「ねぇ、今日久しぶりにカラオケいこう!」
「おっ、いいね!!今度こそ負けないから!」
「ねぇ、職員室ついてきて!」
「うん!いいよー?いこいこ!」
やっと7時間目が終わって開放感溢れる放課後みんなが遊びに行こう。だとか、ここに着いて来て。だとか女子同士で約束する話を聞きながら私はひとり本を読んでいた。
やばっ、この本面白すぎる!
何回でも読めるわ!!
楽しみながら本を読んでいたらいつの間にか外は暗くなっていた。
「もうこんな時間か・・・・・・・・帰ろ。」
「ただいまぁ。」
挨拶をして家の中に入るとお母さんがご飯を作って待っていた。
「あら。莉乃(りの)おかえり。
ご飯もうすぐできるからね。」
「うん。ありがと。」
そう言って自分の部屋に入ってさっきの続きの本を読む。
しばらくするとお母さんから呼ばれた。
ご飯が出来たみたいだ。
「どう?学校楽しい?
あんた仲良い友達いるの?連れて来てもいいのよ?
本もいいけど、友達とも遊びなさいよ?」
またその話か。
最近はそればっかりだ。
うんざりしながらも答える。
「別に、友達とそんな仲良くなくたってやっていけるし。別にそんな仲良い友達が欲しいとも思わないし。
心配しなくていいよ。普通に友達はいるから。」
「そう?でも、1人ぐらいすごく仲がいい子がいた方が安心じゃない?人と人の繋がりは大切なのよ?
いつもお父さんが言ってたでしょ?」
お父さんは私が小さい頃に亡くなった。
お父さんはいつも言ってた。
"人と人の繋がりは大事だ。
できる限りは多くの人と繋がりなさい。
そうすればいつか絶対役に立つ日がくるから''
って。
「はいはい、そうだね。大丈夫だって友達ちゃんといるし。心配しないでいいから。
ごちそうさまでした。」
お母さんは何か言いたそうだったけど、無視して食器を片付ける。
それからは宿題を済ませてから本を読む。
そして、小説がキリのいいところで読むのをやめて寝る。
私には別に特に仲がいい友達なんていらない。
だからといって教室で孤立しているわけじゃなくて普通にみんなと話せるし、行事とかには一緒に回る人には困らない。
ただ、マンガや小説であるような“親友"ってやつがいないだけ。私はそれでいい。
深く関わったってめんどくさいだけなんだから。
キーンコーンカーンコーン
4時間目が終わりみんながお昼を食べようと動きだした。
私は本と弁当を持っていつもの場所に向かう。
いつもの場所とは中庭だ。
誰も来なくて静かで、落ち着く。
そんな1人でゆっくりできるこの時間が私は好きだった。
1人で本を読みながら弁当を食べていると
「莉乃ちゃん!!こんなところで1人で食べてるの?」
同じクラスの桐山 颯 (きりやま はやて)がやって来た。
いつもクラスの中心にいてクラスのムードメーカー的な奴らしい。
興味ないから知らないけど。
「そっか、そっか!莉乃ちゃんはいつも本読んでるけど
友達と仲良くしようとか思わないの?」
はぁー、最近このこと聞かれるの多いな。
めんどくさい。
しかも今、本がいいところなのに。続きが気になる。
桐山颯が来たから読めなくなっちゃった。
「別にそんなこと思わない。
本を静かに読めればそれでいいから。」
私がそう答えると桐山颯 は何かを決めたような決心した
顔をしていた。
「あのさー。
明日俺達のクラスに明日俺の双子の妹が転校してくるんだけど、多分莉乃ちゃん妹と気が合うと思うんだよね。
妹も本好きだし。
だから仲良くしてやってね。」
桐山颯はそれだけを言いにきたらしく私の返事も聞かずに去って行った。
別に本に影響がでるなら一緒にいたくないし、いるつもりもない。
だけど、本好きだと聞いたのでどんな子なのか、少しだけ少しだけ気になった。
「初めまして、霧山 風夏(きりやま ふうか)です。好きなことは本を読むことです。
私と一緒で本が好きな人は話してくれると嬉しいです。
みんなと早く仲良くなりたいので今日からよろしくお願いします。」
この子が桐山颯の双子の妹か。
桐山颯が言ってた通り本好きなんだ。
まあ、別に特別仲良くするつもりはないし、関係ないし、どうでもいいけど。
休み時間、本を読んでいるとふと机の前に影が出来た。
なに?
誰がなんか用事かと思って本を見るのをやめて
前に立ってるらしき人を見ると今日転校してきた霧山風夏だった。
「なに?なんか用事?」
そう聞くと霧山風夏は笑顔で話してきた。
「その本○○○さんの本だよね?
めっちゃ面白いよね?
でも、私最後はすっごい泣いちゃったよ。
○○○さんの書く本はどれも心に響くほど面白いよね!!この同じ作者の本読んだことある?
おすすめの本あるんだけど!」
この本読んだことあるんだ。
確かにこの本はすごく面白い。
面白くて3回目だ。
何回読んでも感動するし、面白い。
おすすめの本か・・・・・・・
ちょっと興味あるな。
「ううん、この作者のやつは今回初めて買ったの。おすすめの本って?何?面白いの?
この作者の本これからたくさん読みたいんだよね。」
「ふふっ!莉乃ちゃん、目キラキラしてるね!
これから本のこといっぱい話そうね!
私のことは風夏って読んでいいからね!」
ちょっと柄にもなく話し過ぎた。
いつもそうなんだよね。
本のことになるとついつい興奮しちゃって話し過ぎちゃう。
でも本のこと誰がと話すなんて久しぶりで楽しかったな。
たまにはいいかもしれない。
たまにはね。
それから毎日のように風夏は話しかけてきた。
あの作者の本をたくさん教えてくれた。
風夏と私は読む本が合うんだ。
だからお互い感想を言い合える。
少しだけ、そんな日々にワクワクしていた。
単純に本のことを話すのは楽しいから。
それでも私は本を読みたい時は読むし、風夏と話すようになったとしてもそれはやめなかった。
しかも、私達が話しているとたまたま同じ本読んでるっていうクラスの子も一緒に話したりするんだよね。
うちのクラスで同じような本読む子がいるって今までで知らなかったけど。
今日も休み時間の間に本のことを話していた。
「犯人誰だと思う?
私はこの女の人かな。だっねこの女の人被害者を恨んでたんだよ!もう絶対犯人!」
今読んでる推理小説の話だ。
「いやっ!多分この若い男の人でしょ!
何よりアリバイがないんだから!」
「え〜、そうかな?じゃあもっと根拠を教えてよ!」
お互いに今読んでいる小説の犯人を推測する。
それが今の私にとって本を読むことの次に楽しいことになっていた。
絶対この人が犯人!
そう思って根拠を風夏に話そうとしたこき
「ふうか〜!!ちょっと着いて来てくれない?」
風夏が別の友達から呼ばれた。
「ごめんー、ちょっと言ってくるね!」
風夏は男子からも女子からも転校初日から好かれていた。
明るい性格と顔の可愛さで人気者で告白なんてしょっちゅう。
本当誰かさんとそっくりだ。
風夏がいなくなってからはまたチャイムが鳴るまで本を読んだ。
昼休み
私はいつものように中庭で弁当を食べていた。
やっぱり落ち着くし、大好きな空間だ。
ほっとする。
ぼんやりとしていると
「いた、いた!
莉乃ちゃん!!またこんなとこで1人で〜」
また桐山颯が話しかけてきた。
次はなんの用だろうか?
「何?なんか用?」
そう聞くと桐山颯はニヤニヤして言った。
「やっぱり俺の妹と本の話あったでしょ!
