海街 鯨

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「先生っ!」

おかっぱ頭の少女が、窓に腰をかけている『先生』という女性に声をかけた。

「おや。十花じゃないか。」

先生は優しい声色で、長女の名を呼んだ。
両者ともに美しい青色の瞳だった。

「祭りの日だよ?下の子達と一緒に遊んでおいで」

先生は、なだめるようにして少女に言う。
少女は眉間にしわを寄せた。

「馴染めなかったのかい?一華も八花も居るのに」

先生は心配しているようだった。

「いっいえ!そういうわけではありません!
 ですが、
 祭りの雰囲気があんまり好きではないのです。」

「はははっ」

先生は、鳩が豆鉄砲をくらったような顔したが即座に笑顔へと変わった。
優しく少女の頭を撫でる。

「そうか。そうか」

「先生。先生は何をしておられたのですか?」

頭を撫でられて幸せそうな顔をそのままに、少女は疑問を問う。

「お星様に願いを込めているのさ。
 お前達がいつでも幸せに生きますようにと」

先生は、窓の外の星を見つめた。

「楽しいのですか?」

「嗚呼。お前はきっとわかるから」

5/26/2024, 10:33:16 AM