その日の魔女は特に忙しかった。
この魔女は新しい道具を創るのに長けているから、他の魔女からあの道具を創ってくれ、こんな道具が欲しいと依頼を受ける事が多いのだ。
今日は、「野外に置いても衛生面に影響しないお菓子」と「華麗なドレスになる魔法を込めた杖」と「昏睡状態になる程度の毒リンゴ」と「天まで届く枝豆の種」を造らないといけないのだ。
今まで創った魔法道具のレシピメモをいくつも引っ張り出して転用できそうな魔法が無いか探していく。
新しい魔法道具のレシピを書いたら作業開始だ。
道具創りの始まりはいつも魔法の大釜に火を点ける事から始まる。
(始まりはいつも)
魔女の出てくる童話が多いから、魔法店みたいなのもあるかな?と思い立った。
鬼退治の為に都に向かって、お椀の舟でゆっくりと川を下っていく。このまま順調に流れて行けば3日程度で都に着けるだろう。しかし、腹が減った。
すると川岸に大きな桃が引っかかっているのを見つけ、急いで舵を桃に向けた。
もう少しで手が届きそうな時に、引っかかりが取れたのか桃が流れだした。
どんぶらこどんぶらこと流れていく桃を追いかけて行くが、桃は先に居たおばあさんが拾い上げてしまった。
お椀の舟はそのまま川の流れに流され桃から遠ざかって行く。
あぁ、腹が減った。
(すれ違い)
一寸法師の世界と桃太郎の世界が同じだった場合。
秋晴れの朝に思い立って、おにぎりを持って景色のいい丘へ出かけてきた。
頂上よりちょっとだけ下がったところに見晴台と東屋がある。
東屋には先客が3人居りお弁当を広げているので、見晴台に登って上でおにぎりを食べる事にする。
見晴台は地上から10M程の高さがあるが、しっかりとした作りと手すりのおかげで全く怖くない。
秋晴れということもあって風も穏やかで心地良いくらいだ。
カバンからおにぎりを2つ取り出して包みを開けていく。どっちから食べようかなと思った時不意に手が滑って1つ落としてしまった。
おにぎりは転がり手すりの隙間からスッと下に落ちていった。
慌てて見晴台から駆け下りる。
おにぎりは地面に潰れ、どこから来たか1匹のネズミが既に食べ始めていた。
普段ならネズミを追い払うだろうが、秋晴れの空に免じてそのまま食わせておく。
1つになったおにぎりは普段より美味しく感じた。
(秋晴れ)
おにぎりころりんのオマージュ、特にお返しは無い場合
忘れよう忘れようと意識してしまうとにより、深く記憶に残ってしまう。だから忘れられない。
どうでもいい忘れれる事ならもうとっくに忘れているはずだ。案外そういったいつの間にか忘れてしまったことの方が重要な記憶で、忘れたい記憶というのは重要でない記憶である事が多々ある。
1つ、忘れてたくても忘れられない記憶をここに書いておこう。
「キャンプで食べた、ドライカレーにスープカレーをかける暴挙と背徳の味」
(忘れたくても忘れられない)
生活の為、仕事の為とはいえ山奥へ入りすぎた。
帰路につく前に日は沈み暗くなってしまった山道を慎重に歩く。
見覚えのある竹林に出た辺りで光を放つ竹があることに気が付いた。
これは助かった。少しでも明かりがあると落ち着くのぅ。
そしてその光る竹を切る。
上下を切っても光は消えず、その明かりで無事に家に帰れた。
そのまま竹を部屋に入れるとやわらかい光でいつも暗い部屋が照らされた。
(やわらかな光)
かぐや姫のオマージュ、かぐや姫が入っている節を切らなかった場合。