ふうが本のこと話す時は目が輝くって嬉しそうに話してたもん。」
風夏そんなこと兄にまで話してんのか。
まあ、別いいけど。
「そう。」
双子なだけあってやっぱり桐山颯と風夏そっくりだな。
そんなことを考えて、まじまじと見つめてしまうと
「なになに〜?俺のこと見つめちゃって!
もしかして、惚れちゃった?」
ニヤニヤしながらそう言うから冷たい目を向けて睨むと
「あぁ〜!ごめんごめんって!冗談!
そんな冷たい目で見らんで!
てかさ?莉乃ちゃん雰囲気なんか柔らかくなったよね?クラスのみんなもそう言ってたよ?
俺の妹のおかげかな?」
雰囲気が柔らかくなった。か。
確かに風夏に会ってから学校で喋ることが増えたような気がする。
前まではクラスのみんなと仲が悪いわけじゃないけど、あんまり喋らないから。だって、私も本見てるし、みんなも本読んでる私にわざわざ話しかけたりしないから。
別にそれでも私は本が読めればそれでよかったから全然よかった。
でも、少しだけ風夏が来て日常に色がついたそんな気がしたんだ・・・・・・・・・・・。
そんな風に一日を過ごして家に帰りお母さんとご飯を食べる。
「最近、あんた少し明るくなったわね?
学校でなんかあったの?」
お母さんからも言われた。
そんなに変わったのか。
自分ではそんなに変化分からないけどみんながいならそうなのか?
「うん、まーね。」
返事をしてご飯を口に入れた。
そして、風夏が来てから二週間ぐらいが経った頃。
今日も朝の登校して本を読んでいると
「ねぇ、ねぇ聞いて!!
この本の映画が明後日公開されるんだって!
一緒に行かない?」
この本の映画か。
この本はすごく感動するラブストーリー。
私も読み終わった頃には号泣だった名作だ。
でも、映画とかお金かかるし、あんま行ったことないな。
どうしようかと悩んでいると
「この映画明後日に行ったら本の番外編が無料でもらえて、そしてこの日作者も来るらしくて、サイン貰えるんだってさ!
しかも番外編まで!さいっこうじゃん!行こうよ!」
番外編!?それは読みたい!
しかも作者からのサインなんて!あんな素晴らしい小説を書く人と会ってみたい!
追加の情報に行きたい気持ちが膨れ上がって
「行く!行きたい!作者さんと会いたいし、何より番外編読みたい!」
食いついて答えると、風夏は笑った。
「ふふっ!ほんと、莉乃は本のことになると目の色変わるね!よしっ、じゃあ行こ!
明後日10時に☆☆公園に集合ね!」
「分かった!」
番外編にサイン。
明後日早く来ないかな〜
柄にもなくワクワクしていた。
そして映画の日
「じゃあ、行ってくるから。」
リビングに向けて声をかける。
「はーい!行ってらしゃい!
楽しんできて!帰りは何時になってもいいわよ!気をつけなさいね〜」
お母さんからニヤニヤして送りだされた。
昨日の夜ご飯の時お母さんに友達と遊びに行くことを話したらびっくりされて興奮されて収めるのが大変だったぐらいだ。
別に大したことないのに。
映画どんな感じなんだろう?
いろいろなことを考えながら歩いていると待ち合わせの公園に着いた。
まだか。
まあ、まだ待ち合わせの時間より早いしね。
それから2分ぐらい待っていると
「ごめんね〜!待った?行こうか!」
「大丈夫。いこ。」
私達は映画館へと歩いた。
映画館は休日だけあって混み合っていた。
「わっ〜!人いっぱいだね!」
風夏がびっくりしたように人混みの方を見ていた。
まあ、作者も来るって聞いたら本好きの人は集まるよね。
「だね。頑張って中に入ろう。」
人混みを掻き分けてどうにか少しずつ前に進んで席をゲットする。
そして映画館に入って席に座る。
「楽しみだね〜。主人公は誰が演じるんだろうね?」
ポップコーンを食べながら話していると映画が始まった。
映画が終わって私達は2人どっちとも泣いていた。こんなに泣いたのは久しぶりだ。
やっぱり原作がいいからだよね。
なんだか誇らしい気持ちになった。
そしてようやく2人の気持ちが落ち着いてきた後感想を言い合った。
「あのシーンやばかったよね!もうあのシーンから泣き始めたよ!」
「うんうん!やばかった!私もう既に泣いてたけど!やっぱり○○○さんの本は最高だよね!」
思う存分感想を言い合ってから、本の作者に会いにいく。
楽しみだな。
どんな人なんだろう?
顔は公開されてないけど女性なんだよね。
ドキドキしながら行列に並ぶ。
横にいる風夏を見るといつもとは違い珍しく緊張しているみたいだった。
その姿をみて少し面白くなった。
無事、作者と会えてサイン貰って番外編も貰って映画館を出ようと風夏と歩いていた。
作者さん凄かったな。
なんか別に硬い感じの雰囲気ではなくて優しい雰囲気だったんだけどオーラがすごくて圧倒された。
そして少し話せていい時間だった。
風夏も楽しそうに会話していた。
「ねぇ?見て!
今日と同じ作者さんの本がまた来年映画化されるって!また一緒に見に行こうよ!」
そう言って隣で歩いている風夏を見ると
風夏は泣きそうな悲しそうなでも嬉しそうなそんな表情をしていた。
「莉乃・・・・・・・・。
ごめん。実は私・・・・・・・・」
今の風夏にはいつものような明るい笑顔はなく今にも泣きそうな声で何かを言いかけたけど、思いとどまるような表情をしていた。
「どうしたの?」
そう問いかけても風夏は続きを話さなかった。
「ごめん、ごめんね。」
なぜか謝りながら私に抱きついて来た。
私はただその背中を撫でてあげることしか出来なかった・・・・・・・・
「ごめんね!もう大丈夫!
来年も一緒に行こうね!」
風夏が泣き止んで笑顔でそう言った。
私もこれ以上聞くのは良くないと思って
「ううん。じゃあ、どっか寄ってく?」
いつもの私ならこんなこと言わなかった。
いつも本ばっかりだったから。
でも今の風夏とはなるべく一緒にいないといけない気がして誘った。
「お〜!珍しい!莉乃が誘ってくるなんて!
よし、じゃあ、なんか食べ行くか!
そしていっぱい話そ!」
そう言った風夏はいつもの元気なく風夏に戻っていた。
それに安堵して風夏と過ごした。
そしてご飯を食べてたくさん話してもうすぐ8時になりそうというときにもうそろそろ帰るかという感じになった。
「楽しかった〜!
ありがとね!今日すっごい楽しかった。
莉乃といけて良かったし、幸せだった!
ほんとありがとね!帰り気をつけて帰ってね?」
そんな改まって。
「なんか今日で終わりみたいな言い方するね?
私も楽しかったよ?ありがとね!
じゃあ、また明日学校でね!」
少しだけ風夏の言い方に怖くなって、笑顔で言う。
「うん!また明日!」
でも風夏は笑顔で「また明日」って言ったから大丈夫か。
心配は杞憂だったようだ。
そう思って風夏と別れた。
1人暗い帰り道を歩く。
風夏と出会えて良かったな。
出会えてなかったらこんな楽しい時間なんてなかった。
前は仲良くするつもりなんてないって思ってたのにいつの間にか風夏の明るさに絆されて風夏と小説のことを話す時間も小説以外のことでも楽しいと思えてた。
別に友達と一緒にいる時間はそんなに楽しいものじゃないと思っていた。
小説読んでたほうが何倍も楽しいって。
だけど、風夏に一緒にいることの楽しさを教えてもらった。
本を読み続けることには変わりないけど、少しだけ周りを見回して人と関わってみようかな。
明日も風夏と仲良くしていたい。
今までの生活を見直して気持ちが変わった1日だった。
続く
読んでくれてありがとうございました。
「ねぇ、今日久しぶりにカラオケいこう!」
「おっ、いいね!!今度こそ負けないから!」
「ねぇ、職員室ついてきて!」
「うん!いいよー?いこいこ!」
やっと7時間目が終わって開放感溢れる放課後みんなが遊びに行こう。だとか、ここに着いて来て。だとか女子同士で約束する話を聞きながら私はひとり本を読んでいた。
やばっ、この本面白すぎる!
