『宝物』
俺の妻はかわいい。
子供も勿論かわいいが、妻がかわいくて仕方ない。
夜明け前、目が覚める。外はまだ暗く、灯りがないと歩けない時間。身支度を始めると隣で寝ていた妻がもそもそと起きるのに気づいた。
「おはよう。ごめんね……早起きできなかった」
「はよ。寝てていいよ、疲れてるだろ。チビ共も起きると大変だし」
子供が二人、すやすやと寝息を立てている。妻は子供の布団をしっかりと掛け直し、羽織を着た。
「寒いよね、今お茶淹れるから」
この気遣い、愛しさが増すばかりだ。湯が沸くまでの間、後ろから抱き締めると「ばか」と照れながらも身体を預けてくれる。いつまで経ってもこんな反応だからかわいい。
──お茶を飲み終えると、兜を深く被り立ち上がる。
「いってらっしゃい。気をつけて……」
「ああ」
一言で答えると、闇の中へ駆け出した。
今日もまた飛ばなければ──この愛しい宝物たちを守るために、戦いに出るんだ。
11/20/2023, 11:15:59 AM