛い。
「ごめんね。それはできない。私はあゆくんの側にいるからずっと。
見て!今日は天気だね!あゆくん退院したらまた走りに行けるね!」
あゆくんはすごく走るのが速くて走るのが好きなんだ。
だからいつも夕方は走るのが日課なの。
「っ!なんてお前がそれを知ってるんだよ。
てか、はやくか」
「好き、大好き」
あゆくんがおそらく「はやく帰れよ」と言おうとしたのを遮って言う。
あゆくんが私と少し打ち解けてきたらもう一度今のあゆくんに気持ちを伝えようと思ってたけど、どうしても気持ちが抑えきれなかった。
私に冷たいあゆくんを見てもその姿を見るだけで愛しいと言う気持ちが溢れるんだ。
「はっ?俺のことよく知らないくせに告白とかなんだよ。どうせお前も俺のこと外見だけ見て告ってんだろ?
女ってみんなそんなもんだもんな。
って、何泣いてんだよ。きもっ」
泣いて、る?
慌てて目元に手をやると涙で濡れていた。
あれっ?泣くつもりなかったんだけどな〜。
涙を頑張ってぬぐいながら必死に笑顔を作ってもう一度言う。
「ご、ごめん!
でもね。本当に好きなんだあゆくんのこと」
どんなに嫌いでも好きになってもらう。
それが私にできることなんだ。
あゆくんは私の顔を見て何を考えるような仕草をして荒い息を吐きながら頭を抑えた。
「はぁ、はぁ、痛い。」
「大丈夫!?」
そう言って背中をさすろうとした。
「触んなっ!」
あゆくんは顔をしかめながらもそう叫んだ。
「ほんとに1人にしてくれ!」
そう、だよね。
ごめんね。
「分かった。」
そう返事して病室を出た。
sideあゆと
「はぁー。
なんかドット疲れたな。何だよあの女」
まだ直らない頭の痛みを感じながら俺はため息をついた。
買い物行ってたらバイクにひかれて、病院送りきなるし、起きたら知らない女がいるし、その女は急に現れて告ってきて、しまいには泣いて帰って行った。
まだ出会って一日も経ってないのに告白なんて。どうせ、外見だけを見ての告白だろう。
うんざりだ。
俺は中学の時、女から裏切られて散々な目にあった。だから女なんて大っ嫌いだ。
しかも、女なんてやっぱりすぐ泣くしうざい。
なのに、りいって子のあの泣きながら無理して笑ってるような笑顔を見たら心が痛むのと同時に、頭が痛くなる。
なんかすごく悪いことをしたような。
あの子を傷つけてはいけないような。
そんな気がする。
今まで女に対して傷つけないようにとか考えたことなかったのに。
何でだよ。
ていうか、俺何を買いに買い物に行ったんだっけ?誰かに頼まれたような気がする。誰だ?
まぁ、いっか。
あの女のことなんて忘れよ。
sideりい
あんなに面と向かって拒否されたら流石にしんどい。
でも、仕方ないよね。あゆくんは私と過ごしたことすべて忘れてるんだもん。
こんぐらいで落ち込んでちゃダメだよね!
自分に気合いを入れて家への道のりを急いだ。
次の日
私はあゆくんの入院するための着替えなどを持って行きに病室に持って行こうとあゆくんの元へ向かっていた。
1ヶ月前にあゆくんとは同居し始めたんだ。
だからあゆくんの荷物は全部うちにある。
あゆくんは私と暮らしていたことも忘れているからびっくりして嫌がられなければいいな。
そう考えているとあゆくんの病室の前まで来ていた。
よしっ!今日も頑張るぞ!
コンコン
ノックするけど返事がない。
寝てるのかな?
でも荷物置かないといけないし。
どうしよ。まあ、さっと置くだけならいいか。
「失礼しまぁーす。」
恐る恐る中に入るとやっぱりあゆくんはねていた。
ふふ。
やっぱり可愛い寝顔。
あゆくんが記憶をなくす前は朝早く起きてこっそり寝顔を見てたな。
少しだけ寝顔に見惚れてしまう。
でも、すぐ我に返った。
いけない!早く荷物を整理しないと。
棚に荷物を整理していると
「りい。愛してる。」
えっ?
あゆくん思い出した?
慌ててあゆくんを見るけどあゆくんは目をつぶったままだった。
寝言か。
でも、やっぱり寝言でもあゆくんに名前を呼んでくれるなんて嬉しいな。
るんるん気分で整理を続けて5分が経った時
「ううーん。」
そんな声が聞こえてあゆくんの方を向くと
あゆくんは目を開けていた。
「わっ!?」
突然のことにびっくりして思わず小さく声が出てしまった。
「またお前かよ。人が寝てる間に。
次は何だよ!てか、俺の荷物勝手に触んな。」
昨日の冷たい目で見られて怖気づく。
「あぁ、ごめんなさい。体調大丈夫?」
昨日事故に遭ったばかりだからどっか痛いところないかな?
「別に。なぁ、お前は何で昨日も今日もここに来る?何で俺のことを知っている?」
それは・・・・・・・・・・・
言えない。言えないよ。
今のあゆくんには。
女嫌いなあなたに、私とあなたは付き合ってたんだよ。高校の時告白してくれて救われたんだよ。
なんて。
言えない。
だからただ私は愛を伝える事しかできないの。
「好き・・・だからだよ。愛してるから。」
目を真っ直ぐに見て言うと
「っ!何なんだよ!好き、愛してるって。
お前と会ったことも話した事もねーだろ!
俺の、俺の何を知ってんだよ!
どうせ、外見しか見てないんだろ?
お前も他のみんなと同じで!
俺は嫌いだ。あんたなんか知らねー」
あゆくんはそう吐き捨てて外を見る。
「だよねっ。あゆくんは何で急にって感じだよね。でもね、でも、外見なんかじゃないの!
本当に心の底から愛してるの。
あゆくんの中身が好きっ!
