アクリル

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逃れられない呪縛


とうの昔に
全てを諦める段階など過ぎていました。

あの時、見晴らしのいい場所から 
飛んでいてもおかしくありませんでした。
手が痛くなるほど荷物を持たされて


「邪魔をしないことがお手伝いだ」
「何でもかんでも人任せにしやがって」
「全部自分でやるんだよ」
「あたしの言う通りにしてればいいんだよ」


エゴと大人の焦りに振り回されて
悪い人間に囲まれて
どこへ行っても疎まれていました。

薄暗い表情のまま
友達同士で遊んだこともありません。
ひとりぼっちに慣れて
それを鼻にかけるようになりました。

おひとり様、だなんて言葉が流行り出したことに
ひといちばい喜んでいました。

本当は寂しいこと
本当はおし黙ってしまう自分が嫌いなこと
本当は甘えてみたいこと
本当は頼りたかったこと

ひとりで声を殺して泣いたあの夜
本当は味方が欲しかったのです。

頼れる誰かが
寄りかかれる誰かが。

「頼ったら、絶対にお礼をするから」
「助けてもらったから、今度は私が助けるね。役に立てたらいいな」

そんな、人間らしい会話と
繋がりが
本当は欲しかったんです。


全部ひとりで抱え込んで
大人らしく生きる責任を
今だけは、放棄してもいいですか?

5/23/2023, 12:52:52 PM