太陽のような
『太陽のようなあなた。いつも明るく笑っていて元気
な人。どんなに辛くても、みんなの期待に答えようと
して、本当の自分を出せずにいるあなた。本当は苦し
いのに、辛いのに、みんなの太陽でいるために一生懸
命に涙を堪えて笑っている。だから、あなたがひっそ
り泣いているのを見て、私はあなたの太陽になろうと
思いました。』その手紙を見ると、視界がぼやけて文
字が見えなくなります。手紙に滲みができて、私の太
陽であったあの人を思い浮かべるのです。いつも私に
笑いかけてくれて、あの日も自分が女子トイレに入っ
たことは内緒だと言いながら私の目元をハンカチで拭
ってくれました。あの時から、いやそれより前から彼
は私のヒーローだった。どんなに辛いことがあっても
彼がいたから私も笑っていられた。彼にとって私が太
陽であったように私にとって彼は太陽だった。
『バレンタイン』
義理チョコだと偽ってあなたに渡す本命チョコ。
『幼馴染み』友達としては近いのに,好きな人になっ
た途端急に遠くなる。だから私は今年もあなたにマカ
ロンを渡す。あなたが意味を知っているかはわからな
いけれど。手作りのものをもらう貴方のお菓子の中じ
ゃ霞んで見えるかもしれないけれど。私はマカロンに
想いを託して今年もまた、貴方に嘘を吐く。
I LOVE…
I LOVE YOUを「月が綺麗ですね』と訳したのは夏目
漱石だったか。文豪はあまり詳しくない。けれど、や
やこしい話だと思う。シンプルに月が綺麗だというこ
とを伝えたいのに勘違いされたらたまったものじゃな
い。だけど私はその間接的な表現が好きだった。
「月が綺麗ですね」
真横から聞こえてきたその声に気づくのがワンテンポ
遅れた。横を見ると顔を真っ赤にした君がいて、マフ
ラーに顔を埋めている。だから私はこう返そう。
「私は死んでも構わない」
部屋の片隅で
部屋に溢れるたくさんの箱。思い出の品を見返しなが
ら必要なものだけ詰めていく。小学校時代のアルバ
ム、友達とした交換日記、好きな人に渡せなかったラ
ブレター。沢山の思い出が出てくる。最後はこの棚
を片付けて終わりだ。棚をどかすと部屋の片隅の方に
光るものが見えた。拾い上げてみるとアイツからもら
ったおもちゃの指輪だった。まさか今出てくると
は、、、まあこの指輪にはもう用はない。私は今日こ
こを出ていく。この指輪もあの頃の思い出と一緒にこ
こに置いていこう。そして私は新しい新居へと向か
う。母の「辛くなったらいつでも帰ってきなさい。ま
ぁ、小さい頃から大好きだったからなんの問題もない
だろうけどね」という言葉を聞きながら。そんな私の
薬指にはアイツからもらった指輪が光っていた。
眠れないほど
私は貴方を愛していた。けれど、それはあの頃は許さ
れない恋だった。ずっと愛していたのに。私の身分で
は愛せない人だった。そして、先週彼女が亡くなっ
た。それ以来私の夢には彼女が出てくる。そして最後
には必ずいなくなってしまう。私はその夢を見るのが
怖かった。あんなにも愛していたのに。今の私は貴方
に会いたくなかった。あの頃の私は眠れなくなるほ
ど、貴方のことを考えていたのに。今となっては夢の
中で貴方に会いたくない私は眠れない。今でも私は貴
方に縛られている私はベッドの上でそう実感しながら
左手の薬指にある銀色の輪を見つめていた。