何回でも読めるわ!!
楽しみながら本を読んでいたらいつの間にか外は暗くなっていた。
「もうこんな時間か・・・・・・・・帰ろ。」
「ただいまぁ。」
挨拶をして家の中に入るとお母さんがご飯を作って待っていた。
「あら。莉乃(りの)おかえり。
ご飯もうすぐできるからね。」
「うん。ありがと。」
そう言って自分の部屋に入ってさっきの続きの本を読む。
しばらくするとお母さんから呼ばれた。
ご飯が出来たみたいだ。
「どう?学校楽しい?
あんた仲良い友達いるの?連れて来てもいいのよ?
本もいいけど、友達とも遊びなさいよ?」
またその話か。
最近はそればっかりだ。
うんざりしながらも答える。
「別に、友達とそんな仲良くなくたってやっていけるし。別にそんな仲良い友達が欲しいとも思わないし。
心配しなくていいよ。普通に友達はいるから。」
「そう?でも、1人ぐらいすごく仲がいい子がいた方が安心じゃない?人と人の繋がりは大切なのよ?
いつもお父さんが言ってたでしょ?」
お父さんは私が小さい頃に亡くなった。
お父さんはいつも言ってた。
"人と人の繋がりは大事だ。
できる限りは多くの人と繋がりなさい。
そうすればいつか絶対役に立つ日がくるから''
って。
「はいはい、そうだね。大丈夫だって友達ちゃんといるし。心配しないでいいから。
ごちそうさまでした。」
お母さんは何か言いたそうだったけど、無視して食器を片付ける。
それからは宿題を済ませてから本を読む。
そして、小説がキリのいいところで読むのをやめて寝る。
私には別に特に仲がいい友達なんていらない。
だからといって教室で孤立しているわけじゃなくて普通にみんなと話せるし、行事とかには一緒に回る人には困らない。
ただ、マンガや小説であるような“親友"ってやつがいないだけ。私はそれでいい。
深く関わったってめんどくさいだけなんだから。
キーンコーンカーンコーン
4時間目が終わりみんながお昼を食べようと動きだした。
私は本と弁当を持っていつもの場所に向かう。
いつもの場所とは中庭だ。
誰も来なくて静かで、落ち着く。
そんな1人でゆっくりできるこの時間が私は好きだった。
1人で本を読みながら弁当を食べていると
「莉乃ちゃん!!こんなところで1人で食べてるの?」
同じクラスの桐山 颯 (きりやま はやて)がやって来た。
いつもクラスの中心にいてクラスのムードメーカー的な奴らしい。
興味ないから知らないけど。
「そっか、そっか!莉乃ちゃんはいつも本読んでるけど
友達と仲良くしようとか思わないの?」
はぁー、最近このこと聞かれるの多いな。
めんどくさい。
しかも今、本がいいところなのに。続きが気になる。
桐山颯が来たから読めなくなっちゃった。
「別にそんなこと思わない。
本を静かに読めればそれでいいから。」
私がそう答えると桐山颯 は何かを決めたような決心した
顔をしていた。
「あのさー。
明日俺達のクラスに明日俺の双子の妹が転校してくるんだけど、多分莉乃ちゃん妹と気が合うと思うんだよね。
妹も本好きだし。
だから仲良くしてやってね。」
桐山颯はそれだけを言いにきたらしく私の返事も聞かずに去って行った。
別に本に影響がでるなら一緒にいたくないし、いるつもりもない。
だけど、本好きだと聞いたのでどんな子なのか、少しだけ少しだけ気になった。
「初めまして、霧山 風夏(きりやま ふうか)です。好きなことは本を読むことです。
私と一緒で本が好きな人は話してくれると嬉しいです。
みんなと早く仲良くなりたいので今日からよろしくお願いします。」
この子が桐山颯の双子の妹か。
桐山颯が言ってた通り本好きなんだ。
まあ、別に特別仲良くするつもりはないし、関係ないし、どうでもいいけど。
休み時間、本を読んでいるとふと机の前に影が出来た。
なに?
誰がなんか用事かと思って本を見るのをやめて
前に立ってるらしき人を見ると今日転校してきた霧山風夏だった。なに?なんか用事?」
そう聞くと霧山風夏は笑顔で話してきた。
「その本○○○さんの本だよね?
めっちゃ面白いよね?
でも、私最後はすっごい泣いちゃったよ。
○○○さんの書く本はどれも心に響くほど面白いよね!!この同じ作者の本読んだことある?
おすすめの本あるんだけど!」
この本読んだことあるんだ。
確かにこの本はすごく面白い。
面白くて3回目だ。
何回読んでも感動するし、面白い。
おすすめの本か・・・・・・・
ちょっと興味あるな。
「ううん、この作者のやつは今回初めて買ったの。おすすめの本って?何?面白いの?
この作者の本これからたくさん読みたいんだよね。」
「ふふっ!莉乃ちゃん、目キラキラしてるね!
これから本のこといっぱい話そうね!」
ちょっと柄にもなく話し過ぎた。
いつもそうなんだよね。
本のことになるとついつい興奮しちゃって話し過ぎちゃう。
でも本のこと誰がと話すなんて久しぶりで楽しかったな。
たまにはいいかもしれない。
たまにはね。
続く
鳥籠
「最初は○○○○って言ってたんだけど、これの方が給料いいし、将来安定だからって考え方を変えさせたんだよね。」
お母さんは当然かのように言った。
違うでしょ。考え方を変えさせたんじゃなくて自分の考えでそっちの方にもっていかせたんでしょ?そっちが言いって押し付けたんでしょ?
お姉ちゃんは最初は○○○○の仕事に就きたいって言っていた。
なのに○○○○に関係のない仕事をお姉ちゃんに言ってこっちの方がいいからって言ってお姉ちゃんがやることを変えさせた。
分かってるよ。心配なんだよね。
分かってるよ、分かってるけど・・・・・・・・・
お姉ちゃんほんとにそれでよかった?
本当にお母さん達の言うこと聞いて将来のこと変えて良かった?後悔しない?
お姉ちゃん、私の髪切ったりいじったりする時楽しそうな顔してるよね。
本当にそれでよかった?
「お姉ちゃんみたいにならないように今のうちからもう決めときなさいね。」
結構言われる。
私はお姉ちゃんみたいにはなりたくない。
「なんでもお母さん応援するからね。」
お母さんはそう言うよね。
でも、本当に小説家目指してるなんて言ったらなんて言う?
「やめときなさい。大変だから。」
って、言うんじゃないの?
分かってる。心配してくれて言ってるんだよね?
でも、それが否定することになってるの。
私は絶対お姉ちゃんみたいにはなりたくない。
たとえ、それが私のためを思ってるんだとしても。
親の言葉の狭い鳥籠に入れられたくない。
こんなこと誰にも言えないね。
家族になんてもっと言えない。私がこんなこと思ってるなんて知りもしないだろうね。
私がこんなこと思ってるなんて知ったら傷つくと思う。
ごめんね。
だからここだけの秘密。
「ねぇ、今日久しぶりにカラオケいこう!」
「おっ、いいね!!今度こそ負けないから!」
「ねぇ、職員室ついてきて!」
「うん。いいよー?いこいこ!」
やっと7時間目が終わって開放感溢れる放課後みんなが遊びに行こう。だとか、ここに着いて来て。だとか女子同士で約束する話を聞きながら私はひとり本を読んでいた。
やばっ、この本面白すぎる!
