秋晴れの朝に思い立って、おにぎりを持って景色のいい丘へ出かけてきた。
頂上よりちょっとだけ下がったところに見晴台と東屋がある。
東屋には先客が3人居りお弁当を広げているので、見晴台に登って上でおにぎりを食べる事にする。
見晴台は地上から10M程の高さがあるが、しっかりとした作りと手すりのおかげで全く怖くない。
秋晴れということもあって風も穏やかで心地良いくらいだ。
カバンからおにぎりを2つ取り出して包みを開けていく。どっちから食べようかなと思った時不意に手が滑って1つ落としてしまった。
おにぎりは転がり手すりの隙間からスッと下に落ちていった。
慌てて見晴台から駆け下りる。
おにぎりは地面に潰れ、どこから来たか1匹のネズミが既に食べ始めていた。
普段ならネズミを追い払うだろうが、秋晴れの空に免じてそのまま食わせておく。
1つになったおにぎりは普段より美味しく感じた。
(秋晴れ)
おにぎりころりんのオマージュ、特にお返しは無い場合
忘れよう忘れようと意識してしまうとにより、深く記憶に残ってしまう。だから忘れられない。
どうでもいい忘れれる事ならもうとっくに忘れているはずだ。案外そういったいつの間にか忘れてしまったことの方が重要な記憶で、忘れたい記憶というのは重要でない記憶である事が多々ある。
1つ、忘れてたくても忘れられない記憶をここに書いておこう。
「キャンプで食べた、ドライカレーにスープカレーをかける暴挙と背徳の味」
(忘れたくても忘れられない)
生活の為、仕事の為とはいえ山奥へ入りすぎた。
帰路につく前に日は沈み暗くなってしまった山道を慎重に歩く。
見覚えのある竹林に出た辺りで光を放つ竹があることに気が付いた。
これは助かった。少しでも明かりがあると落ち着くのぅ。
そしてその光る竹を切る。
上下を切っても光は消えず、その明かりで無事に家に帰れた。
そのまま竹を部屋に入れるとやわらかい光でいつも暗い部屋が照らされた。
(やわらかな光)
かぐや姫のオマージュ、かぐや姫が入っている節を切らなかった場合。
ジッと鋭い視線をぶつける。
今の気分、体調、懐具合と相談しながら陳列された品を見定める。
このコーナーに立ってからもう5分くらい経っている。決まらない。
周りからの邪魔だなという鋭い視線を感じながらも、自分の納得する物を選びたいのだ。
1度目を閉じて深呼吸する。
考え抜いた末にある1品に鋭い視線を集中させる。
よし、今日はこのモンブランケーキにしよう。
(鋭い視線)
秋らしくモンブランケーキが沢山売られていますね。
朝起きたら庭に大きな大きな木が育っていた。
雲の上まで高く高く伸びているその木はまだ育っているようで軋む音と共に樹皮が上へと上がっていく。
周りの土の栄養と、水分が心配だ。
近所の人も何事かと集まりだしている。
訳を話し近所中の除草剤を掻き集めてもらった。
協力して撒き終えると徐々に成長が止まっていき、急激に茶色く枯れだした。
支えが効かなくなったのかその木はゆっくりと傾き出している。倒れたら甚大な被害が出るだろう。
除草剤の代金も、被害への損害賠償も考えるだけでも高く高く想像できない額だろう。
(高く高く)
ジャックと豆の木のオマージュ、登らなかった場合