お題:脳裏
君の笑顔が脳裏に焼き付いて、消えてくれない。
俺と居るときは、花が咲くような笑顔を見せてくれないのに、あの子といる時は幸せそうだ。
「やっぱり叶わないな…」
職員室の窓から君を見る。
君があの子と一緒に帰るところが見えた。
とてもお似合いだと思った。
悔しいけど完敗だ。
君のことを思ってるのは俺だという自負はある。
でも俺といる時よりも、君はあの子と居るほうが幸せに笑ってる。
『いいのか星野、クラスメイトに転校すること言わなくて』
担任が最終確認のように俺に聞いてくる。
「はい、お別れ会とか湿っぽいことしたくないんで」
『そうか、だがお前のことだから次の学校でも上手くやれるさ、元気でな』
今日で、この学校に来るのは最後だ。
学校を後にし一人帰路に着く、長かったこの学校生活も今日が最後だったのだ。
君と過ごした日々が脳裏に過る。
二人して馬鹿騒ぎした記憶、先生から叱られた記憶、ドンドン泉のように溢れ出す。
「じゃあな俺の初恋の人」
どうか願わくば君の頭の中に俺という存在の記憶が焼き付きますように。
お題:意味がないこと
『この世に意味がない事なんてないんだ!』
そう、少年アニメの主人公が言っている。
女は昼間菓子を食べながらテレビを見ている。
「意味がないこと何ていっぱいあるっての」
女はどこか皮肉めいた言葉を言いながら、菓子を食べている。
この女は、定職に付かずに生きている。
勿論、この女にも夢があった。
専門の学校に行き、夢のために努力した。
しかし、叶えたかった夢の仕事についた時、女は理想と現実の差を思い知らされたのだ。
人に感謝されればそれで良かったのだ。ありがとうと言われるだけで頑張れると思っていたのだ。
現実は残酷なもので、毎日来る客からのクレーム、同僚や上司たちの虐め。
女は耐えた、耐え忍んでまだ頑張れると思いながら、仕事を続けた。
でもある日、その糸はプツリと切れた。
そして彼女はもう頑張ろうとは思えなかった。
仕事を辞めた、頭を下げて辞めた。
そして彼女は人に合うのが怖くなり、家から出れなくなった。
そして現在に至る。
「私の努力と生きてることに果たして意味があるのかね」
女は考える、自分の努力と生きてる意味を。
しかし女は気づかない、今の自堕落な生活に意味がないことを。
女は早く気づかなければならない、彼女の努力は意味がないものになってしまうことに。
お題:あなたとわたし
あなたとわたしは違うもの。
わたしは格好良くて素敵なあなたに成りたくて、真似て真似てあなたにみたいに成ったのに、気づけばあなたは、私の真似をして、わたしみたいに成ってしまったのね。
可笑しいわ、結局あなたに憧れてわたしは、私を殺したのに目の前にはわたしが居る。
結局のところに人は無いものねだりなのかしらね。
貴方は、わたしに。私は貴方に成りたかったのね。
でも私はわたしを見てると、どこか歪で可笑しく見えるの。貴方もあなたを見てそう思ってるのでしょうね。
あなたとわたしは違う者なのにね。
きっと端から見るとずいぶんと滑稽なんでしょうね。
じゃあ今の私達は一体誰なのかしらね。
お題:柔らかい雨
今日も雨が降る。
ザーザーと降るような雨では無く、生物の恵みになるような優しい雨だ。
シトシトと穏やかに降っている。
こんな日は、家で雨音を聞きながら本を読む。
頁をめくる音と、雨の音、そして楽しそうに歌うカエルたち。
なんてことのない日常だけど、どこかいつもと違うような気がしてしまう。
この雨が止むまではこの非日常に少しだけ浸らせてもらおう。
お題:一筋の光
「もしさ、あたしが死ぬ時一緒に死んでくれる?」
突然、君がそう言ってきた。君がそんなこと言うなんて珍しい。
「うーん、時と場合によるかも。」ちょっとだけ考えさせてと私がそう言うと君は可笑しそうに笑うんだ。
「えーあたしは貴女と一緒ならいつだって死んでもいいわ」
「何だかプロポーズみたいだね。照れるかも」
そう言って他愛のないのことで話してましたね。
私は何てことないことで笑い合っていたあの頃が懐かしくて恋しいのです。
あれから私は妙齢の歳になりました。
でも貴方の時は永劫に動くことはないのでしょう。
「嘘つき、一緒にならいつだって死ねるっていったのに…」
あんなことを言ったくせに、死ぬ時は独りで逝ってしまったの。
貴女が居なくなって、私はこの世界で光を失った気分だわ。
貴女はいつだって私にとって一筋の光だったことに失って気づくなんてね…