アクリル

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8/23/2023, 10:08:19 AM

海へ


ただ青の音を聴きたかった
おかえりなさいを言いたかった

ただいまなんて聞こえていないのに
そこにいるわけがないのに

「待っているだけじゃ進めないよ」
そうだね、確かにそうだ。

じゃあ、会いに行くよ。
大丈夫、持ち物も忘れ物もないよ。

私は入道雲の壁を壊して
波をかき分けて歩き出した。

恥ずかしがり屋のあなたが
いつもの癖で隠れてしまう前に
ちゃんと見つけるよ。
この夏が終わってしまう前に。

8/12/2023, 4:16:34 PM

君の奏でる音楽


こじんまりとした発表会で聴いていたピアノの音
丁寧で、柔らかい。
ひと聴き惚れ、とでも言うのだろうか
どうにも、楽器の魅力に取り憑かれてしまったのだ。

憧れて通った音楽室、うまく動かない指も
それなりに操れるようになって
君の音に近づけるのが嬉しかった

「すごい、上手になったね」

何よりも嬉しい褒め言葉が沁みた

「今度、連弾、したい」

緊張で声が震えてしまう

「うん。次の発表会は連弾ね」

白黒の楽譜が、なんだか色付いて見えた。

7/31/2023, 11:56:25 AM

だから、一人でいたい。


失うものはとうに失い切った
出会うべきものにはご挨拶までできた
お礼を言うべき人には頭を下げた

あなたは強いから一人でやっていける
あなたなら大丈夫

そんな信頼を得たから
もう心配かけないよ

聞きたくなかったことも
言われたくなかったことも
信じたくなかったことも

もう誰にもぶつけられないから

やっと私らしい生き方が始まるから

横目で、何事もなく通り過ぎていってくれたら
それでいいから。

もうさようならできるよ。
へばりつく黒い脚本の繰り返しに。

これからよろしくね。
真っ白な脚本と、生き直す勇敢な私へ。

7/29/2023, 10:01:47 AM

嵐が来ようとも

 
生き延びてるよ
立派に、いや、図々しく
人間らしく
息をしてるよ

まだ言い切れていない
まだ書ききれていない
聞かせたいことが沢山あるから

戻るその日まで待っていて。


7/9/2023, 10:11:37 AM

私の当たり前


わかりきった顔で
斜に構えて
問い詰められることに恐れながら
無難なことを口に出す

決して世間知らずではないと
思い知らせてやりたくて
傾聴の姿勢を取らせようと躍起になる

何も疑わなくて済んだような人を
つつきながら生きるしかなかったから。

「そうでもしないとやっていられない」

失望したような顔で、半笑いになる私を
そんな表情と声音が癖になった私を

いったい、誰が好くというのだろう。

きっと、天真爛漫に笑う人を
大多数は望んでいるのだ

裏のないまっすぐな感情を
伝え合える素直な関係を
みんな欲しがっているのだ

側から見たって、澄んだ愛情は美しく見えるのだから。

故に、大抵こんな顔をしている私は
世間のテンプレートには沿えない。

けれど、もし奇特な人がいて
湿った半生の私を気に入ってくれるなら 
それが後世の、もう一つの定番になりますように。







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