星空の下で
墨を撒いたような視界と
ランタンのようなあなたの声
ねぇ、空に逃げようか。
月が太陽に変わるまで。
あなたの灯で
一歩先が少し明るくなったよ
私たちは立ち上がって手を繋いだ。
お守りに、とあなたが付けてくれた
耳元の小さな鈴が鳴った。
今夜、2人で探す生き先は。
エイプリルフール
この痛みを悟られたくない
認めたくない
こんなにあなたに惹かれてしまっていること
「全然興味ないよ」
強がって、あなたとの縁を守りたくて
私は不本意に嘘をつく。
見つめられると
横に座るあなたを
どうしようもなく大事に思った。
あなたは綺麗な目で
あたたかい声で
心地のいいテンポで言葉を紡いでいく
ある時、私たちは同じタイミングで笑った。
本当、楽しいよ。って
あなたはこちらをまっすぐに見て笑った
私は今、好意を学んでいる。
私は今、あなたを知ろうとしている。
毎秒、あなたを愛そうとしている。
バカみたい
吐き捨てた時
不信用の痛みが心臓に広がった。
2度とお前なんかと話さない
今後一切目の前に現れるな
こんなに必死になって
お互いを繋ごうとしていただなんて。
申し訳なかったよ。
もう遅いけれど、できることなら...
あなたと上手くやりたかった。
不条理
午後九時半。
見慣れた帰路の、古くさい繁華街を抜けた時、ふと言葉にならない何かを悟った。
合皮の剥がれた靴で向かうのは、ビルの影に建つアパート。
日に日に自分が消えていく恐怖。
毎朝起き上がった瞬間、心の何かが削れていくような感覚に、もう耐えられないと思った。
今日もわずかな金を握りしめて生き延びた。それだけだった。
僕は自室のドアで立ち尽くした。
錆びた鍵穴を前に、妙に生暖かいものが数滴垂れた。
頭の中で誰かの声がする。
僕の声だ。
「どうして」
「もう取り返せない」
「生い立ちを恨んで」
「捨てられないように」
「努力をしろ」
もういいや。
僕はスマホを取り出し、連絡先からあの人を探した。
そして、電話をかけた。
「あの、今夜、連れて行ってもらえますか」