何回でも読みたいぐらいだわ!
楽しみながら本を読んでいたらいつの間にか外は暗くなっていた。
「もうこんな時間か・・・・・・・・帰ろ。」
「ただいまぁ。」
挨拶をして家の中に入るとお母さんがご飯を作って待っていた。
「あら。莉乃(りの)おかえり。
ご飯もうすぐできるからね。」
「うん。ありがと。」
そう言って自分の部屋に入ってさっきの続きの本を読む。
しばらくするとお母さんから呼ばれた。
ご飯が出来たみたいだ。
「どう?学校楽しい?
あんた仲良い友達いるの?連れて来てもいいのよ?
本もいいけど、友達とも遊びなさいよ?」
またその話か。
最近はそればっかりだ。
うんざりしながらも答える。
「別に、友達とそんな仲良くなくたってやっていけるし。別にそんな仲良いい友達が欲しいとも思わないし。
心配しなくていいよ。普通に友達はいるから。」
「そう?でも、1人ぐらいすごく仲がいい子がいた方が安心じゃない?人と人の繋がりは大切なのよ?
いつもお父さんが言ってたでしょ?」
お父さんは私が小さい頃に亡くなった。
お父さんはいつも言ってた。
"人と人の繋がりは大事だ。
できる限りは多くの人と繋がりなさい。
そうすればいつか絶対役に立つ日がくるから。''
って。
「はいはい、そうだね。大丈夫だって友達ちゃんといるし。心配しないでいいから。
ごちそうさまでした。」
お母さんは何か言いたそうだったけど、無視して食器を片付ける。
それからは宿題をして本を読む。
そして、小説がキリのいいところで読むのをやめて寝る。
私には別に仲の良い友達なんていらない。
だからといって教室で孤立しているわけじゃなくて普通にみんなと話せるし、行事とかには一緒に回る人には困らない。
ただ、マンガや小説であるような’’親友"ってやつがいないだけ。私はそれでいい。
深く関わったってめんどくさいだけなんだから。
キーンコーンカーンコン
4時間目が終わりみんながお昼を食べようと動きだした。
私は本と弁当を持っていつもの場所に向かう。
いつもの場所とは中庭だ。
誰も来なくて静かで、落ち着く。
そんな1人でゆっくりできるこの時間が私は好きだった。
1人で本を読みながら弁当を食べていると
「莉乃ちゃん!!こんなところで1人で食べてるの?」
同じクラスの桐山 颯(きりやま はやて)がやって来た。
いつもクラスの中心にいてクラスのムードメーカー的なならやつらしい。
興味ないから知らないけど。
「見ての通りだけど・・・・・・・・・」
「そっか、そっか!莉乃ちゃんはいつも本読んでるけど友達と仲良くしようとか思わないの?」
はぁー、最近このこと聞かれるの多いな。
めんどくさい。
しかも今、本がいいところなのに。
桐山颯が来たから読めなくなっちゃった。
「別にそんなこと思わない。
本を静かに読めればそれでいいから。」
私がそう答えると桐山颯は何かを決めたような決心した顔をしていた。
「あのさー。
明日俺達のクラスに明日俺の双子の妹が転校してくるんだけど、多分莉乃ちゃん妹と気が合うと思うんだよね。
妹も本好きだし。
だから仲良くしてやってね。」
桐山颯はそれだけを言いにきたらしく私の返事も聞かずに去って行った。
別に本に影響がでるなら一緒にいたくないし、いるつもりもない。
だけど、本好きだと聞いたのでどんな子なのか、少しだけ少しだけ気になった。
続く
読んでくれてありがとうございました。
「はあっー、書けない!もうっ」
何で。何で書けないの。
書きたいのに。
人を笑顔にできる漫画を描きたいのに。
どうしても書けない。
今年最後のコンテストの締切が迫っている状況にとってはこれが凄くイタい。
きつい。苦しい。やめてしまいたい。
けど、私にはこれしかないのだ。
なんの取り柄もなく絵を描くことさえもなくしてしまったら私にはなにも残らない。
何か一つでも人から求められるものがないと私はいる意味がない。
「もうやめたい。」
そう思いながらもやめれなくて、ずっと漫画を書き続けた。
無我夢中で書いてたらいつのまにか朝になって学校に行く時間になっていた。
どうすれば納得のいく絵が書けるんだろう。
なんで、物語が思いつかないんだろう。
なんでこんなに馬鹿なんだろう。才能がないんだろう。
「ゆな?
大丈夫?無理してない?きついんじゃない?」
彼氏の本城(ほんじょう)先輩が声をかけてくれた。
そうだ。今は先輩とご飯食べてるんだから暗い顔してちゃダメじゃん。
「すいません、大丈夫です。
それより先輩の弁当美味しそうですね。誰が作ってるんですか?」
先輩に心配はかけたくなくてはなしを逸らした。
「ゆな・・・・・・・・・・」
先輩は何か言いたそうな顔してたけど私が話を続けたくないことを察したのかそれ以上聞いてこなかった。
「書けない。何で?前はこんなんじゃなかった。」
今の時点で全然書けてないんじゃ締切には間に合わない。
「くそっ!ばかばかばかばかっ。私のバカ!」
インターネットに投稿しても全然いいねはつかないし、私のマンガなんて誰にも求められていない。
思い切ってもうやめてしまおうか。
今までに何度も浮かんだ考えがまたよぎるけど、書かないと言う選択はできなかった。
「締切」
それが自分の頭の中から離れなくてどうしようもなかった。
体が悲鳴をあげている。
危険サインを出している。
けど、寝れない。ベッドに入って目を瞑ってもマンガのことが頭の中にこびりついて、なかなか眠気が襲ってこない。
そして、また寝ないで徹夜して書いてしまった。
それでも納得のいく作品は書けない・・・・・・。
「ゆなっ!!危ない。」
廊下を歩いていた時、急に力が入らなくなって倒れそうになった。
でも、先輩が気づいて支えてくれる。
「ゆな。大丈夫か?保健室いこう。」
先輩が心配そうな顔して言ってくる。
大丈夫。まだやれる。ちょっとぐらついただけだから
「大丈夫ですよ。ちょっとフラッとなっちゃっただけなので。それより次、移動教室なんです。早く行かないと」
「ダメだ。保健室にいこう」
「大丈夫ですって。」
「ゆな、行こう。」
保健室に行ってもどうせ寝れない。
それにマンガのネタがもしかしたら思いつくことがあるかもしれない。
だから出ないと。
「いえ、行きます。」
「ダメだって。」
なんで。邪魔しないでよ。
マンガのためなんだから。しつこいよ。
「別に先輩に関係ないでしょ!?
行かないといけないんです。
そうしないとダメなんです。
ほっといてください。余計なお世話です。」
しまった。
こんなこと言うはずなかったのに。
思わずカッとなって言ってしまった。
先輩は悲しそうな傷ついたような顔をして笑って言った
「そう、だよね。ごめん、ちょっとしつこかったよね。無理しないようにね。」
そう言って先輩は去って言った。
酷いことを言ったのに、全部私が悪いのに、先輩は謝った。
ごめんね。先輩。
結局次の日も次の日もマンガのネタは思いつかなかったし、書けなかった。
でも、締切が近づくにつれて私の心は焦っていく。
そこからも寝れない日々が続いた。
そして、とうとう体育の時間に私は倒れてしまった。
目を覚ましたら先輩がいた。
「せん、ぱい?」
私が声をかけると安心した顔で微笑んだ。
行かないと。戻らないと。
「先輩ここにいてくれたんですよね?
ありがとうございます。でも、私教室戻るので先輩も戻ってください。
迷惑おかけしてごめんなさい。」
私が早速戻ろうとすると
「ゆな!!お前、ふざけんなよ?
