名無しさん

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10/28/2025, 7:32:32 AM

お題 『消えない焔』

「お誕生日おめでとう!!!」
寝起きの私には大きすぎる声量で、
誕生日を祝われたはずの私は顔を顰めた
「……うるさい、いま何時だとおもってるの」
寝ぼけ眼を擦りつつそういう私に悪びれもなく
「午前0時ぴったり!」
と、ドヤ顔でピースサインをするので、怒りを通り越して呆れてしまった
こんなやり取りも、今日で数年目
騒がしい声で渡されたのは、シンプルなキャンドル
前に私が欲しいと言っていた、スノードームみたいで可愛らしいもの
数年経っても私の趣味を無視したプレゼントを送ってきてたのに、今年はまともすぎて
流石になにかあるのではと勘ぐってしまった
「今回はまともみたいだけど、どうしたの」
「えー?いっつもまともでしょ?」
無自覚だったのか、と呆れが来るが、そうではない
そもそも、去年は私の食べれない激辛スナック菓子、その前の年はポテチの柄がプリントされた靴下など……
可愛いもの好きな私にはあまり好みでは無い、絶対に自分の好みで選んだな、というラインナップだったのだ
自分でもしょうがないとは思っているが、流石に言いすぎたかもしれない
素直に謝って、嬉しいと感謝を告げると
そっちこそ素直すぎて怖いと言われたが
いや、そっちの方が酷いだろと思った

そんな相手も、もう居ない
1人になった部屋で、お誕生日おめでとうと自分に言う
なんだか広々とした部屋で、去年とは違う誕生日を迎えた

あの時貰ったキャンドルは、まだ使えていない





「おじゃましまーっす!」
「うるさい、いま何時だとおもってるの」
「ケーキ買ってたら遅れちゃったー!」
一人で迎えた誕生日の静けさは、次の日にことごとく打ち砕かれた
一人暮らしをしたからと、あまり出入りしなくなったから
誕生日に来てくれるのが嬉しいだなんて、一生言ってやるものか

少しだけ、ほんの少しだけ
あの時みたいに心が暖かくなった気がした
表現が違うかもだけど
これが心の焔、というものなのかもしれない

10/25/2025, 6:34:28 AM

お題 【秘密の箱】

年末も近づいてきたから、大掃除でもしようか
そう思って整理をしていたら、見覚えの無い箱を見つけた
花の彫刻が施されたシンプルな木箱
傾けてみると、硬い物がぶつかったようで
からからと音を発している

「……なにこれ」
考えても仕方がないし、お母さんなら知ってるかも
一旦机に置いておき、掃除を再開する事にした

掃除機をかけて、荷物を整理して、と
色々やっているうちにご飯の時間になったようで
呼びに来たお母さんが箱を見つけた
「あら、その箱どうしたの」
「掃除してたら出てきたんだけど、私のじゃないと思う」
お母さんも知らないようで、2人して首を傾げる
「お父さんのへそくりかしら」
「それなら私の部屋に置かないでしょ」
彫刻されている木箱といえば、昔っぽい
そんな偏見により、おじいちゃんのかも、と言葉を発すると
あ、とお母さんも思い出したように言葉を発した
「それ、私のお父さんの写真入れ」
「写真入れ?」
写真好きだったのよー、なんて懐かしそうに話すお母さん
傾けた時にからから鳴っていたので、私は半信半疑だ
本当にそうなのか確かめるべく、2人して木箱に向き合った
が、全くと言っていいほど開く気配がない
中に入ってる写真の種類くらいは聞くか、と思ったものの
お母さんもなんの写真かは知らないらしい

秘密の箱は、今もなお開けずに残っている
秘密の箱というより、開かずの箱でしょ
そう言った自分の娘に、私は少し笑いが漏れた

10/4/2025, 12:46:52 PM

「今日だけ許してっ、まじで緊急事態なんだってば」
「……で、約束をすっぽかすほど重要なことって何?」
電話越しに慌てた声を聞きながら、淡々と彼女に遅刻のわけを問いかける。
約束の時間からもう30分が過ぎているのだ。
さすがの私でも我慢の限界である。
「……真剣な話だよ。冗談じゃないからね」
重々しく口を開いた彼女に、適当に相槌を打つ。
「うんうん、分かったよ。」
それを肯定とみなした彼女は、大きく息を吸い込み、
「道端で倒れてたおばあちゃんの財布が取られて、取り返すのに時間がかかったの。」
と、なんとも突飛なことを話し出した。
嘘でしょ、と乾いた笑いが零れる私に、トドメの一言。
「あなたのお祖母様なんだから、電話でもして確認したら」
素っ気なく言った彼女の言葉に、私はその場から動けなくなった。
「……本気で言ってる……?」
「全部ほんとだよ」
「……まじかぁ……」
彼女はバレる嘘はつかない。それは私が一番理解している。
だからこそ、自分の祖母が関わっているという事実に目眩がした。
「ごめん。菓子折り持ってお礼するわ。」
「もう貰ったしいいよ。謝礼金でパーッと遊ぼうじゃないの」
電話越しにでも伝わる上機嫌さに、釣られて笑ってしまった。
その日、彼女と祖母の金を使って豪遊というもう二度と体験することの無いようなものを味わったのだが、それはまた別の話である。