のぞみ

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「ねぇ、今日久しぶりにカラオケいこう!」
「おっ、いいね!!今度こそ負けないから!」
「ねぇ、職員室ついてきて!」
「うん!いいよー?いこいこ!」
やっと7時間目が終わって開放感溢れる放課後みんなが遊びに行こう。だとか、ここに着いて来て。だとか女子同士で約束する話を聞きながら私はひとり本を読んでいた。
やばっ、この本面白すぎる!
何回でも読めるわ!!
楽しみながら本を読んでいたらいつの間にか外は暗くなっていた。
「もうこんな時間か・・・・・・・・帰ろ。」
「ただいまぁ。」
挨拶をして家の中に入るとお母さんがご飯を作って待っていた。
「あら。莉乃(りの)おかえり。
ご飯もうすぐできるからね。」
「うん。ありがと。」
そう言って自分の部屋に入ってさっきの続きの本を読む。
しばらくするとお母さんから呼ばれた。
ご飯が出来たみたいだ。
「どう?学校楽しい?
あんた仲良い友達いるの?連れて来てもいいのよ?
本もいいけど、友達とも遊びなさいよ?」
またその話か。
最近はそればっかりだ。
うんざりしながらも答える。
「別に、友達とそんな仲良くなくたってやっていけるし。別にそんな仲良い友達が欲しいとも思わないし。
心配しなくていいよ。普通に友達はいるから。」
「そう?でも、1人ぐらいすごく仲がいい子がいた方が安心じゃない?人と人の繋がりは大切なのよ?
いつもお父さんが言ってたでしょ?」
お父さんは私が小さい頃に亡くなった。
お父さんはいつも言ってた。
"人と人の繋がりは大事だ。
できる限りは多くの人と繋がりなさい。
そうすればいつか絶対役に立つ日がくるから''
って。
「はいはい、そうだね。大丈夫だって友達ちゃんといるし。心配しないでいいから。
ごちそうさまでした。」
お母さんは何か言いたそうだったけど、無視して食器を片付ける。
それからは宿題を済ませてから本を読む。
そして、小説がキリのいいところで読むのをやめて寝る。
私には別に特に仲がいい友達なんていらない。
だからといって教室で孤立しているわけじゃなくて普通にみんなと話せるし、行事とかには一緒に回る人には困らない。
ただ、マンガや小説であるような“親友"ってやつがいないだけ。私はそれでいい。
深く関わったってめんどくさいだけなんだから。


キーンコーンカーンコーン
4時間目が終わりみんながお昼を食べようと動きだした。
私は本と弁当を持っていつもの場所に向かう。
いつもの場所とは中庭だ。
誰も来なくて静かで、落ち着く。
そんな1人でゆっくりできるこの時間が私は好きだった。
1人で本を読みながら弁当を食べていると
「莉乃ちゃん!!こんなところで1人で食べてるの?」
同じクラスの桐山 颯 (きりやま はやて)がやって来た。
いつもクラスの中心にいてクラスのムードメーカー的な奴らしい。
興味ないから知らないけど。
「そっか、そっか!莉乃ちゃんはいつも本読んでるけど
友達と仲良くしようとか思わないの?」
はぁー、最近このこと聞かれるの多いな。
めんどくさい。
しかも今、本がいいところなのに。続きが気になる。
桐山颯が来たから読めなくなっちゃった。
「別にそんなこと思わない。
本を静かに読めればそれでいいから。」
私がそう答えると桐山颯 は何かを決めたような決心した
顔をしていた。
「あのさー。
明日俺達のクラスに明日俺の双子の妹が転校してくるんだけど、多分莉乃ちゃん妹と気が合うと思うんだよね。
妹も本好きだし。
だから仲良くしてやってね。」
桐山颯はそれだけを言いにきたらしく私の返事も聞かずに去って行った。
別に本に影響がでるなら一緒にいたくないし、いるつもりもない。
だけど、本好きだと聞いたのでどんな子なのか、少しだけ少しだけ気になった。


「初めまして、霧山 風夏(きりやま ふうか)です。好きなことは本を読むことです。
私と一緒で本が好きな人は話してくれると嬉しいです。
みんなと早く仲良くなりたいので今日からよろしくお願いします。」
この子が桐山颯の双子の妹か。
桐山颯が言ってた通り本好きなんだ。
まあ、別に特別仲良くするつもりはないし、関係ないし、どうでもいいけど。

休み時間、本を読んでいるとふと机の前に影が出来た。
なに?
誰がなんか用事かと思って本を見るのをやめて
前に立ってるらしき人を見ると今日転校してきた霧山風夏だった。なに?なんか用事?」
そう聞くと霧山風夏は笑顔で話してきた。
「その本○○○さんの本だよね?
めっちゃ面白いよね?
でも、私最後はすっごい泣いちゃったよ。
○○○さんの書く本はどれも心に響くほど面白いよね!!この同じ作者の本読んだことある?
おすすめの本あるんだけど!」
この本読んだことあるんだ。
確かにこの本はすごく面白い。
面白くて3回目だ。
何回読んでも感動するし、面白い。
おすすめの本か・・・・・・・
ちょっと興味あるな。
「ううん、この作者のやつは今回初めて買ったの。おすすめの本って?何?面白いの?
この作者の本これからたくさん読みたいんだよね。」
「ふふっ!莉乃ちゃん、目キラキラしてるね!
これから本のこといっぱい話そうね!」
ちょっと柄にもなく話し過ぎた。
いつもそうなんだよね。
本のことになるとついつい興奮しちゃって話し過ぎちゃう。
でも本のこと誰がと話すなんて久しぶりで楽しかったな。
たまにはいいかもしれない。
たまにはね。

                      続く


鳥籠

「最初は○○○○って言ってたんだけど、これの方が給料いいし、将来安定だからって考え方を変えさせたんだよね。」
お母さんは当然かのように言った。
違うでしょ。考え方を変えさせたんじゃなくて自分の考えでそっちの方にもっていかせたんでしょ?そっちが言いって押し付けたんでしょ?
お姉ちゃんは最初は○○○○の仕事に就きたいって言っていた。
なのに○○○○に関係のない仕事をお姉ちゃんに言ってこっちの方がいいからって言ってお姉ちゃんがやることを変えさせた。
分かってるよ。心配なんだよね。
分かってるよ、分かってるけど・・・・・・・・・
お姉ちゃんほんとにそれでよかった?
本当にお母さん達の言うこと聞いて将来のこと変えて良かった?後悔しない?
お姉ちゃん、私の髪切ったりいじったりする時楽しそうな顔してるよね。
本当にそれでよかった?
「お姉ちゃんみたいにならないように今のうちからもう決めときなさいね。」
結構言われる。
私はお姉ちゃんみたいにはなりたくない。
「なんでもお母さん応援するからね。」
お母さんはそう言うよね。
でも、本当に小説家目指してるなんて言ったらなんて言う?
「やめときなさい。大変だから。」
って、言うんじゃないの?
分かってる。心配してくれて言ってるんだよね?
でも、それが否定することになってるの。
私は絶対お姉ちゃんみたいにはなりたくない。
たとえ、それが私のためを思ってるんだとしても。
親の言葉の狭い鳥籠に入れられたくない。


こんなこと誰にも言えないね。
家族になんてもっと言えない。私がこんなこと思ってるなんて知りもしないだろうね。
私がこんなこと思ってるなんて知ったら傷つくと思う。
ごめんね。
だからここだけの秘密。

7/25/2023, 11:33:17 AM