何が教室戻るので先輩も戻っていいだ。
今の自分の体の状態わかってんのか?
倒れたんだぞ?
それで俺には何も相談しない。
別に俺じゃなくてもいい、他に相談出来るやつがいるならそいつに相談すればいい。
1人で抱え込んで無理すんなよ。
今思ってること吐き出せよ。
ただ、ゆながどんどん壊れていきそうになるの見んの辛いんだよ!」
びっくりした。
今まで先輩はこんなふうに怒ったことなんてなかった。
いつも笑ってて穏やかだったから。
初めてだ。
「お願いだよ。ゆな・・・・・
お前がいまマンガの締切に向かって頑張ってんのは知ってるよ。でも、もうこれ以上無理すんな。」
今度は泣きそうな声で言われてようやく自分が自分のことばっかりだったことに気がついた。
私がどうなったって誰も気にしないと思ってた。
こんなにも先輩が思ってくれてるのに自分勝手に動いて、先輩を悲しませた。
先輩に相談する。今の気持ちを吐き出す。
それが今の私にできる先輩に対しての最大の謝罪とお礼の表し方だった。
「ごめん、なさい。
悔しい、悲しい。
自分には才能がないことなんてとっくにわかってるんです。でも、書くしかないんです。
私はそれがなきゃ、必要とされない。
だから、頑張るしかない。」
今まで溜め込んでいた気持ちを少しずつ吐き出していく。
先輩は黙って頷いて聞いてくれた。
「でも、どれだけ書いても納得のいく作品が出来上がらない。ださないといけないチャンスは迫ってるのに、
どうしても無理で。
まだ出せていないから審査されてないからスタートラインにでさえ、立ててない。
落ちても、受かってもなくまだ何にもしてないから焦る。もう、やめてしまいたい。」
全部を吐き出した。とは言えないけどだいだいは言えた。
先輩は泣きながら話す私を見て真剣な顔をして言った。
「じゃあ、やめるか?
何もかも捨てて、人から認められるとか認められないとか考えなくていいところに俺と一緒に逃げるか?
もう、辛くてやめたくて、そんなきつい思いするなら逃げるか?」
逃げる?
何もないところに?
人の目も気にせず先輩と一緒に?
「よし!じゃあ、行こう。
なあ?俺はお金なら持ってるし、どこにでもいけるぞ?
ゆなはどこいきたい?
行きながら決めようぜ?
ほら、荷物もって早速行こうぜ?」
「えっ?」
そう言って先輩は私の腕を掴んで連れ出そうとした。
先輩は、本気、だ。
でも・・・・・・・・・
「いやっ!先輩と一緒にいかない。」
「何でだ?マンガ書くの辛いんだろ?なら俺と一緒に逃げよう」
自分でもなんで行きたくないのかわからなかった。
マンガを描くことからやっと離れられるのに?
「行きたくないのか?それは何で?」
先輩は優しく問う。
それは・・・・・・・・・・
「私はマンガが好き!書くのが好きなの!」
あぁ、そうか。
そうだった。
今自分ではっきり口に出して思い出した。
出すから出したいから締切に追われて、書くんだって、私にはそれしかないからって思ってたけど、ほんとは違うじゃん。
締切という言葉に追われて、早く出さないとっていう気持ちに追われて自分の気持ちがわからなくなっていた。
「だろ?好きなんだよな?ゆなは。
書きたいんだよな?
それに、ゆなはそれしかないって求められないって言ってたけどそんなことないんだ。
俺はゆなが好きだ。
無理しちゃうところも。
頑張りすぎちゃうところも。全部が好きだ。
他の奴らがゆなを求めなくても俺だけはゆなを必要としてるんだ。忘れるなよ?」
大事な思いを思い立たせてくれた先輩。
ありがとう。
今なら少しだけ、いいマンガが書ける気がした。
読んでくれてありがとうございました。
ー遠い日の記憶ー
『だれか助けて。助けてよ、お願い。美来(みく)を助けて。僕ははどうなってもいいからこの子だけは。この子
だけは助けて・・・・・・・」
人通りの少ない公園でみくという女の子を抱きかかえながら4歳ぐらいの男の子は泣きながら祈っていた。
「みくー、早く支度しなさい〜。
遅刻するわよー」
上からそんな声が聞こえてきて時計を慌ててみると電車
ギリギリの時間だった。
あーもう、最悪!久々にあの夢見たと思ったら寝坊しち
やった。ほんとついてない。
何故か小さい頃から1ヶ月に1回ぐらいのペースで今日みた男の子が女の子を抱えて祈ってる夢を見るんだよね。
何でだろう。
その夢で朝方の4時ぐらいに起きちゃって、まだいいや
って2度寝しちゃった結果がこの有様だ。
焦りながら全力で廊下を走り家を出る。
それから汗だくになりながらも全力疾走したら何とか電車に乗ることができた。
学校近くの駅で下ろしてもらってそこからまた激走だ。
あー、やばい!きつい〜
「セーフ!!間に合った〜」
ー気になる転校生ー
なんとか間に合った〜
「間に合ったっていうかほんとにギリギリだけど」
まなが苦笑いしながらも声をかけてきてくれた。
まなは小さい頃からずっと一緒でなんでも言い合える親友なんだ。でも同い年って言ってもまなのほうが全然しっかりしてるし、頭いいんだけどね。
だからよく相談に乗ってもらう。
「あっ、まな!おはよー!!そうなんだよー
寝坊しちゃって全力疾走で走ってきた!」
おかげで朝から汗だくだよー
「もっと余裕持って起きなよ?」
「はーい。」
まなと話しているといつもよりみんなが騒がしいことに気づいた。
どうしたんだろう?今日なんかあるのかな?
「ねーねぇ、何で今日はこんなにいつもよりみんなうるさいの?なんか教室全体が浮気立ってるっていうか」
まなは知ってるかな?
「あんた知らないの?
今日転校生が来るらしいの。男子か女子かはわからないけど。」
「転校生?こんな時期に?」
今は2学期中場ぐらいだ。こんな時期に転校生が来るなんて、なんか事情があるんだろうか?
「そうなのよね。こんな中途半端な時期に何で来るのか
しらね?」
まなと話しているとチャイムがなって先生が入ってきた。その後ろに転校生?もいる。男子だ。
「おはよー、お前ら席につけー
なんかもう伝わってるみたいだか、転校生だ。
おい、羽矢。自己紹介。」
先生が促すと転校生は頷いて言った。
「羽洗夜(はねや こうや)です。よろしく。」
羽矢くん?が挨拶をすると一斉に教室が騒がしくなっ
理由はめっちゃ顔が整っていてかっこよかったから。
クールで、でも決してそっけなくはないから親しみやすい雰囲気の男子だ。
その時
羽矢くんと目が合った。
懐かしい・・・・・・・・・・・・・・
会ったこともないのに何故か無性に懐かしい気持ちになった。
なんだろう。この気持ち、心が温かくなるような。
羽矢くんはこっちを向いて固まっていた。
目を大きく開いてびっくりしているように見える。
私は目がお互いに離せなくて、時間が止まったように固まっていた。
「・・・・・・ぃ・・・・・し・・・お・・椎名(しいな!!」
わっ!何?呼ばれてる?
我に返って、前を見ると先生は困った顔で私を見ていた。
「はっ、はい!何ですか?」
「まったく、しっかりしてくれ。何回も呼んでるのに椎名返事しないから。お前の後ろ空いてるだろ?そこを羽矢の席にするから羽矢に分かるように名前呼んだんだ。」
全く、気づかなかったな。
羽矢くんが私の後ろに?
