嵐が来ようとも
「嵐が来ようとも絶対俺はずっとりいの隣にいるから。
世界中のみんながりいの敵だとしても俺はずっとお前の味方だ。愛してる。だから俺を信じて付き合わないか?」
高校2年の夏、彼氏に振られて1人で泣いていた私に彼は真剣な顔をしてそう言った。
そんな告白が今の弱ってる心には痛いほどに響いた。
私は必死に涙をぬぐいながら笑顔を作って
「ありがとう。」
そういって、彼の言葉に頷き彼の手をとった。
ーそれから3年後ー
「あゆくん!大丈夫!?
怪我して救急車で運ばれてびっくりしたよ。
痛いところない?多分入院だよね!
なんでも言ってね。なんでも持ってくるし私が今度はあゆくんを支えるからね?ていうか、ほんと無事で良かったよ〜」
3年前あゆくんは傷ついた私に『ずっとお前の味方だ。愛してる。』と言ってくれた。今までずっと一緒にいてくれたあゆくんには感謝の気持ちでいっぱいだ。
今はお互い大学生で、大学を卒業したらしたら結婚してくれとも言われていた。
だから今度は私だ。あゆくんが怪我で辛くてもわたしがささえるんだ。
そう言う気持ちであゆくんに笑いかけた。
するとあゆくんは
「はっ?誰あんた?」
っ!?
あ、ゆくん?
あゆくんどうしたの?
あゆくんは学生の時私に告白してくれる前のような冷たい他人を見るような目つきをしていた。
「あ、ゆくん?誰あんたってりいだよ?
今までずっと一緒だったりいだよ?どうしたの?」
あゆくんの変わりように恐怖を抑えながら聞くと
「あぁ、小川さん来てらっしゃったんですか。
今から大事な話をします。
ひとまずこちらへ。」
あゆくんから返事が来る前にお医者さんが来た。
「はい・・・・・・・・・・」
どういうこと?
あゆくんのあの目、私に学生の時告白してくれた前のようだった。あゆくんは私に告白してくれる前、中学生の時に女関係で酷い目にあったらしくて女嫌いだった。
ただただ混乱しているとお医者さん言いにくそうに話し出す。
「小川さん。
落ち着いて聞いてください。
松原あゆとさんは事故の際、頭を強く強打し、人間関係の家族以外のことの記憶を失くしてしまいました。
しかし、中学生になるまでのことは覚えているようです。
日常生活には支障はありませんがおそらく小川さんや高校で出会った友人のことの記憶を失っています。
脳に良くないため、無理に思いただせることは絶対に避けてください。」
う、そでしょ?
信じられない。あゆくんが私のことを忘れているなんて・・・・・・・・・・
そこからの先生の話は上手く頭に入ってこなかった。
話が終わりあゆくんのいる病室に向かう。
どんな顔してあゆくんと会えばいい?
あゆくんは私の出会ったことも高校生の時告白してくれたことも全部忘れてしまっているんだ。
あゆくんにもう一度あの敵意を込められた目で見られるなんて想像するだけでも辛かった。
行きたくない。
でも行かないと。
どんなに酷く接されたって私はあゆくんが好き。大好き。その思いはずっとこれからも変わらないんだ。
よし。行こう。どんなこと言われてもあゆくんと一緒にいるんだ。支えるんだ。
覚悟を決めて笑顔でノックをして中に入る。
「ちっ、女かよ。
入ってくんな。俺は女が大っ嫌いなんだ。
りいだかなんだか知らないけど出ていってくれ。
空間に女がいるだけでも迷惑なんだよ。」
っ!
入ってすぐ鋭く強い言葉の刃が飛んできた。
でも、ここであゆくんのいうことに従う訳には行かないんだ。
負けない。どんなことを言われても。
「ごめんね。私、小川りいっていうんだ。よろしくね。」
笑顔で言う。
「よろしくなんてしねえし。出てけよ」
睨みながらあゆくんは言ってきた。
やっぱり辛いな。
「ごめんね。それはできない。私あゆくんの側にいるからずっと。
見て!今日は天気だね!あゆくん退院したらまた走りに行けるね!」
あゆくんはすごく走るのが速くて走るのが好きなんだ。
だからいつも夕方は走るのが日課なの。
「っ!なんてお前がそれを知ってるんだよ。
てか、はやくか」
「好き、大好き」
あゆくんがおそらく「はやく帰れよ」と言おうとしたのを遮って言う。
あゆくんが私と少し打ち解けてきたらもう一度今のあゆくんに気持ちを伝えようと思ってたけど、どうしても気持ちが抑えきれなかった。
私に冷たいあゆくんを見てもその姿を見るだけで愛しいと言う気持ちが溢れるんだ。
「はっ?俺のことよく知らないくせに告白とかなんだよ。どうせお前も俺のこと外見だけ見て告ってんだろ?
女ってみんなそんなもんだもんな。
って、何泣いてんだよ。きもっ」
泣いて、る?
慌てて目元に手をやると涙で濡れていた。
あれっ?泣くつもりなかったんだけどな〜。
涙を頑張ってぬぐいながら必死に笑顔を作ってもう一度言う。
「ご、ごめん!
でもね。本当に好きなんだあゆくんのこと」
どんなに嫌いでも好きになってもらう。
それが私にできることなんだ。
あゆくんは私の顔を見て何を考えるような仕草をして荒い息を吐きながら頭を抑えた。
「はぁ、はぁ、痛い。」
「大丈夫!?」
そう言って背中をさすろうとした。
「触んなっ!」
あゆくんは顔をしかめながらもそう叫んだ。
「ほんとに1人にしてくれ!」
そう、だよね。
ごめんね。
「分かった。」
そう返事して病室を出た。
sideあゆと
続く
読んでくれてありがとうございました。
7/29/2023, 11:39:52 AM