女嫌いで女の子には冷たいけど、優しさだってあることを知ってる。
友達思いのことも家族思いなことも全部知ってるの!私はその優しさに救われたの。あなたに救われた!だから私を信じて、私を知ってそれで私のことをあゆくんが好きになれたら付き合ってほしい。私はいつでも何日でもあゆくんの側にいる!だから、信じてっ!?」
堪えきれず涙が溢れた。
それを見てあゆくんはびっくりしたようにそれでいて泣きそうなりながらこっちを見て言った。
「分か、った。まだ何も知らないくせに嫌いなんて言って悪かった。
俺がお前に何をしてやって、こんなに思ってくれているのかはわからないけど、信じる。お前の名前を教えてくれ。」
っ!あゆくん・・・・・・・・・
嬉しい。やっぱりあゆくんはあゆくんだ。
記憶を失っても優しいあゆくんだ。
「私の名前は小川りい。
あゆくんと同じ大学生だよ?よろしくね!」
これからがスタートだ。
もう一度あゆくんと・・・・・・・・
sideあゆと
俺はりいがいなくなった病室で1人さっきのことを考えていた。
気持ちよく寝ていた時になんか音がして誰かいるのかと目を開けたらそこには昨日の女がいた。
またこいつかよ。今度は何をしにきたんだよ。
人の荷物触って。
そんなふうに思い睨むと女は慌てたように言った。
「あぁ、ごめんなさい。体調大丈夫?」
俺の体調を気遣うように聞いてきた。
別にお前から心配されたくねぇし。
勝手に人の部屋入って、来んなって言ったのに今日もまたきている俺の嫌がることをする女する女にはな。
昨日からこいつはなんで俺に構うんだ?
ガキの頃会ったりしたのか?
でも、だったら覚えているはずだし。
何でだよ。
「別に。なぁ、お前は何で昨日も今日もここに来る?何で俺のことを知っている?」
そう聞くと女は躊躇したように間を開けて答えた。
「好き・・・だからだよ。愛してるから。」
はぁ?またそれかよ。好きって、愛してるって俺達会った事ねえのになんてそんな薄っぺらい告白してくんだよ。
怒りがピークに達して怒りに身を任せて言葉を投げつける。
「っ!何なんだよ!好き、愛してるって。
お前と会ったことも話した事もねーだろ!
俺の、俺の何を知ってんだよ!
どうせ、外見しか見てないんだろ?
お前も他のみんなと同じで!
俺は嫌いだ。あんたなんか知らねー」
もう、ほんとにお前なんか大っ嫌いだ。
てかこんなに言ったらどうせ女は泣くんだろ?
酷いとか勝手に言って泣くんだろ?
でもそんなこと知ったこっちゃねー
最悪、女が泣き叫ぶのを覚悟しながら外を見ていると
「だよねっ。あゆくんは何で急にって感じだよね。でもね、でも、外見なんかじゃないの!
本当に心をあゆくんの心の中から愛してるの。
女嫌いで女の子には冷たいけど、優しさだってあることを知ってる。
友達思いのことも家族思いなことも全部知ってるの!私は優しさに救われたの。あなたに救われた!だから私を信じて、私を知ってそれで私のことをあゆくんが好きになれたら付き合ってほしい。私はいつでも何日でもあゆくんの側にいる!だから、信じてっ!?」
その女は泣かなかった。
今にも泣きそうになりながらも強く訴えてきた。それで俺は悟った。
こいつは別に外見で好きになってきた訳じゃないんだ。ただ、何で俺を好きなのかはわからないけど、ちゃんと俺の心を見てくれる。
じゃあ、俺は昨日と今日彼女を平然と傷つけていた。ただ純粋に俺を好きだと言う女の子に。
俺は最悪だった。
「分か、った。まだ何も知らないくせに嫌いなんて言って悪かった。
俺がお前に何をしてやって、こんなに思ってくれているのかはわからないけど、信じる。お前の名前を教えてくれ。」
この子を信じたいと思った。
俺に酷いことを言われてもただ本気で気持ちを伝えてくれる強くて真っ直ぐな子を。
「私の名前は小川りい。
あゆくんと同じ大学生だよ?よろしくね!」
りい・・・か。
なんか知ってる。
なんだ?この違和感。
初めてじゃない。この子の名前は。
知ってる。ずっと前から知ってる。
何だ?思い出せない。
りい?
君は俺と会ったことがあるのか?
その謎に包まれる答えは、りいがいなくなってしまったこの部屋ではどうしようもなかった。
sideりい
そしてあゆくんは無事退院し、それからはあゆくんと一緒に住んでいた家には一旦住むのをやめてお互い実家に戻った。
お母さんに今のあゆくんの現状を話したら心配されたけど、笑顔で受け入れてくれて実家に。そして、今は毎日あゆくんと会っている。
「あゆくん!お待たせ!」
今日もカフェで会う約束をしていた。
あゆくんは最初はぎこちなかったけどだんだん会っていると前のあゆくんに戻ってきた。
でもまだ完全に記憶をなくす前のあゆくんでは当たり前にない。
私と今のあゆくんの関係はまだ友達だから。
でも、少しずつでいいんだ。
少しずつ好きになってもらえればそれで幸せ。
「りい!来たか!りいの好きなカフェラテ頼んで置いたぞ?」
「うん。ありがとう!」
私はどんなあゆくんでも好きなんだ。
2人で何気ない話をして盛り上がる。
大学の先輩の愚痴とか、その日嬉しかったこととか。
そんなことを話していると、急にあゆくんが真剣な顔をして言ってきた。
「りい。今日一日空いてるか?
空いてたらちょっと出かけないか?」
どうしたんだろう?
「うん。空いてるよ?どこに行きたいの?」
「まぁ、ちょっとな。」
聞いてもあゆくんは答えを教えてくれなかった。
それからカフェをでて、あゆくんに連れられるままに足を運んだ。
連れてきてもらった先は海だった。
青い空に綺麗に澄んだ海。
綺麗・・・・・・・・・
海に見惚れていると
「りい。」
あゆくんが呼んだ。
ん?