私が色々考えているうちにも話は進んでいてもう羽矢くんはこっちに向かって歩いてきているところだった。
こんなにドキドキしたのは人生初なんじゃないかって思うほど、心臓が高鳴る。
だからと言って羽矢くんの方をずっと見ておくなんてことは出来なくてただ、ドキドキしながら前を向いとくしかない。
すると
「ごめん。」
えっーーーー
羽矢くんは驚くべき行動をとったのだ。
いきなりわたしの前にしゃがみ込んでギリギリで制服で隠れている二の腕を確かめるように見てきたんだ。
「ちょっと、なにっーーーえ?」
何してんのよーって言おうとして羽矢くんの顔を見ると羽矢くんはすごく真剣そうな泣きそうな顔をしていた。
びっくりした。
けど、真剣な顔をみたら怒るなんて出来なくて羽矢くんが離れるのを待つしかなかった。
ちょっとしてから羽矢くんは離れて
「いきなりこんなことしてごめん。」
と、泣きそうなホッとしたような優しい笑顔で言われた。
「ううん、大丈夫。」
もう、何がなんだか。
結局、何がしたかったんだろう。
私はみんなの視線を感じながら前に立っている先生の方を向いた。
ー突然の痛みー
それからはもう、みんなからの地獄の質問攻めが待っていた。
そして今はまなちゃんからの質問攻めに合ってる最中でして・・・・・・・・・・
「どう言うことなの?みく!?」
私達は教室から少し離れた所で話していた。
なんせ、転校生お決まりであるあの机にみんなが集まるやつが合ってて、羽矢くんの前の私の席が取られちゃってる訳なんです。
だからこうして教室から離れた場所で、まなと話している。
「あんなに羽矢くんと接近してあの超かっこいい顔で優しく微笑まれてなかった!?」
接近!?
みんなからはそう見えちゃったんだ。
実際は二の腕?のあたり少しだけ触られただけなんだけど。
ていうか、私もわかんないんだよね。
「うん。何であんなこと急にしたんだろう?
初めて会ったのに。ていうか、あんなにかっこいい顔してるんだもん。会ったことあるなら忘れないよ?」
「まぁ、確かにそうよね~、あんな爽やかイケメンなかなかいないものね~
じゃあ、小さい頃は?
小さい頃に会ってたとか可能性ないの?」
うん〜、小さい頃か。
確かあんな子はいなかったと思うけど。
幼稚園ぐらいの時の友達とか?
その時ふと、たまに見る夢を思い出した。
男の子が泣いている夢。
ズキッ。
「うっ、痛い。いたっ、何この痛み」
とにかく痛い。
ズキズキして頭を叩かれているような痛みだ。
「ちょっと、大丈夫?急にどうしたの」
まなが駆け寄ってきて背中をさすってくれた。
ほんと、急にどうしたんだろう?
夢のことを思い出したら急に・・・・・。
でも、もう今日は考えないほうがいい気がした。
それからまなといつものように時間ギリギリまで色々なことを話して教室に戻った。
5時間目数学
みんながちょうど眠たくなる時間だ。
私も眠たくて全然授業の内容が頭に入ってこない。
しかも、よりによって普段は全然怒らないのに、居眠りしている生徒にはすごく厳しい先生の授業なのだ。
だから絶対寝たらダメなのに。
今にも寝てしまいそうだ。
ダメだ。
自分に言い聞かせて必死に目を覚そうとする。
そんな時
「はい、じゃあここを椎名。
お前ウトウトしてるけどじゃあ余裕ってことだよな?この問題解いてみろ。
よし、じゃあ問2をーーーー」
当てられた。
慌てて指定された問題を見てみるけど
やばい、眠かったから全然わかんないし全然集中できない。
どうしよう。
私がこうしている間に他に当てられた人はもう既に黒板に書きに行っている。
そんな時背中を誰かから軽く叩かれた。
不思議に思い、後ろを振り向くと
「美来?大丈夫そう?」
羽矢くん・・・・・・。
「ううん、わかんなくて。どうしよ。」
「じゃあ、今からさっと教えるね。」
ありがたい。ありがたいけど、そんな多く時間はない。
焦りながらも教えてもらったら羽矢くんは教え方がすごく上手くてほんの少しの時間で理解できた。
よし。覚えてるうちに書きに行こう。
そして、無事問題を黒板で解くことができた。
「ありがとね。助かった!頭いいんだね。」
あんなわかりやすく説明できるんだからすごいよほんと。
「うん。役に立てたならよかった。
困った時はいつでも頼っていいからね。美来?」
なんて、優しいの・・・・・。
なんか、羽矢くんが神様に見えてきたよ。
それから無事に授業を終えて帰る時間となった。
「ごめんー、美来!
今日彼氏と帰る約束してて。」
「あー、そっか!相変わらずラブラブだね!気にしないで楽しんできなよ?」
まなには中学の頃から付き合ってる彼氏がいるのだ。彼氏がまなにベタ惚れで今でもラブラブなカップル。
よし、じゃあ今日は1人で帰ろうかな?
1人帰り道今日のことを思い返していた。
『うん。役に立てたならよかった。
困った時はいつでも頼っていいからね。美来?』だって!
優しすぎでしょ!
ありゃ、女の子達が黙っていないね。
ていうか、羽矢くん私の下の名前分かっんだね?
今日来て、まだ全然時間が経ってない5時間目だったのに。先生も名字で読んでたからわからなくても不思議じゃない。
なんでだろう?
『困った時は頼っていいからね。美来?』
『みくぅ〜?ぃーーとぃうーーぼくがーーらーかーーね?』
そんな時ふと誰だかわからないけど、男の子の顔が思い浮かんだ。
その男の子は満面の笑みで何かを言っていた。
ズギッ
またこの前の痛みがやってきた。
何なんだろう?今までこんなことなかったのに。誰なの?たまに思い出す、謎の男の子は。
誰?あんな子知らないよ。
不安になりながら家に帰った。
ー球技大会ー
「では、自分がなんの種目をやりたいか前に書きに来てください。」
今、球技大会の種目決めが行われている。
私はこうみえて勉強はダメダメだし、スタイルも悪いけど運動だけは自信がある。
女子の種目は、バレー、バトミントン、バスケと何故かクラス対抗リレーの4つだ。
私はなんにしようかな。
なんでもいいからあまりものにしようかな?
ちなみに対抗リレーは足が速い人は推薦されたり、やりたかったら立候補していいことになっていて全員ではない。
私は前に足が速いからってありがたいことに推薦されて出ることが決まっている。リレーをする人も他の競技3つの中から絶対一つは選ばないといけない。
どうしよう?
悩んだ結果、バスケをすることにした。
羽矢くんは私と同じくバスケにしたようだった。
「球技、まなはどれにしたの?」
今日もまなと一緒にお昼ご飯を食べていた。
まなは運動神経普通ぐらいだったと思うけど何にしたんだろう?
「う〜ん、私はバトミントンにしたわ。
あんまり動かなくて良さそうだしね。」
まなはバトミントンか。
それにしてもあんまり動かなくて良さそうって理由かよ・・・・・・・。
満足した顔でご飯を食べてるまなを見て思わず苦笑い。
「未来は、バスケとリレーだったわよね?
2つも走る系の競技で大変そう・・・・・」
別に苦じゃないけどね?
「別に苦じゃないしむしろ楽しみなぐらいだよ?」
「まあ、未来運動だけはずば抜けていいものね?」
運動だけはってまなちゃん酷いな・・・・・・
2度目の苦笑いが出た時にちょうどチャイムが鳴った。
「今から10分です。ではスタート」
球技大会は始まり、今私がでるバスケが始まった所だった。
みんなに指示を出しながらもパスをもらってゴールに走っていってゴールを決める。
「よし!次!このままいい感じでいこ!!」
シュートは弧を描き綺麗に入り、チームに声をかける。
そして、順調に勝ち進んでいき、お昼ご飯を食べたら決勝という感じだった。
リレーは1番最後だ。
ちなみに羽矢くんはやっぱり運動も完璧らしく、羽矢くんのチームも決勝進出みたいだ。
「流石ね?このまま優勝もいけるんじゃないかしら?」
お昼ご飯を食べてる時、まなからそう言われてますますやる気がアップだ。
「でも未来、具合悪いんじゃない?」
ギクっ!
