アクリル

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1/31/2023, 9:55:23 PM

旅路の果てに


泥まみれの靴
聞き慣れた砂利の音
錆だらけの自転車

全てに負けて
最低限を背負って逃げ出した

今、隣で笑うのは
あれほど憎んだあの人
また繋がってしまった

本心では嬉しかった。
今更、それを喜べる関係ではないけれど。

1/30/2023, 4:41:23 PM

あなたに届けたい


言葉も仕草も
洒落たラッピングの箱も
こんな落ち着き払った声音で
不器用に隠されてしまう

直球しか知らない私の
へたくそな隠し事。

1/29/2023, 6:17:19 AM

街へ


この夏も
いつかの冬も
忘れた秋も
望まない春も

訪れないよ
足を踏み入れるなんて
今更許されないよ
待たせたままでごめんね

お互いに無関心でいましょう
あの待ち合わせの場所も
朽ちていくベンチの影も
頭の片隅にさえなくなった時

また会いましょう。

1/21/2023, 12:31:39 AM

海の底


水中は暗いことも
光は届かなくなることも
冷たさが終わりを作ることも

何も知らなかった頃
私は幸せだったはずだ
無知が救うことだってあったはずだ

中途半端な知性が
私を突き落とした
いつか習った浮力の仕組みも
何一つ役に立たなかった

抗うこともなく
ただ無気力だけを抱いて沈んでいった
しばらくして体温が消えたとき

陸では私が
一枚の紙になった。

1/19/2023, 4:48:28 PM

君に会いたくて


凡庸な言葉で誘ってみた

「あそぼうよ」

あなたは優しいから、いつもの優しい声で言った 

「いつにする?今日でもいいよ」

普段寡黙な私は、柄にもなく微笑んでしまった

「明日は休みでしょ、昼ごろ行くね」
「うん。待ってる」

いつも無口な2人の間を、そよ風が抜けていった。

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