「夢見る少女じゃいられなーいっっっーーーーー!」
カラオケで熱唱した
現実が分かってない夢見る未熟な高校生が笑顔で。
狭い狭い檻に閉じ込められて一緒にいることを強制させられる。
性別も性格も何もかも違うただ同じ場所に集まった人間達がひとつにまとめられる。
できることならこんなところから今すぐにでも抜け出したい。
誰かと仲良くしとかないと困る学校生活なんてうんざり。
誰かと一緒に行動とかめんどくさい。
いちいち相手がどう考えてるのかなんて気にして無駄な思考を働かせるのもめんどくさい。
どっちの友達を優先しようだなんて、
なんだかあの子と心の距離が離れたな、なんて気にしてさ。
これからの学校行事で1人になったらどうしようって心配して勉強なんて気づけば手が止まってて、
イライラして不安になって怒って家族に八つ当たりして。
孤独だなぁ なんて。
なんか悲劇のヒロインぶっちゃって。
嫌になるや。
家族もいて友達もいて絶対恵まれてるの。
幸せなはずなのに。
贅沢言うなよってね。
それでも
はぁー。
何回も何回も濁ったため息。
満たされない。
どうすれば全部うまくいくんだろうね。
────────
あの日、あなたと交わした約束はまだ生きてるのかな
もうとうに消えてるような気がしてる。
────────
夢は自分の経験から見るっていうから
寝てる時は記憶の海に溺れてるのかな
学校行くの辛いのに行きたくないのに
不登校になるのも怖いし
周りの目が怖いし
結局行かない選択さえできなかった
「冒険はしないか?」
コンビニで数々の輝く美味しそうなスイーツがある中、結局いつもの定番のクレープを選んだ私に無表情で平野瀬は聞いてきた。
だから私も無表情で答えた。
「しないよ美味しくなかったら嫌だもん」
「…………そうか」
「うん」
そこで会話が終わった。
それぞれ、別のものを選んでなんとなく意図はなかったけどまたスイーツの前で私達は止まった。
その場で謎の5分、無言でスイーツを見つめ合う私達は他のお客こそ、見ていないけれど店員は不思議に思ったかもしれない。
そして次に口を開いたのはまたもや平野瀬だった。
「でも美味しいかも
もしかしたらいい道を通るかもしれない。
そうすると人生の中で一つ美味しいを見逃したことになる」
「……………悪い美味しいを感じる可能性もあるよね?」
「まあ…………そうだな。
それもまた人生さ」
「何急に」
「僕はこのぷりんが君に美味しいと思ってほしいと願っている気がしてやまないんだ。」
私のほうをジッと見つめて言った平野瀬
「気のせいじゃない?」
「うむ。
気のせいか。
でも僕はどうしても君にこのぷりんを買ってほしい
ぷるんっとした感触を味わってほしいんだ」
「何このプリンに何か思い出でもあるの?相当美味しかったとか?」
「いや特にない食べなこともないな」
変わったやつだ。
そこまで勧めて食べてほしい理由もないのか
「ただ今このぷりんを買わなくて冒険しなかったら君はこれから先このぷりんを手に取ることがあるだろうか
ぷりんをジッと見つめてごらん
ほら聞こえるだろう?
ぷるっんぷるっん、美味しいぞ
冒険しよう。
とプリンの声が」
あまりにも真剣な顔で言うものだから私はぷりんを見つめて心の声を聞く。
「……………うんなにも聞こえないね」
「そんなに言うなら平野瀬が買えば?」
ぷりんだって心の底から食べたいと思っている人に食べてほしいに決まってる。
だから勧めると平野瀬は微妙な顔をして
「遠慮しておく」
「なんで」
結局これだけ右往左往して買わないのも馬鹿馬鹿しいので少しもったいなかったがいつものクレープとぷりん
両方買うことにした。
最初からこうすればよかったのかもしれない。
そして私たちは15分もコンビニで買い物したのち、レジで会計して家まで歩いて帰った。
ちなみに家で食べたぷりんはふつうであった。
まあでもまずいわけでもなかったのでたまには冒険もいいのかもしれない。
平野瀬はわざわざぷりんの感想を聞くためだけに夜に電話をかけてきた。
「ぷりんの味はどうだったのか」
「普通」
「うむそうかまたそれも人生だ」
そう言って電話を切った。
ほんと変わったやつだ。
平野瀬とぷりんを思い出しながら歯を磨いて就寝につく。
その日は夢にあの大きなあのプリンが出てきた。
なんかこわいな
冒険………………こわ。
それもまた人生だ。
平野瀬の声が聞こえた気がした。