「やっぱり!周りに気づかれないように無理して取り繕ってたつもりでしょうけど、私の目は誤魔化せないわよ?
何年、一緒にいると思ってんのよ。」
うっ、さすがまなさん。
やっぱりまなは気づいてたか。
そんな素振り本当に見せないようにしてたのにな。
実は朝からずっと頭が痛くて、体も少しだけダルかったんだ。
「大丈夫なの?あと、バスケの決勝とそして美来はリレーもでしょ?
代わってあげたいけど、決勝とまでくれば私じゃダメだし・・・・」
「ううん、大丈夫だよ?あとバスケ終わったら長い休憩入るし。ありがとね?
それより、まなも午後からバトミントンだよね?頑張って!」
そんな優しい親友に微笑んでお礼とエールを送って午後の競技を迎えた。
私達のチームは見事優勝を勝ち取った。
でも、体調の方が少し悪化していた。
頭痛がひどくなってきて少しふらふらする。
今はリレーが始まるまでの長い休憩の時間だ。
だから少し休んどけばリレーに支障はないだろう。
「あ〜、未来ちゃんいた!
ごめん、未来ちゃん。女子バレーの決勝に出る子が具合が悪くなって保健室に行ってて出られなくなっちゃって、未来ちゃん代わりに出れる?
他の人にも声かけてるんだけど、みんな無理で・・・・・・・」
そうなんだ。大変だ・・・・・・・
もしかしたらバレーしてたら具合が悪いの忘れて熱中できるかもしれないし、困ってるみたいだし、代わりに出ようかな?
「いいよ?そこまで連れて行ってもらえる?」
「いいの?ごめんね、美来ちゃん。
せっかく休みの時間なのに。そしてリレーもあるのに。
未来ちゃんしかいける人いなくて、ありがとね?」
話しながらバレーのところに向かっていると
「ちょっと、あんた何してるの?
休憩じゃないの?しかも、昼休みの時より顔色悪いし。」
まなに会っちゃった。
「大丈夫だよ!ちょっと代わりにでてくるから!それより、ほらバトミントン始まるよ?」
心配症の親友に向かって微笑んでバレーの場所へ急いだ。
「ほんと、ありがとね!
まなちゃんのおかげで助かった!!
優勝もできたし!ほんと感謝!
ありがとう!」
無事、バレーが終わって優勝することができた。役に立てたようだ。
でも今はちょっとそれどころじゃない。
バレーをする前よりだいぶ酷くなっていた。
バレーの代理を頼んできた子に微笑んで、トイレに駆け込んだ。
「はぁ、はぁ、きっつ」
でも、リレーが残ってるんだ。
私は自分で立候補したんじゃなくて、みんなから推薦されたんだから出ないわけにはいかない。みんなの思い背負ってんだから。
休む選択肢は残ってないんだ。
「よしっ、いこっ」
体に鞭を打ってどうにか運動場まで行く。
「ちょっと、美来?大丈夫か?
体調悪いのか?」
途中で羽矢くんに会った。
「ううん、大丈夫だよ?
次リレーだから行くね?」
羽矢くんの呼び止める声がしたけど、時間がなくてどうにか運動場までこれた。
そして、あっという間に私の番が回ってきた。
私はアンカーだ。
前者からバトンを受け取って走り出す。
身体中が悲鳴をあげていたけれどどうにか走る。周りなんて見えてない。自分が今何位なのかも分からずにビリだったらどうしようとだけ不安に思いながら無我夢中で走ってたらゴールが見えて来て、一直線に走り抜ける。
そして、ゴールした・・・・・
けど、私はゴールした瞬間体から力が抜けて目の前が暗くなった。
ー幼い頃の出来事ー
sideまな
大丈夫かしら?
見れば見るほど心配になっていく。
私は親友の美来がもうすぐ走ろうとしているところを見ていた。
明らかに体調が悪そうで昼休みからはとても悪化している。
昼休み止めとけばよかった。
ふらふらしてるし、顔色悪いし、
未来のやつ無理してバレーの代理まで受けて。
大丈夫って言ってたけど未来の大丈夫は昔から大丈夫じゃないから。
そうこうしているうちに美来が走り始めた。
具合は悪いからはずなのにすごく速いスピードで走り抜けていく。
当然、美来がトップバッターでゴールした。
良かった〜
少しだけ安堵して駆け寄ろうと思ったのと
美来が倒れたのは同時だった。
やばい!美来っ!!
焦ってスピードをあげ声を上げて美来の近くまて来たところだった。
「美来!みくっ!おい、大丈夫か?」
私よりもこの間転校してきた羽矢くんが受け止める方が早かった。
羽矢くんは心配そうな泣きそうな顔をして美来に声をかけていた。
「羽矢くん!美来を保健室に!!」
私がそういうと、ハッとした様子で羽矢くんは美来をお姫様抱っこして保健室に向かっていた。
「「「キャーアッ」」」
そんな状況に女子達が黙っているはずもなく、
一斉に悲鳴と興奮?の声が運動場に響きわたる。私は羽矢くんに続いて保健室へと向かうのだった。
大丈夫かな?
親友への抑えきれない心配を抱えながら・・・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ここはどこ?
私、運動場で倒れなかったっけ?
体もダルくないし。
何で外にいるんだろう?
それにもう夕方だ。外は暗くなりつつある。
どこか分からない知らない場所。
うちの近くではないと思う。
もしかして夢なのかな?
周りを見まわしてみるけど、ただ家が並んでいるだけ。
怖い。
夢なら早く覚めてほしい。
でも、何だか懐かしい。
不思議に思いながらも少し歩いてみる。
すると
『みくぅ〜?あんまりはしりまわってころばないようにね?そしてもう帰ろーよ。先生が遅くならないようにって言ってたでしょ?』
少し先の公園の方から男の子の声が聞こえてきた。
みく?私のこと?
それに前に1人で帰ってる時にふと思い出して聞こえた声とおんなじ声だ。
怖い。怖いけど、気になる。
私は公園に入った。
そこには幼稚園児ぐらいの男の子と女の子がいた。
女の子の方は・・・・・・・・・・私?
家にある、私が写ってる写真と今見える女の子の顔はそっくりだ。ていうか、同じだ。
てことは小さい頃の私?
じゃあ、今遊んでる男の子は誰なの?
知らない。
ずっと夢に出てくる男の子?
あなたはだーれ?
『大丈夫だよ!!ーーーはつよいし、みくもつよい!2人そろえばサイキョー!でしょ?』
『うん。そうだね。』
男の子はまるで小さい私に強いと言われたことが嬉しかったのか、少し顔を赤くして笑っていた。
『うっーう、痛い〜!ーーーたすけでぇーー』
『ほーら。だから言ったのに。大丈夫?みく?』
案の定、私は転んだようだ。
小さい私に手を伸ばす男の子に目を向けるけど、その子の顔はボヤがかかって見えない。
誰なの?
すると
『どいつも、こいつもふざけやがって。
舐めてんのかよ俺を!
くそっ!』
スーツを着崩した男達3人が近くのゴミ箱を蹴って、公園に入ってきた。酔っ払ってイラついているようだ。
やばい、公園には、子供がいるのに。
男達は子供達に目を向けて
『あ〜あん?ガキどもが何見てんだよこらっぁ。』
そう言って子供達に近寄った。
『みく、きいたことある!!こうきょーのばしょだからけったりきずつけたりしたらいけないって!せんせーがいってた!だから、おじさん?やめたほうがいいとおもう。みく!』
小さい私は近づかない方がいい男の人たちに近寄って言った。
『ガキが何偉そうに言ってんだよ。
痛い目あいたくなかったらガキは家で眠ってろ』
『みく、ガキじゃないもん!みくだもん!』
その言葉でさえも酔っ払ってる男をムカつけさせるには十分で、男たちは小さい私の髪の毛をつかんで、笑った。
『いだぃー、、、ーーーたすけて~』
『はなしてください!みくにさわらないで!