「どうしたのあゆくん?」
「りい。りいのことを好きになった。
今まで待たせて悪かった。俺と付き合って欲しい。」
うそっ!?ゆ・・・めっ?
「ほんとに?」
信じられないと思いながらあゆくんに聞く。
「ああ、ほんとだ。
りいが好きだ。」
嬉しいっ!
あゆくんの2度目でも両思いになれたんだ。
「はぃ!ぜひお願いします!」
そう返事して微笑んだ。
そして2人で海を満喫してから帰り道を手を繋いで歩いた。
そして、あゆくんが信号を渡ろうとするところで突然止まった。
「った!痛い!はぁ、はぁ、はぁ、りいっ!」
えっ?あゆくん?
突然あゆくんが倒れた。
何で突然?
あ!ここ、あゆくんが事故に遭ったところだ!
だからこの場所を見て混乱したのかもしれない。
とにかくあゆくんを病院に連れて行かないと。
私は急いでタクシーを拾い病院に向かった。
緊急であゆくんことを事故の時見てくれた先生にしてもらえた。
「あの!あゆくんは大丈夫でしょうか。」
また、あゆくんに何かあったらどうしよう。
「大丈夫ですよ。体に異常はありません。
ただ、倒れた場所が事故の場所だったので何か記憶が重なり合って混乱してしまったのかもしれません。今日は泊まっていってください。
明日もう一度確認して、何も異常がなかったら
明日には帰れるでしょう。」
良かった〜。
その日私は安心してあゆくんの手を握りしめて眠りに堕ちた。
「ん。」
私は朝の5時頃に目が覚めてしまった。
あゆくんはまだ起きていなかった。
あゆくんが起きた時誰もいなかったら寂しいよね。
手を握ってあゆくんが起きるのを待っていると
「りい。」
あゆくんが目を覚ました。
「あゆくん。どう?体痛いとこない?」
水を渡しながらそう聞くと
「りい。俺、全部思い出した。」
えっ!思い出した?
全部?うそっ!
「ほんと?私と一緒に住んでたことも?
高校の時告白してくれたことも?全部?」
あゆくんは頷いた。
「うん、思い出した。
あの、あの、ごめん!りい!
俺、記憶をなくしてりいに会った時、酷いこと言ったよな。ほんとごめん。きもいとか帰れとか迷惑だとか。すごい最悪なこと言った!
ほんとごめん!
りいを守るって言ったのにりいの側にいるって言ったのに・・・・・・・・最低だ。」
あゆくんは泣きながら謝った。
違う、違うよ。あゆくん。
「違うよ。あれはあゆくんのせいじゃないもん!あゆくんは記憶をなくしても、私を好きになってくれたんだよ?私が信じて?って言ったら、信じるって言ってくれた。
だからあゆくんは記憶をなくしてもどんなあゆくんでも私の味方をしてくれるし、私が愛してる、大好きなあゆくんだったんだよ!」
だから自分を責めないで?
そんな気持ちであゆくんを見ると涙で澄んだ瞳をして笑ってくれた。
「ありがとう。
りいが諦めないでくれたおかげで、りいが信じてって言ってくれておかげで今がある。
これからもよろしくな。
今度こそどんなことがあっても離さないし、味方だから。りい。愛してる。もう1度言う。
大学卒業したら結婚してくれ。」
嬉しいっ!
やっぱり諦めずにあの時あゆくんへの気持ちを忘れないで真っ直ぐ伝えて良かった。
「はいっ!喜んで!これからもよろしくね!」
愛しい人に向かって微笑んだ。
1度、記憶を失くしてしまったあゆくん。
でも、愛を伝えることで1番大切な人、
あゆくんは私のもとへ帰ってきた。
これから先、何があっても私達は永遠に一緒だ。どんな嵐が来ようとも2人で守り抜いていす。
最愛の人の隣で。
完
完結しました!
今まで読んでくれた方ありがとうございました。
嵐が来ようとも
「嵐が来ようとも絶対俺はずっとりいの隣にいるから。
世界中のみんながりいの敵だとしても俺はずっとお前の味方だ。愛してる。だから俺を信じて付き合わないか?」
高校2年の夏、彼氏に振られて1人で泣いていた私に彼は真剣な顔をしてそう言った。
そんな告白が今の弱ってる心には痛いほどに響いた。
私は必死に涙をぬぐいながら笑顔を作って
「ありがとう。」
そういって、彼の言葉に頷き彼の手をとった。
ーそれから3年後ー
「あゆくん!大丈夫!?
怪我して救急車で運ばれてびっくりしたよ。
痛いところない?多分入院だよね!
なんでも言ってね。なんでも持ってくるし私が今度はあゆくんを支えるからね?ていうか、ほんと無事で良かったよ〜」
3年前あゆくんは傷ついた私に『ずっとお前の味方だ。愛してる。』と言ってくれた。今までずっと一緒にいてくれたあゆくんには感謝の気持ちでいっぱいだ。
今はお互い大学生で、大学を卒業したらしたら結婚してくれとも言われていた。
だから今度は私だ。あゆくんが怪我で辛くてもわたしがささえるんだ。
そう言う気持ちであゆくんに笑いかけた。
するとあゆくんは
「はっ?誰あんた?」
っ!?
あ、ゆくん?
あゆくんどうしたの?
あゆくんは学生の時私に告白してくれる前のような冷たい他人を見るような目つきをしていた。
「あ、ゆくん?誰あんたってりいだよ?
今までずっと一緒だったりいだよ?どうしたの?」
あゆくんの変わりように恐怖を抑えながら聞くと
「あぁ、小川さん来てらっしゃったんですか。
今から大事な話をします。
ひとまずこちらへ。」
あゆくんから返事が来る前にお医者さんが来た。
「はい・・・・・・・・・・」
どういうこと?
