梅雨
私は梅雨の時期が嫌いだ。雨が嫌いだから。髪はうね
るし、頭も痛くなる。おまけに登校するときだってど
れだけ気をつけても水たまりを踏んでしまう。勿論中
はぐっちゃぐちゃ。げちょげちょしていて気持ち悪
い。傘を持たないといけないから片手は塞がるし、雨
なんていいことない。
「佐藤さん」
びっくりした。
「どうしたの?朝倉くん」
「ごめん。傘入れてくれない?」
前言撤回。雨様!大好きです。好きな人と相合傘出来
るきっかけくれるとか感謝です。
「え、あ、いいよ。」
「ありがとう」
その時、私は彼と恋人になった。だから、梅雨が好き
になったのに。なんで、なんで貴方は、今、他の女の
子と一緒の傘にいるの?どうして恋人みたいに肩を寄
り添いあって笑いあっているの?こんな時にも、雨は
冷めきった私の心をあたためようとするんじゃなく、
どんどん冷やしてくる。ああ、でもいいかも。泣いて
るのが気付かれない。
「だーから言ったろ。アイツはやめとけって」
急に視界が黒く覆われる。暖かい。アイツの声が聞こ
えた。幼なじみだけど私が嫌いな雨の文字を持ってる
男。時雨、時雨青磁。雨を持ってる。だから私はコイ
ツが大嫌い。ずっとずっと私をからかってきて。バカ
にしてきて。だけど、私が本当に辛い時そばに居てく
れるコイツ。嫌いなのに。嫌いなはずなのに。なん
で、こんなほっとしてるのよ。
6/2/2023, 10:40:22 AM