みくがいたがってる!』
男の子がそう言って睨みつけると
『どいつもこいつも、うるせーんだよ。』
男は血走った目で小さい私を投げた。
小さい私はそれに抵抗できるはずもなく、弧を描いて空中を飛んで、錆びた鉄棒の方へ落ちる。
小さい私は鉄棒で頭を打ってしまい血を流して、しまいには腕を酷く擦りむいて泣いていた。
『いたい、いたいょ』
男はそれをみて自分のしたことに気づいたのか、他の男達と逃げていった。
『みくっ、大丈夫?どうしよう。
どうしよう。』
男の子は泣きそうになりながら美来を見ていた。幼稚園児ぐらいの男の子がこんな状況に対応できるわけない。
『ーーー?いたぃよぅ。いたぃよう。』
小さい私はただ、泣いていた。
男の子は泣きながら周りに助けを求めていた。
『だれか!だれかいませんか?助けてみくを助けて。』
『だれか助けて。助けてよ、お願い。みくを助けて。僕ははどうなってもいいからこの子だけは。この子だけは助けて・・・・・・・』
この言葉と状況が私が夢でみた状況と重なった。
やっと、やっと、分かる?
これがなんなのか。
夢が何を意味するのか。
でも、男の子の顔は見せないままだ。
『ーーーくん!探したわ!
みくちゃん!酷い怪我!救急車を!』
少し経って大人が来た。
そして、小さい私は運ばれた。
『ーーーくんーーーくんは戻りなさい。
みくちゃんは大丈夫だから。』
救急車は大人達と共に病院へ向かった。
残された男の子はそれからもずっと泣いてる。
『ぼくのせいだ。ぼくがあの時帰るって言っていれば、みくは、みくは・・・・・』
それからしばらく経って
『神様。お願いです。みくを助けて。』
そう言ってこっちに向かってきた。
すると急に男の子の顔のボヤが晴れた。
えっーーーーーーーーーーーーーーーーー?
はね、や くん?
ー忘れてしまっていた記憶ー
「こうちゃん!」
そこでやっぱり夢だったらしく目は覚めた。
しかも羽矢くんの名前を呼んで。
そして、私は今まで見て来た夢の正体も昔、羽矢くん、通称こうちゃんとの出来事全部を今の夢をきっかけに思い出した。
「み、美来?」
羽矢くんは私が気づかなかっただけで私の横に座っていたようだ。
「み、美来?お前・・・・・・・・・おもい、だしたのか?」
羽矢くんはびっくりしたような泣きそうなそんな顔でこっちを見ていた。
「うん。全部思い出しちゃった。
公園でのことも、私達が小さい頃施設で一緒にいたことも。全て。」
今のお母さん、お父さんは実の両親だと思ってた。だけど違ったね。
私は実のお母さんとお父さんが亡くなって施設で育った。そしてこうちゃんと出会ってずっと一緒にいた。
あの事件があるまで、こうちゃんがいるだけで
お母さんやお父さんがいないことなんて全部どうでも良かったし、寂しさなんてなかった。
「そっ・・・・か。
ごめん、ごめん美来。あの時俺が守れていたら美来が傷つくことなんてなかった。
全部俺のせいなんだ・・・・・・」
そんな・・・・・・・
こうちゃんのせいじゃないのに。
夢で見た通りこうちゃんは、あのことが起こってからずっと小さい頃からずっと自分を責めてここまで生きてきたのだろうか。
そんなことないのに。
「こうちゃんのせいじゃないよ?
自分を責めないでよ。でも、今まで私なんで忘れてたんだろう?」
私が疑問を口にすると、こうちゃんは悲しい顔をして話した。
「うん。今から全部話すね?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺も赤ちゃんと時に両親に捨てられて、
美来も小さい頃、両親が亡くなった。
だから俺たちは施設で出会った。
俺は両親がいないことの寂しさで誰にも心を開かずにただ1人でつまらない毎日を送っていた。施設の周りと子達も最初こそは話しかけてくれたが、何も喋らずにいる俺からは次第に人はいなくなっていた。
そんな時、美来だけは笑顔でずっと喋りかけてくれた。何も喋らず心を開かない俺に屈託のない笑顔で笑いかけてくれた。
そのおかげで俺は美来とは話して、仲良く出来るようになりずっと一緒にいた。
そして、あの日も施設の先生に無理言って"近くの公園"と言う条件で2人で公園に遊びに行ってた。
そして、酔っ払いに巻き込まれて美来は怪我を負った。小さい体に怪我を負うのはかなりダメージを受けて、救急車で運ばれた美来だったが医者からは
「美来さんは、頭を打って一部の記憶がなくなってしまう。あの事件のことは今後無理に思い出たせてはいけない。自然に思い出せる確率は少ない。そして、二の腕らへんに負った傷深くて跡が残るかもしれない。」
と言われたらしい。
すると当然事件に関わった俺のことを目を覚ました美来は忘れていた。
そして、幸いと言うべきかこのタイミングで美来も俺も引き取ってくれる親が見つかりそれぞれ別々の生活を歩むことになった。
新しい両親は優しかったがいつまで経っても頭の中は美来のことでいっぱいだった。
腕に傷残るかもしれない。俺があの時守れたらこんなことにはならなかった。
新しい両親とうまくやれているだろうか。
寂しい思いはしていないだろうか。
後悔や自分を責める気持ちはいつまで経っても消えなかった。
でもせめて美来に失望されないような生き方をしていたいと勉強、運動、人間関係全てにおいて全力で過ごした。
そんなふうに小学、中学、高校と上がってきた。高校生では今まで努力して来たこともあってすぐ友達ができて充実した学校生活を送っていた。
けど、義父さんの都合で別の街に引っ越すことになり学校も2学期中場という中途半端な時期に転校することになった。
そしたら、転校した先の学校には美来がいた。
信じられなかった。
また会えるなんて、嬉しさとあの時の申し訳なさが混ざりあって見た時は思わず泣いてしまいそうだった。
美来と会ってやっぱり美来は俺のことを忘れているようだったが、そんなことはどうでもよかった。
会えたことが何よりも嬉しい。
腕の傷も申し訳なさで泣きそうになる自分を叱咤して確かめた。
跡は全然残ってなくて安心した。
美来からすれば不思議でしかないことだっただろうな。
そして、今美来が倒れて保健室で様子を見ていると「こうちゃん」と言って起きたのでもしかしてと思ったらやっぱり美来は昔のことを思い出したんじゃないか。というわけ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そうだったんだ。
「あのことはこうちゃんのせいじゃないんだよ?だからもう自分を責めないで?
こうちゃんとまた会えて良かったよ。」
感謝の気持ちを込めてそういうと、
こうちゃんは真剣な顔をして言った。
「ありがとう。美来。
俺、強くなったんだ。だから今度こそ、美来を絶対に守るから。」
「うん。ありがとう。」
小さい頃施設で一緒だった男の子は
たくましい、かっこいい姿で戻ってきました。
END
完結しました!
今まで読んでくれた方、ありがとうございました。面白かったですかね?笑笑
更新が遅れて朝になってしまいました。
これ朝でも読んでくれる人いるのかな?笑笑
少しでも面白いと思ってくれた方がいるとありがたいし、嬉しいです。
もっと上手く面白い小説を書けるようになる。
それが今年の夏休みの目標です。
これからも見てくれると嬉しいです!!
本当にありがとうございました!