あゆくんのあの目、私に学生の時告白してくれた前のようだった。あゆくんは私に告白してくれる前、中学生の時に女関係で酷い目にあったらしくて女嫌いだった。
ただただ混乱しているとお医者さん言いにくそうに話し出す。
「小川さん。
落ち着いて聞いてください。
松原あゆとさんは事故の際、頭を強く強打し、人間関係の家族以外のことの記憶を失くしてしまいました。
しかし、中学生になるまでのことは覚えているようです。
日常生活には支障はありませんがおそらく小川さんや高校で出会った友人のことの記憶を失っています。
脳に良くないため、無理に思いただせることは絶対に避けてください。」
う、そでしょ?
信じられない。あゆくんが私のことを忘れているなんて・・・・・・・・・・
そこからの先生の話は上手く頭に入ってこなかった。
話が終わりあゆくんのいる病室に向かう。
どんな顔してあゆくんと会えばいい?
あゆくんは私の出会ったことも高校生の時告白してくれたことも全部忘れてしまっているんだ。
あゆくんにもう一度あの敵意を込められた目で見られるなんて想像するだけでも辛かった。
行きたくない。
でも行かないと。
どんなに酷く接されたって私はあゆくんが好き。大好き。その思いはずっとこれからも変わらないんだ。
よし。行こう。どんなこと言われてもあゆくんと一緒にいるんだ。支えるんだ。
覚悟を決めて笑顔でノックをして中に入る。
「ちっ、女かよ。
入ってくんな。俺は女が大っ嫌いなんだ。
りいだかなんだか知らないけど出ていってくれ。
空間に女がいるだけでも迷惑なんだよ。」
っ!
入ってすぐ鋭く強い言葉の刃が飛んできた。
でも、ここであゆくんのいうことに従う訳には行かないんだ。
負けない。どんなことを言われても。
「ごめんね。私、小川りいっていうんだ。よろしくね。」
笑顔で言う。
「よろしくなんてしねえし。出てけよ」
睨みながらあゆくんは言ってきた。
やっぱり辛いな。
「ごめんね。それはできない。私あゆくんの側にいるからずっと。
見て!今日は天気だね!あゆくん退院したらまた走りに行けるね!」
あゆくんはすごく走るのが速くて走るのが好きなんだ。
だからいつも夕方は走るのが日課なの。
「っ!なんてお前がそれを知ってるんだよ。
てか、はやくか」
「好き、大好き」
あゆくんがおそらく「はやく帰れよ」と言おうとしたのを遮って言う。
あゆくんが私と少し打ち解けてきたらもう一度今のあゆくんに気持ちを伝えようと思ってたけど、どうしても気持ちが抑えきれなかった。
私に冷たいあゆくんを見てもその姿を見るだけで愛しいと言う気持ちが溢れるんだ。
「はっ?俺のことよく知らないくせに告白とかなんだよ。どうせお前も俺のこと外見だけ見て告ってんだろ?
女ってみんなそんなもんだもんな。
って、何泣いてんだよ。きもっ」
泣いて、る?
慌てて目元に手をやると涙で濡れていた。
あれっ?泣くつもりなかったんだけどな〜。
涙を頑張ってぬぐいながら必死に笑顔を作ってもう一度言う。
「ご、ごめん!
でもね。本当に好きなんだあゆくんのこと」
どんなに嫌いでも好きになってもらう。
それが私にできることなんだ。
あゆくんは私の顔を見て何を考えるような仕草をして荒い息を吐きながら頭を抑えた。
「はぁ、はぁ、痛い。」
「大丈夫!?」
そう言って背中をさすろうとした。
「触んなっ!」
あゆくんは顔をしかめながらもそう叫んだ。
「ほんとに1人にしてくれ!」
そう、だよね。
ごめんね。
「分かった。」
そう返事して病室を出た。
sideあゆと
続く
読んでくれてありがとうございました。
お祭り
「あと少しだからね。ちょっと待っててね、朝ちゃん。」
そう言って私の着付けをしてくれるのは私のおばあちゃん。
今日は夏祭りなんだ。
しばらく合ってなかったけど3年ぶりにあるんだ。
そして、私、朝日には今年初めての彼氏ができたのです。だから今日の夏祭りは彼氏とのお祭りデート。
半年前に彼の方から告白してくれて私も好きだったから当然喜んでオッケー。
めでたく付き合うことになったのです。
彼氏とお祭りデートなんてワクワクしかなくて、今日は朝からずっと張り切っていた。
可愛いって言ってもらえるかな?
少しでも叶斗くんと釣り合う女の子になりたくてなれない浴衣を来て化粧をしてお祭りに行くんだ。
「よしっ。できたよ朝ちゃん?」
おばあちゃんからそう言われて鏡を見ると華やかでいつもとは違う自分が写っていた。
浴衣可愛すぎ!
おじいちゃんに買ってもらった甲斐があったな。
「似合ってるよ。朝ちゃん、綺麗。」
「うん!あばあちゃんありがとう。」
おばあちゃんにお礼を言ってもう一回化粧を整える。
よしっ。これでいいかな。
いつもの自分よりはマシになってる。
もう一度鏡でおかしいところはないか確認してから家を出た。
家から祭の開場まではすぐ近くだ。
叶斗くんとは近くの公園で待ち合わせしてる。
もう来てるかなぁ?
小走りで公園に入るとやっぱり叶斗くんは先に来ていた。
かっこいいな〜。いつものことだけどあんなかっこいい男子が私の彼氏だなんて信じられないよ。
叶斗くんの後ろ姿に夢中になっていると
叶斗くんは気配を感じたのかこっちを向いた。
「お〜い!あーちゃん!こっちこっち!」
ドキッ
かっこいい姿で自分の名前を呼ばれて胸が高鳴
「おっ〜。かわいい!似合ってるよ。あーちゃん!」
1番に可愛いと言ってくれた。
嬉しい。頑張って可愛くした甲斐がありすぎるよ〜
「ありがとう。
あの・・・頑張って叶斗くんのために可愛くしてきたの」
恥ずかしい思いをしながらも伝えると
ハァーとため息が横から聞こえてきた。
どうしたんだろう。
やっぱり可愛くなかった?
