海街 鯨

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5/26/2024, 10:33:16 AM

「先生っ!」

おかっぱ頭の少女が、窓に腰をかけている『先生』という女性に声をかけた。

「おや。十花じゃないか。」

先生は優しい声色で、長女の名を呼んだ。
両者ともに美しい青色の瞳だった。

「祭りの日だよ?下の子達と一緒に遊んでおいで」

先生は、なだめるようにして少女に言う。
少女は眉間にしわを寄せた。

「馴染めなかったのかい?一華も八花も居るのに」

先生は心配しているようだった。

「いっいえ!そういうわけではありません!
 ですが、
 祭りの雰囲気があんまり好きではないのです。」

「はははっ」

先生は、鳩が豆鉄砲をくらったような顔したが即座に笑顔へと変わった。
優しく少女の頭を撫でる。

「そうか。そうか」

「先生。先生は何をしておられたのですか?」

頭を撫でられて幸せそうな顔をそのままに、少女は疑問を問う。

「お星様に願いを込めているのさ。
 お前達がいつでも幸せに生きますようにと」

先生は、窓の外の星を見つめた。

「楽しいのですか?」

「嗚呼。お前はきっとわかるから」

5/26/2024, 2:13:30 AM

雨、止まないかなぁ。

5/24/2024, 10:26:41 AM

抱きしめた。
物事の全てを覆い隠すように強く優しく抱きしめた。

なぜ?

なぜなのだろう。

よくわからないけれど、

腕の中の私は泣いていた。



「大丈夫。大丈夫。」

優しく背中を撫で優しい声を耳元に落とした。

「辛いのはいつまでも続かない。辛い分だけ幸せは訪れる。あなたはそれを待てばいい。」

「大丈夫。大丈夫。」




───腕の中の私は泣いていた

5/23/2024, 10:12:52 AM

「洒落喰一族」

その一族に産まれれば、その呪縛から逃れることはできない。


私は自由ではなかった。


いや、一族全員が自由ではないのだろう。



御三家の次に並ぶ、九つの家の一つ。


一条家の長女として生まれた私は、人としての生き方を知らない。






10歳で当主になった時、背中には蝶紋様の焼印を入れられた。


12歳の時、師匠から一品のペンダントを受け継いだ。


15歳の時、洒落喰一族御当主様から赤色の髪飾りをいただいた。


20歳の時、元一条家当主こと父から
一条当主としての証の耳飾りをいただいた。



これら全ては私を強く縛り付けた。




5/22/2024, 10:04:26 AM

まどろみの中、目を開けた。

体にへばりつく溶液を必死に振り払おうとしても、離れてはくれない。

“先生”は、私のことを“ベクトル”と呼んだ。

上からくる薄暗い光に照らされて、



ポラリスと言われる実験体カプセルの中で

私はただ、耳をすませた。










No.0883─「最後の受信」

お題「また明日」

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