「遠い日の記憶」
僕は色んなことを経験したから、都合良く事が運ばないことは知っている。
何年も前の話だ。
僕は予防接種が大の苦手だった。
注射を打つくらいなら死にたいと思うほどに。
だから、
どうにかして注射を打たなくていい方法を考えた。
子供の発想だから今考えるとバカらしいが、
当時は真剣だった。
医者に挨拶をすればいい子だと思われ、
注射を打たなくていいと思ったんだ。
つまり注射は、
悪い事をした子供が打たれるものだと思っていたんだ。まぁそんなことは上手くいくはずもなく、
普通に打たれた。
その日の夕食は僕の大好きなお寿司だった。
都合のいいことなんてない、
でも予期していない良い事は起こりうる。
僕に大切なことを教えてくれるのはいつも、
遠い日の記憶
「空っぽ」
海と空はどこまでも競争している。
走っているのか、歩いているのか、
それは分からないが競争してる。
その競争は目が奪われる程に激しく穏やかだ。
潮を使って負けんとする海
風を使って食らいつく空
果たして本気なのかな。
海が本気を出せば津波と自信が
空が本気を出せば竜巻と豪雨が
そんな戦いを前に僕の心は空っぽさ
「終わりにしよう」
街に明かりも物音もひとつも無い。皆家の中で身を守っている。これから始まる地獄を前に。
僕の父は軍の統率を担う団長だ。年に一度の戦場から帰ってきて、次の日の朝にはまた行ってしまう。帰ってくる度に家族は安心し、喜びに満ちた表情で食事を囲む。僕は疑問だった。なんで戦争というものが行われてるのか。なぜ、誰もそれを止めようと思わないのか。ひたすら疑問を抱いがそれを父に聞くことは出来なかった。聞いたら何か大切なものを傷つけてしまう気がしたから。僕は16になった。兵士として戦場に出なければいけない。父は3年前に他界した。最後に聞いた言葉はこうだ、「お前は戦争に出なくていい、ここで平和に暮らしていなさい。汚れた仕事だ。きっと満足に食事もできないだろう」。そう言って、歩いていく父の背中が最後の記憶。僕は知りたかった。だから兵士になった。戦争が耐えない理由、なくそうとしない訳、それらを知らないと僕は平和に暮らすことなど出来ないと感じていたんだ。
戦場に立ち、人を殺し、戦果をあげ、昇格し、僕は軍曹という地位にたった。上の者と接する機会が増えた。そこで気がついた。この世から戦争が消えないのは、戦争が好きな頑固な老いぼれが、命令をしていたからだ。戦争は儲かる。武器を売れば儲かる。勝てば賠償金を貰える。こんなにいいビジネスは無い。でも、反吐が出るほど腹が立つ。こいつらは国民の生活を知らない。知らないからこんなことをしているんだ。知っていたら戦争なんて出来ない。国民を苦しめ、国のためと丸め込み、権力という暴力を使い、反抗できないようにする。ゲスの極みだ。クズの権化だ。
僕は死んで行った仲間たちに誓った。この老いぼれを片付けて、僕らが上に立つ。戦争はジジイが出ればいいだろう。人数は有り余ってるんだ僕らの儲けのために散って貰おう。そして、平和な世界をみんなで作ろう。
だから、もう終わりにしよう。
「優越感」
自分は他人より優れてる。
自分は他人より恵まれてる。
自分は他人より凄いんだ。
そうやって他人を下に見ていた。
みんなもそうだった。
誰しもが自分の方が優れていると考えた。
それは、
この理不尽な世界で自己を
保つ方法がそれしか無かったのだ。
あの上司は上からものを言うだけで使えないとか、
あの人は自己中心的だからいつも怒ってるんだとか、
他人を下に見る。
自分の方が実際優れてる。
それ故に生まれる優越感。
「劣等感」
自分と他人はどちらが上だろうか。
自分が上という者は決まっていつかヘマをする。
自分が下という者は上の者のために努力する。
どんな理不尽も笑顔で答える。
その生き方は、
人として成長するし、壊れる。
自分を下に見ることは、間違いでは無い。
自分を上に見ることも、たまには必要。
君は花壇で言う所の土だ。
土は綺麗に美しく咲いている花を支える土台。
君は劣等者、踏み台にされる存在。
この考え方は自分を下に見ている。
君は花を支える大切な土で必要な存在。
この考え方は自分を上に見ている。
劣等感を感じるなら、
劣っている自分の力が、
最も発揮されることに力を入れろ。
君は劣っているが必要なんだ。
「これまでずっと」
自分は何も無い、自分はつまらない人間だ、
そう思ったことはあるかい?
僕は何度もあるよ。
失敗と後悔は誰よりも経験していると思う。
そんな僕が生きる上で、気持ちが下がり辛くなった時に考えてること、自分に言い聞かせてることがある。
それは、生きている上でもっとも大切なことは
経験をするということ。
経験したことが必ず何かに生かされる。
母親の手伝いで包丁を初めて握ったこと
父親のあとを追いかけ様々なところに行ったこと
何でもいいんだ。
経験した、それが大切なんだ。
何かを経験したかそう出ないかでは、
人としてのレベルが大きく違う。
自分は他人とは大きく違うんだ。
だから、経験するために挑戦するんだ。
これまでもこれからも