不安になって横を向くと赤い顔で叶斗くんは何かぶつぶつ呟いていた。
「ぁ〜、俺の彼女可愛すぎだろ。
しかも俺のためとかズルすぎ。
もうちょーかわいー」
もしかして、慣れない浴衣着てくんなとか思ってる。
逆に迷惑かけてるかな?
「あの〜、叶斗くんどうした?
やっぱりこの格好迷惑?」
そういうと、叶斗くんは焦った顔をした。
「いやいや、違う!迷惑なんかじゃないよ絶対!
可愛すぎて悶えてた。」
ストレートに言われて嬉しいけど恥ずかしくなった。
////っ!
可愛いって言われて嬉しいけど、ストレートすぎるよ。
「よし!じゃあ、行こうかあーちゃん?」
お互い顔の赤みが直ってからようやく祭りへと向かう。
「うんっ!」
よしっ、楽しむぞー!
それからは幸せな時間だった。
2人でわたあめやりんご飴を食べて金魚すくいをして、たくさん笑って、ほんとうに楽しかった。
これから花火が始まる。
「ねぇ、あーちゃん。ずっと一緒にいようね。」
花火が打ち上げられる瞬間叶斗くんから優しくキスをされた。
「うん。これからもよろしくね。叶斗くん。」
叶斗くんと付き合えて恋を知った。
今これ以上にないくらい幸せだ。
この幸せがずっと続きますように。
花火を見上げながら大好きな叶斗くんの横でそう願った。
「ねぇ、今日久しぶりにカラオケいこう!」
「おっ、いいね!!今度こそ負けないから!」
「ねぇ、職員室ついてきて!」
「うん!いいよー?いこいこ!」
やっと7時間目が終わって開放感溢れる放課後みんなが遊びに行こう。だとか、ここに着いて来て。だとか女子同士で約束する話を聞きながら私はひとり本を読んでいた。
やばっ、この本面白すぎる!
何回でも読めるわ!!
楽しみながら本を読んでいたらいつの間にか外は暗くなっていた。
「もうこんな時間か・・・・・・・・帰ろ。」
「ただいまぁ。」
挨拶をして家の中に入るとお母さんがご飯を作って待っていた。
「あら。莉乃(りの)おかえり。
ご飯もうすぐできるからね。」
「うん。ありがと。」
そう言って自分の部屋に入ってさっきの続きの本を読む。
しばらくするとお母さんから呼ばれた。
ご飯が出来たみたいだ。
「どう?学校楽しい?
あんた仲良い友達いるの?連れて来てもいいのよ?
本もいいけど、友達とも遊びなさいよ?」
またその話か。
最近はそればっかりだ。
うんざりしながらも答える。
「別に、友達とそんな仲良くなくたってやっていけるし。別にそんな仲良い友達が欲しいとも思わないし。
心配しなくていいよ。普通に友達はいるから。」
「そう?でも、1人ぐらいすごく仲がいい子がいた方が安心じゃない?人と人の繋がりは大切なのよ?
いつもお父さんが言ってたでしょ?」
お父さんは私が小さい頃に亡くなった。
お父さんはいつも言ってた。
"人と人の繋がりは大事だ。
できる限りは多くの人と繋がりなさい。
そうすればいつか絶対役に立つ日がくるから''
って。
「はいはい、そうだね。大丈夫だって友達ちゃんといるし。心配しないでいいから。
ごちそうさまでした。」
お母さんは何か言いたそうだったけど、無視して食器を片付ける。
それからは宿題を済ませてから本を読む。
そして、小説がキリのいいところで読むのをやめて寝る。
私には別に特に仲がいい友達なんていらない。
だからといって教室で孤立しているわけじゃなくて普通にみんなと話せるし、行事とかには一緒に回る人には困らない。
ただ、マンガや小説であるような“親友"ってやつがいないだけ。私はそれでいい。
深く関わったってめんどくさいだけなんだから。
キーンコーンカーンコーン
4時間目が終わりみんながお昼を食べようと動きだした。
私は本と弁当を持っていつもの場所に向かう。
いつもの場所とは中庭だ。
誰も来なくて静かで、落ち着く。
そんな1人でゆっくりできるこの時間が私は好きだった。
1人で本を読みながら弁当を食べていると
「莉乃ちゃん!!こんなところで1人で食べてるの?」
同じクラスの桐山 颯 (きりやま はやて)がやって来た。
いつもクラスの中心にいてクラスのムードメーカー的な奴らしい。
興味ないから知らないけど。
「そっか、そっか!莉乃ちゃんはいつも本読んでるけど
友達と仲良くしようとか思わないの?」
はぁー、最近このこと聞かれるの多いな。
めんどくさい。
しかも今、本がいいところなのに。続きが気になる。
桐山颯が来たから読めなくなっちゃった。
「別にそんなこと思わない。
本を静かに読めればそれでいいから。」
私がそう答えると桐山颯 は何かを決めたような決心した
顔をしていた。
「あのさー。
明日俺達のクラスに明日俺の双子の妹が転校してくるんだけど、多分莉乃ちゃん妹と気が合うと思うんだよね。
妹も本好きだし。
だから仲良くしてやってね。」
桐山颯はそれだけを言いにきたらしく私の返事も聞かずに去って行った。
別に本に影響がでるなら一緒にいたくないし、いるつもりもない。
だけど、本好きだと聞いたのでどんな子なのか、少しだけ少しだけ気になった。
「初めまして、霧山 風夏(きりやま ふうか)です。好きなことは本を読むことです。
私と一緒で本が好きな人は話してくれると嬉しいです。
みんなと早く仲良くなりたいので今日からよろしくお願いします。」
この子が桐山颯の双子の妹か。
桐山颯が言ってた通り本好きなんだ。
まあ、別に特別仲良くするつもりはないし、関係ないし、どうでもいいけど。
休み時間、本を読んでいるとふと机の前に影が出来た。
なに?
誰がなんか用事かと思って本を見るのをやめて
前に立ってるらしき人を見ると今日転校してきた霧山風夏だった。
「なに?なんか用事?」
そう聞くと霧山風夏は笑顔で話してきた。
「その本○○○さんの本だよね?
