夢と現実
皆さんは夢だとわかる夢を見たことがあるだろうか。
世間的には明晰夢というらしい。
わたしはその明晰夢というものを何度か見たことが
ある。確かあの日わたしが見た夢はひどく冷たくて、
でも、どこか暖かい夢だった。今日はそんなわたしの
夢を紹介しようと思う。
その夢は大好きだったあの人に会えて、わたしはひど
く喜んでいる夢だった。だけど、夢の中のわたしは彼
の声が聞こえなかった。顔にも靄のようなものがかか
っていてはっきり見えない。あぁこれは夢なんだと実
感する。いや。最初から夢だと気付いていた。だって
今はもうあなたには会えないのだから。夢から覚めた
わたしは黒い四角に覆われた彼の写真に手を合わせ
た。
目が覚めると
目が覚めると外が薄暗かった。スマホで時間を確認し
てみるとまだ5時前。そりゃ薄暗いわけだ。久しぶりに
この時間に目が覚めた。まだ完全に覚めきっていない
目にスマホの光が沁みる。日付を確認すると今日は土
曜日。休日のこの時間に目が覚めるなんて、と思われ
るかもしれないが生憎こっちはフリーランスの人間
だ。仕事がある。この時間に目が覚めたんだからさっ
さと仕事を終わらせてしまおう。昨日急遽納期を縮め
てきた取引先には爆発してもらいたいがこれも仕事の
うち。やらなくてはならない。今の私は何故か気分が
いい。さっさと終わらせて少しは自分の時間にしてみ
よう。散歩に出かけるのもいいかもしれない。気分転
換に外で散歩してから仕事をしよう。
梅雨
私は梅雨の時期が嫌いだ。雨が嫌いだから。髪はうね
るし、頭も痛くなる。おまけに登校するときだってど
れだけ気をつけても水たまりを踏んでしまう。勿論中
はぐっちゃぐちゃ。げちょげちょしていて気持ち悪
い。傘を持たないといけないから片手は塞がるし、雨
なんていいことない。
「佐藤さん」
びっくりした。
「どうしたの?朝倉くん」
「ごめん。傘入れてくれない?」
前言撤回。雨様!大好きです。好きな人と相合傘出来
るきっかけくれるとか感謝です。
「え、あ、いいよ。」
「ありがとう」
その時、私は彼と恋人になった。だから、梅雨が好き
になったのに。なんで、なんで貴方は、今、他の女の
子と一緒の傘にいるの?どうして恋人みたいに肩を寄
り添いあって笑いあっているの?こんな時にも、雨は
冷めきった私の心をあたためようとするんじゃなく、
どんどん冷やしてくる。ああ、でもいいかも。泣いて
るのが気付かれない。
「だーから言ったろ。アイツはやめとけって」
急に視界が黒く覆われる。暖かい。アイツの声が聞こ
えた。幼なじみだけど私が嫌いな雨の文字を持ってる
男。時雨、時雨青磁。雨を持ってる。だから私はコイ
ツが大嫌い。ずっとずっと私をからかってきて。バカ
にしてきて。だけど、私が本当に辛い時そばに居てく
れるコイツ。嫌いなのに。嫌いなはずなのに。なん
で、こんなほっとしてるのよ。
天気の話なんてどうだっていいんだ。
僕が話したいことは、
いつからだろう。嫌いだった雨が好きになったのは。
嗚呼あの頃からだ。雨にならないと会えない貴方に出
会ってから。いつだって雨の日にしか会えなくて、喋
れなくて、話したいことはいくらでもあるのに。出て
くる話は天気の話ばかり。もっと話したいのに。たく
さんの思い出を。貴方が見ていない今までを。話した
いのに、いざ目の前にするとなにも出てこない。だか
ら、俺は天気の話をすることしかできない。貴方が好
きだった晴れの日の話をすることしか。こんなに大き
くなったんです。貴方がいなくても、俺はここまで大
きくなれました。でも、その過程を見ていて欲しかっ
た。そろそろ貴方の2人目の孫が生まれます。クソ親父
も元気にやってます。貴方が愛してやまないクソ親父
は孫ができてピンピンしてます。貴方が亡くなって3
年。33回目の命日を迎え、雨になっても貴方は見えな
くなりました。次来るときは、貴方の孫、連れてきま
す。クソ親父も。だから、ちゃんと、俺らのこと見守
っててください。
天国と地獄
『僕は人を殺めました。』
愛してやまない貴方のことを。
人は、誰かを殺すと地獄に逝くと言いますが、僕は天
国にいるんです。不思議なものですね。そして、僕が
殺したあの人は、殺された側の人間なので、天国に居
るはずです。ですが、ずっと彼が見当たらないんで
す。どれだけ探しても見つけられません。僕は、貴方
がいないとダメなのです。たとえ殴ってくるとして
も。乱暴に抱いてくるとしても。僕は、貴方がいない
天国など、地獄なのです。だから、だから、お願いし
ます。戻ってきてください。僕が死にそうになってし
まった事謝ります。貴方に斬られた手足は、もう痛く
ありません。僕のせいで死んでしまったんですよね。
許してください。周りの人間はみんなあんな奴が死ん
でよかったね。地獄から解放されるよ。というんで
す。でも、僕は、貴方がいない天国など地獄に等しい
のです。だから、だから!お願いします。戻ってきて
ください。