遠くの空へ
今自分は生きている。
でもあの人は死んでしまった。
生きていたときより、身近に感じる。
本当に近くに居て私を見ているような…。
それは見守ると言うよりも執着。
愛と言うより渇愛。
そちらの景色はどうですか?
この世の世界はどんなふうに見えますか?
言葉にしなくても、想っただけで夢に出るのはなぜですか?
何か伝えたいことがあるのですか?
それとも迎えに来ているのでしょうか?
もし、本当に迎えに来たら…自分はどうするのだろう。
いつ死んでも良いと思っているくせに、いざ突然あの人が迎えに来たらついて行けるのだろうか?
愛は何処にあるのか?
そもそも愛はあったのか?
最も信じられない人間は自分自身。
心から愛した人は誰?
みんな心から愛してくれた。それは嘘のない真心だと…嘘つきな自分でも感じた。
みんなはどう感じたのか?
信用出来ない女でも、なんの得が無く見返りが無くても、彼らは愛してくれた。
遠くの空にはあの頃一緒に見た月が同じように光っている。
ぬるい炭酸と無口な君
自分は、それ程年寄りではないけど…
この年になって振り返ると幾人かの大切な人達を見送ってきた。
忘れてしまってほとんど思い出すことのない人、
忘れたつもりなのに突然夢に出てくる人、
気づけばいつも何処かで探し続けている人、
時々側に温もりを感じる人…
それらはまるでぬるい炭酸…
気は抜けているのに存在感ははっきり感じられる。
何か問いかけても、夢に突然出てきても貴方達はいつも無口。
自分もいつかは消えて…何処に逝くのだろう。
炭酸の泡のように空気の中に人知れず消えて生滅するのかな?
胸の奥の熱い想い
血が滲むほどの耐え忍ぶ辛さ
腹の底から絞り出す叫び声
今此処にいて自分を感じ、肌で生を感じ、心臓の鼓動を感じる。
時の流れは、時に優しく、時に残酷で
気づかないように緩やかに鈍感にぼやけていく。
その御蔭で感受性もぼやけていくから、どれだけ自分が崩れていってもわからない。
忘れた事も忘れ果て、忘却の彼方
ぬるい炭酸の泡
無口な自分
穏やかな生と死の狭間
タイミング
何故あの時…分からなかったのだろう
何年も経って何故このタイミングで
後悔ばかり…
そんなものかもしれない…生きる事は…
その時はわからない
過ぎてから、何年も経ってから
全て終わった後でしか気づかないのだ
真昼の夢
鼻歌を歌うと後ろから、いい気になってると転ぶよ…お前はそんなお気楽な人間の資格はあるのか…
どんなに楽しみな事が明日あったとしても、迂闊にウキウキは出来ない
そんな私、今ウキウキしている。
嬉しくて楽しみで…慣れないけれどいつの間にか微笑む自分に戸惑っている。
夢…なんだろうか
起きているのに夢を見ているみたい
知らない事を学ぶ喜び
初めての事だらけでオロオロするけど、そんな自分は思いっきり謙虚に
素直になれるのだ。
歳も経験も傲慢さもバリバリーと剥がし、頭を下げて手をついてかしこまる。
それなのに、嬉しい…。
知らない世界、驚きの学び、新しい発見、カルチャーショック。
自分はまだまだ未熟者。
真昼の夢を見始めた頃
枯木に小さな新芽が出る時
思いっきりいい気になろう。
いい気になって転んだら思いっきり
笑い飛ばそう…。
生きることは楽しいんだと…こんな時代が訪れることを、二度と笑うことは無いと思っていたあの頃の自分に伝えられたら…
青い風
…ちゃん?
見知らぬ人から声を掛けられた。
名前を言われ直ぐ思い出したけど、
顔が出てこない。
何十年ぶり…小学生の時の事覚えていてくれた。
エピソード付きで…。
私にはまるっきり身に覚えがなく、
親しかった記憶もない。
でも可愛くて良い子だということだけはしっかり覚えていた。
少し疲れ気味な表情だが、裏表のない親しげな彼女の話に久々に興奮していた。
お互い全く関わりのない見知らぬ人生の折り返しで、偶然再会した。
人と関わらないように生きているのに何故か嬉しくて。
苦労したのだなと、そして今も大変そうな毎日が伺い知れる事を知り、
思わずライン交換していた。
いつでも話聞くからと…
あぁどうか傲慢になりませんように、彼女を傷つけませんように。
まっさらの子供の頃に戻ってやり直しが出来るなら、後悔だらけの人生だけど少しでも誰かと温かい付き合いが出来ますように。
笑顔で別れた跡に青い風が吹いていた。