めっちゃ面白いよね?
でも、私最後はすっごい泣いちゃったよ。
○○○さんの書く本はどれも心に響くほど面白いよね!!この同じ作者の本読んだことある?
おすすめの本あるんだけど!」
この本読んだことあるんだ。
確かにこの本はすごく面白い。
面白くて3回目だ。
何回読んでも感動するし、面白い。
おすすめの本か・・・・・・・
ちょっと興味あるな。
「ううん、この作者のやつは今回初めて買ったの。おすすめの本って?何?面白いの?
この作者の本これからたくさん読みたいんだよね。」
「ふふっ!莉乃ちゃん、目キラキラしてるね!
これから本のこといっぱい話そうね!
私のことは風夏って読んでいいからね!」
ちょっと柄にもなく話し過ぎた。
いつもそうなんだよね。
本のことになるとついつい興奮しちゃって話し過ぎちゃう。
でも本のこと誰がと話すなんて久しぶりで楽しかったな。
たまにはいいかもしれない。
たまにはね。
それから毎日のように風夏は話しかけてきた。
あの作者の本をたくさん教えてくれた。
風夏と私は読む本が合うんだ。
だからお互い感想を言い合える。
少しだけ、そんな日々にワクワクしていた。
単純に本のことを話すのは楽しいから。
それでも私は本を読みたい時は読むし、風夏と話すようになったとしてもそれはやめなかった。
しかも、私達が話しているとたまたま同じ本読んでるっていうクラスの子も一緒に話したりするんだよね。
うちのクラスで同じような本読む子がいるって今までで知らなかったけど。
今日も休み時間の間に本のことを話していた。
「犯人誰だと思う?
私はこの女の人かな。だっねこの女の人被害者を恨んでたんだよ!もう絶対犯人!」
今読んでる推理小説の話だ。
「いやっ!多分この若い男の人でしょ!
何よりアリバイがないんだから!」
「え〜、そうかな?じゃあもっと根拠を教えてよ!」
お互いに今読んでいる小説の犯人を推測する。
それが今の私にとって本を読むことの次に楽しいことになっていた。
絶対この人が犯人!
そう思って根拠を風夏に話そうとしたこき
「ふうか〜!!ちょっと着いて来てくれない?」
風夏が別の友達から呼ばれた。
「ごめんー、ちょっと言ってくるね!」
風夏は男子からも女子からも転校初日から好かれていた。
明るい性格と顔の可愛さで人気者で告白なんてしょっちゅう。
本当誰かさんとそっくりだ。
風夏がいなくなってからはまたチャイムが鳴るまで本を読んだ。
昼休み
私はいつものように中庭で弁当を食べていた。
やっぱり落ち着くし、大好きな空間だ。
ほっとする。
ぼんやりとしていると
「いた、いた!
莉乃ちゃん!!またこんなとこで1人で〜」
また桐山颯が話しかけてきた。
次はなんの用だろうか?
「何?なんか用?」
そう聞くと桐山颯はニヤニヤして言った。
「やっぱり俺の妹と本の話あったでしょ!
ふうが本のこと話す時は目が輝くって嬉しそうに話してたもん。」
風夏そんなこと兄にまで話してんのか。
まあ、別いいけど。
「そう。」
双子なだけあってやっぱり桐山颯と風夏そっくりだな。
そんなことを考えて、まじまじと見つめてしまうと
「なになに〜?俺のこと見つめちゃって!
もしかして、惚れちゃった?」
ニヤニヤしながらそう言うから冷たい目を向けて睨むと
「あぁ〜!ごめんごめんって!冗談!
そんな冷たい目で見らんで!
てかさ?莉乃ちゃん雰囲気なんか柔らかくなったよね?クラスのみんなもそう言ってたよ?
俺の妹のおかげかな?」
雰囲気が柔らかくなった。か。
確かに風夏に会ってから学校で喋ることが増えたような気がする。
前まではクラスのみんなと仲が悪いわけじゃないけど、あんまり喋らないから。だって、私も本見てるし、みんなも本読んでる私にわざわざ話しかけたりしないから。
別にそれでも私は本が読めればそれでよかったから全然よかった。
でも、少しだけ風夏が来て日常に色がついたそんな気がしたんだ・・・・・・・・・・・。
そんな風に一日を過ごして家に帰りお母さんとご飯を食べる。
「最近、あんた少し明るくなったわね?
学校でなんかあったの?」
お母さんからも言われた。
そんなに変わったのか。
自分ではそんなに変化分からないけどみんながいならそうなのか?
「うん、まーね。」
返事をしてご飯を口に入れた。
そして、風夏が来てから二週間ぐらいが経った頃。
今日も朝の登校して本を読んでいると
「ねぇ、ねぇ聞いて!!
この本の映画が明後日公開されるんだって!
一緒に行かない?」
この本の映画か。
この本はすごく感動するラブストーリー。
私も読み終わった頃には号泣だった名作だ。
でも、映画とかお金かかるし、あんま行ったことないな。
どうしようかと悩んでいると
「この映画明後日に行ったら本の番外編が無料でもらえて、そしてこの日作者も来るらしくて、サイン貰えるんだってさ!
しかも番外編まで!さいっこうじゃん!行こうよ!」
番外編!?それは読みたい!
しかも作者からのサインなんて!あんな素晴らしい小説を書く人と会ってみたい!
追加の情報に行きたい気持ちが膨れ上がって
「行く!行きたい!作者さんと会いたいし、何より番外編読みたい!」
食いついて答えると、風夏は笑った。
「ふふっ!ほんと、莉乃は本のことになると目の色変わるね!よしっ、じゃあ行こ!
明後日10時に☆☆公園に集合ね!」
「分かった!」
番外編にサイン。
明後日早く来ないかな〜
柄にもなくワクワクしていた。
そして映画の日
「じゃあ、行ってくるから。」
リビングに向けて声をかける。
「はーい!行ってらしゃい!
