『どうすればいいの?』
新しく家にやってきた用心棒は、無愛想で無表情なひと回りも下の男の子。はっきり言って生意気すぎる。斜に構えてて腹が立つ。でもね…、
「アンタは綺麗だ」
そう言って私の髪に簪を挿した。
「少しは俺の言うことを聞け」
そう言って私を引き寄せた。
ほんのり頬を赤く染めながら、私を思いっきり喜ばせてくれた。
決して愛の言葉は口にしないけれど、私は彼が好きだし、彼も私のこと……。ああ!身分の違いさえなければ、きっときっと結ばれるのに。
どうすればいいの?どうすれば一緒に──
「──ねぇ。駆け落ち、しちゃおっか?」
目を丸くする彼の手を取り微笑んでみた。
「アンタと一緒なら、それも悪くないかもな」
不敵に微笑む彼。
月明かりの下二人、そっと屋敷を抜け出した。
この胸の高鳴りはどうすればいいの──?
『宝物』
俺の妻はかわいい。
子供も勿論かわいいが、妻がかわいくて仕方ない。
夜明け前、目が覚める。外はまだ暗く、灯りがないと歩けない時間。身支度を始めると隣で寝ていた妻がもそもそと起きるのに気づいた。
「おはよう。ごめんね……早起きできなかった」
「はよ。寝てていいよ、疲れてるだろ。チビ共も起きると大変だし」
子供が二人、すやすやと寝息を立てている。妻は子供の布団をしっかりと掛け直し、羽織を着た。
「寒いよね、今お茶淹れるから」
この気遣い、愛しさが増すばかりだ。湯が沸くまでの間、後ろから抱き締めると「ばか」と照れながらも身体を預けてくれる。いつまで経ってもこんな反応だからかわいい。
──お茶を飲み終えると、兜を深く被り立ち上がる。
「いってらっしゃい。気をつけて……」
「ああ」
一言で答えると、闇の中へ駆け出した。
今日もまた飛ばなければ──この愛しい宝物たちを守るために、戦いに出るんだ。
『キャンドル』
ゆらゆら、ゆら。
揺らめくキャンドルの小さな火を眺めていた。きっと私は生まれる前の遠い昔から、火が好きだった。
夢で見たから間違いない。私の夢は一度で終わらない……まるでもうひとつの人生のように夢は毎日続いているから。
夢の中で焚き火をしていた。大好きな人と他愛もない会話をしながら、魚なんか焼いて食べて……寝る時は寄り添って夜を明かしていた。
火はあたたかくて好き。ぱちぱちと心地よい音で私は眠りに引き込まれていく。
夢で眠ると目が覚める。どうやらうたた寝をしていたみたい。キャンドルに灯った火はまだ消えていない。
「キャンドル、買いに行こうかな」
だいぶ小さくなってしまっていた。もうすぐクリスマスシーズンだし、かわいいグラスも沢山出ているかもしれない。
夢の中の大好きな人は結局誰なのか、いつもわからない。続きが気になるから毎日のキャンドルはやめられない……なんて。
「誰にも言えないよねぇ」
わからないじゃない、いつか会えるかもしれないし?
期待を胸に、今日はそっと火を消した。