子供の頃は
朧げに残っている
3歳くらいの時
覚えたての手の形で
3を作って
初めての自己紹介をしたこと。
自己開示を
なんの疑問もなくできていた
そして受け止めてもらえた
暖かい世界だったと思う
不思議だよ
歳を重ねるほどに
自分を隠すようになっていく。
逃れられない呪縛
とうの昔に
全てを諦める段階など過ぎていました。
あの時、見晴らしのいい場所から
飛んでいてもおかしくありませんでした。
手が痛くなるほど荷物を持たされて
「邪魔をしないことがお手伝いだ」
「何でもかんでも人任せにしやがって」
「全部自分でやるんだよ」
「あたしの言う通りにしてればいいんだよ」
エゴと大人の焦りに振り回されて
悪い人間に囲まれて
どこへ行っても疎まれていました。
薄暗い表情のまま
友達同士で遊んだこともありません。
ひとりぼっちに慣れて
それを鼻にかけるようになりました。
おひとり様、だなんて言葉が流行り出したことに
ひといちばい喜んでいました。
本当は寂しいこと
本当はおし黙ってしまう自分が嫌いなこと
本当は甘えてみたいこと
本当は頼りたかったこと
ひとりで声を殺して泣いたあの夜
本当は味方が欲しかったのです。
頼れる誰かが
寄りかかれる誰かが。
「頼ったら、絶対にお礼をするから」
「助けてもらったから、今度は私が助けるね。役に立てたらいいな」
そんな、人間らしい会話と
繋がりが
本当は欲しかったんです。
全部ひとりで抱え込んで
大人らしく生きる責任を
今だけは、放棄してもいいですか?
後悔
「今更だよ」
諦めているような、冷たくて悲しそうな声が
自責に潰された心に刺さった
私は、また何の役にも立てなかったんだ。
「酷いね、信じてたんだけどな」
信用があった分の失望を感じた
戻らない、取り返せないことを知った
あの時、やるべきだったこと
あの時、できなかったこと
あの時、判断したこと
あの時、ばかりで
もう、後の祭り。
ごめんねで許されたら
警察も医療機関も何もかも要らないんだ
色んなものを失わせた落とし前を
どうつけたらいいんだろう
泣きたいのはそっちだよね
「もういいよ、やり直そう?もう一回」
底無しに優しいあなたは
そっと手を差し出した。
情けなく私はその手に縋って
ふたりで、真っ暗な世界に飛び込んでいった。
「ありがとう」
「次こそ、成功させようね」
轟音とヘッドライト、点滅した信号灯、宙に浮く体
目を見開いて叫ぶドライバー。
もう、がっかりさせないよ。
カラフル
色付いた未来と生活を
欲しがっていることさえ認めずに
現状維持に満足したつもりでいる
楽しみだよ
ひとりぼっちで始める
人生を取り返すための第二章
これからの将来は
モノクロから抜け出していますように。
刹那
後ろを見た。
崖になっていた。
前を見た。
道がなかった。
遠くを見た。
橋のようなものがあった。
すぐに歩き出した。
きっと壊れないと信じて。
数秒前の自分を
一つずつ捨てながら
今だ、と身を投げる。
全て捨てて
逃げ出していく
持続する安定を探して
一瞬の安心を求めて
コンマ何秒ごとに
私は生まれ変わっていく
生き直せるのは
今だけだから。