楽しんできて!帰りは何時になってもいいわよ!気をつけなさいね〜」
お母さんからニヤニヤして送りだされた。
昨日の夜ご飯の時お母さんに友達と遊びに行くことを話したらびっくりされて興奮されて収めるのが大変だったぐらいだ。
別に大したことないのに。
映画どんな感じなんだろう?
いろいろなことを考えながら歩いていると待ち合わせの公園に着いた。
まだか。
まあ、まだ待ち合わせの時間より早いしね。
それから2分ぐらい待っていると
「ごめんね〜!待った?行こうか!」
「大丈夫。いこ。」
私達は映画館へと歩いた。
映画館は休日だけあって混み合っていた。
「わっ〜!人いっぱいだね!」
風夏がびっくりしたように人混みの方を見ていた。
まあ、作者も来るって聞いたら本好きの人は集まるよね。
「だね。頑張って中に入ろう。」
人混みを掻き分けてどうにか少しずつ前に進んで席をゲットする。
そして映画館に入って席に座る。
「楽しみだね〜。主人公は誰が演じるんだろうね?」
ポップコーンを食べながら話していると映画が始まった。
映画が終わって私達は2人どっちとも泣いていた。こんなに泣いたのは久しぶりだ。
やっぱり原作がいいからだよね。
なんだか誇らしい気持ちになった。
そしてようやく2人の気持ちが落ち着いてきた後感想を言い合った。
「あのシーンやばかったよね!もうあのシーンから泣き始めたよ!」
「うんうん!やばかった!私もう既に泣いてたけど!やっぱり○○○さんの本は最高だよね!」
思う存分感想を言い合ってから、本の作者に会いにいく。
楽しみだな。
どんな人なんだろう?
顔は公開されてないけど女性なんだよね。
ドキドキしながら行列に並ぶ。
横にいる風夏を見るといつもとは違い珍しく緊張しているみたいだった。
その姿をみて少し面白くなった。
無事、作者と会えてサイン貰って番外編も貰って映画館を出ようと風夏と歩いていた。
作者さん凄かったな。
なんか別に硬い感じの雰囲気ではなくて優しい雰囲気だったんだけどオーラがすごくて圧倒された。
そして少し話せていい時間だった。
風夏も楽しそうに会話していた。
「ねぇ?見て!
今日と同じ作者さんの本がまた来年映画化されるって!また一緒に見に行こうよ!」
そう言って隣で歩いている風夏を見ると
風夏は泣きそうな悲しそうなでも嬉しそうなそんな表情をしていた。
「莉乃・・・・・・・・。
ごめん。実は私・・・・・・・・」
今の風夏にはいつものような明るい笑顔はなく今にも泣きそうな声で何かを言いかけたけど、思いとどまるような表情をしていた。
「どうしたの?」
そう問いかけても風夏は続きを話さなかった。
「ごめん、ごめんね。」
なぜか謝りながら私に抱きついて来た。
私はただその背中を撫でてあげることしか出来なかった・・・・・・・・
「ごめんね!もう大丈夫!
来年も一緒に行こうね!」
風夏が泣き止んで笑顔でそう言った。
私もこれ以上聞くのは良くないと思って
「ううん。じゃあ、どっか寄ってく?」
いつもの私ならこんなこと言わなかった。
いつも本ばっかりだったから。
でも今の風夏とはなるべく一緒にいないといけない気がして誘った。
「お〜!珍しい!莉乃が誘ってくるなんて!
よし、じゃあ、なんか食べ行くか!
そしていっぱい話そ!」
そう言った風夏はいつもの元気なく風夏に戻っていた。
それに安堵して風夏と過ごした。
そしてご飯を食べてたくさん話してもうすぐ8時になりそうというときにもうそろそろ帰るかという感じになった。
「楽しかった〜!
ありがとね!今日すっごい楽しかった。
莉乃といけて良かったし、幸せだった!
ほんとありがとね!帰り気をつけて帰ってね?」
そんな改まって。
「なんか今日で終わりみたいな言い方するね?
私も楽しかったよ?ありがとね!
じゃあ、また明日学校でね!」
少しだけ風夏の言い方に怖くなって、笑顔で言う。
「うん!また明日!」
でも風夏は笑顔で「また明日」って言ったから大丈夫か。
心配は杞憂だったようだ。
そう思って風夏と別れた。
1人暗い帰り道を歩く。
風夏と出会えて良かったな。
出会えてなかったらこんな楽しい時間なんてなかった。
前は仲良くするつもりなんてないって思ってたのにいつの間にか風夏の明るさに絆されて風夏と小説のことを話す時間も小説以外のことでも楽しいと思えてた。
別に友達と一緒にいる時間はそんなに楽しいものじゃないと思っていた。
小説読んでたほうが何倍も楽しいって。
だけど、風夏に一緒にいることの楽しさを教えてもらった。
本を読み続けることには変わりないけど、少しだけ周りを見回して人と関わってみようかな。
明日も風夏と仲良くしていたい。
今までの生活を見直して気持ちが変わった1日だった。
次の日
ワクワクしながら学校に登校して風夏が来るまで本を読む。
キーンコーンーカーンコーン
本に集中しているとチャイムが鳴った。
風夏は?
風夏の席を見てもそこには誰も座っていなかった。
今日は休みなのかな?
昨日は元気だったけど体調不良とか?
大丈夫かな?
気になったから朝のホームルームが終わってから先生に聞いた。
「先生。今日霧山風夏は休みですか?
体調悪いんですか?それとも家の用事ですか?大丈夫なんですか?」
ハヤる気持ちが抑えきれず早口で聞くと
「霧山風夏?誰だそれ?うちのクラスか?」
は?
ダレダソレ?ウチノクラスカ?
先生何言ってんの?認知症?
「せ、先生?
何言ってるんですか?霧山風夏。先週までうちのクラスにいたでしょ?2週間前ぐらいに転校してきて、先生仲良くしろよって。お前らの仲間だって言ってたじゃないですか。
あの席に座って授業受けてたじゃないですか?先週までずっと。」
「ん?あの席はずっと空席じゃないか。
大丈夫か?熱でもあるのか?」
なんで?先生忘れてる?
忘れているどころか風夏の存在すら知らないような口ぶりだ。
鳥肌が止まらなくて恐怖しかなかった。
いや、先生がおかしいだけだって!
きっとそう。
「ねぇ、ねぇ風夏って今日なんで休んだか知ってる?」
先生は当てにならないと思い近くの友達に聞いた。
「うん?風夏?誰それ?別のクラスの子?
そんな焦って莉乃ちゃん大丈夫?」
なんで、なんで!
先週までいたじゃん!
なんで誰も覚えてないの!?
「莉乃ちゃん!!」
混乱していると私を桐山颯が呼んだ。
そうだ。そうだ!桐山颯なら分かるよね!
お兄ちゃんだし。
「莉乃ちゃんちょっとこっちに来て?」
桐山颯は慌てた様子で私の手を引っ張った。
「ねぇ?ねぇ?風夏なんで休んでんの?体調悪いの?昨日までは一緒に遊んでて元気だったんだけど!「莉乃ちゃん!」きっと体調悪いんだよね!昨日いっぱい食べてたし。今頃お腹壊して苦しんでんのかな?もう、風夏ってば。「莉乃ちゃん!」
とにかく嫌な予感がして喋り続けると桐山颯が大きな声で遮った。
「話を。話を聞いて。」
桐山颯は悲しそうな顔をして空き教室に入った。
なんで?なんで?そんなに悲しそうな顔をしてる?体調が悪いんだよね?
クラスメイトや先生がわからなかったのは気のせいだよね?
自分に言い聞かせてどうにか自分を保とうとする。
私は次の言葉で暗闇のどん底に落とされることになる。
「風夏は霧山風夏はもういない。」
っ!?
「ああははは、何言ってんの?冗談にしては面白くないけど?」
桐山颯の顔を見るととても冗談を言ってる顔じゃなかった。
「莉乃ちゃん。ごめん。ほんとなんだ。
風夏はもうこの世界からいない。
クラスメイトも先生も覚えてない、知らないんだ。
覚えてるのは俺と莉乃ちゃんだけ。」
桐山颯は悲痛に歪んだ顔で言った。
なんで?どう言うこと?意味が、わから、ない。
「風夏は2年前に交通事故で亡くなってる。
でも、亡くなってた風夏がこの世界にこのクラスに少しの時間でもいることができたのは莉乃ちゃんへの風夏の思いだ。風夏は莉乃ちゃんに大切なことを気づいてもらいたくて、莉乃ちゃんに会いに来た。」
はっ?何それ。信じられない。
亡くなってる?莉乃が?
私に会いに?
「ごめん、ちょっと意味がわからない。」
「そうだよな。ごめん。
風夏から手紙を預かってる。読んで?」
莉乃からの手紙?
受け取って中身を見る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
莉乃。ごめんね。
急にいなくなっちゃってびっくりしたよね。
昨日は、また明日ね。って言ったのに今日会えなくてごめんね。
でもね、莉乃と会えて仲良くなれて映画見にいけて良かった。楽しかった。
莉乃?
私が莉乃に会いにきた理由はね。
莉乃に助けてもらったからなんだよ?
私は生まれつき体が弱くてね。
次発作が起きたら命が危ないかもしれないってお医者さんから言われた。
私は人見知りもするし、入院を繰り返してたからそんなに仲のいい友達はいなかった。
絶望して道端でひとりぼっちで泣いていた私に莉乃は黙って本を貸してくれたんだ。
「この本読めば元気になるよ。
本は魔法の道具。これ読んでちょっとでも元気出して。」
って。
辛くてつらくてどうしようもなかった時に話しかけてくれたの。
どうしようもなく悲しくて辛い時に話しかけてくれた。私に希望を与えてくれた。
それから私は貰った本を読んだの。
今まで本なんてあんまり読んだことないし、1人の入院で暇な時も本を読もうっては思わなかった。
でも、その本を読んでみて本の面白さに気づいたんだ。私はもっといろんな本を読んでみたくて必死に生きた。
そしてなにより莉乃に会いたくて。
あの子にあってもう一度ちゃんとお礼を言ってたくさん本の話がしたい。
でも、神様は私の願いを叶えてくれなかった。
中学2年の時に発作を起こして死んじゃった。
莉乃と会いたかった。
本の話したかった。
ありがとうって言いたかった。
空の上から莉乃を見てたんだよ。
ああ、あの時助けてくれた女の子はここの高校に通ってるんだ。
莉乃の学校での様子見てると決してひとりぼっちじゃなかったけど本ばかりに目を向けててあんまり友達と関わろうとしてなかった。
莉乃は平気そうだったけど私みたいに何かあった時将来困った時手を差し伸べてくれる人がいてほしいって思ったの。
私みたいになってほしくない。
これはただの私のわがまま。
でも、どうしても莉乃に友達との切れない絆を結んで欲しかった。
莉乃のために私はもう一度莉乃のいる場所に生きたいって願ったの。
今度こそ私が莉乃の役に立ちたいって。
そしたら生きてる私の姿だった。
チャンスがもらえたって思った。
私はそれからはただ夢中で、おしゃれして明るく笑顔をつくる練習をして莉乃のいる学校に転校したの。
それからは奇跡のようなキラキラした日々だった。
莉乃に友達を作りたかったのにいつの間にか私が1番楽しんでた。
本当にありがとう。お礼を何回言っても足りないくらい。
莉乃と出会えて良かった。
ありがとう莉乃。」
風夏・・・・・・・・
助けてもらってお礼しなきゃいけないのは私の方。
風夏に友達との楽しさを教えてもらったの。
風夏がいたから本物の友情を知ったの。
風夏のおかげだよ。
「こちらこそ。ありがとう風夏。」
涙をこぼしながら空を見上げて呟いた。
完
今まで読んでくれてありがとうございました。
もしも「もっと読みたい」面白いと思ってくれた方が1人でもいればもしかしたら続き書くかもしれないです。
本当にありがとうございました。