俳句er

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「終わりにしよう」
街に明かりも物音もひとつも無い。皆家の中で身を守っている。これから始まる地獄を前に。
僕の父は軍の統率を担う団長だ。年に一度の戦場から帰ってきて、次の日の朝にはまた行ってしまう。帰ってくる度に家族は安心し、喜びに満ちた表情で食事を囲む。僕は疑問だった。なんで戦争というものが行われてるのか。なぜ、誰もそれを止めようと思わないのか。ひたすら疑問を抱いがそれを父に聞くことは出来なかった。聞いたら何か大切なものを傷つけてしまう気がしたから。僕は16になった。兵士として戦場に出なければいけない。父は3年前に他界した。最後に聞いた言葉はこうだ、「お前は戦争に出なくていい、ここで平和に暮らしていなさい。汚れた仕事だ。きっと満足に食事もできないだろう」。そう言って、歩いていく父の背中が最後の記憶。僕は知りたかった。だから兵士になった。戦争が耐えない理由、なくそうとしない訳、それらを知らないと僕は平和に暮らすことなど出来ないと感じていたんだ。
戦場に立ち、人を殺し、戦果をあげ、昇格し、僕は軍曹という地位にたった。上の者と接する機会が増えた。そこで気がついた。この世から戦争が消えないのは、戦争が好きな頑固な老いぼれが、命令をしていたからだ。戦争は儲かる。武器を売れば儲かる。勝てば賠償金を貰える。こんなにいいビジネスは無い。でも、反吐が出るほど腹が立つ。こいつらは国民の生活を知らない。知らないからこんなことをしているんだ。知っていたら戦争なんて出来ない。国民を苦しめ、国のためと丸め込み、権力という暴力を使い、反抗できないようにする。ゲスの極みだ。クズの権化だ。
僕は死んで行った仲間たちに誓った。この老いぼれを片付けて、僕らが上に立つ。戦争はジジイが出ればいいだろう。人数は有り余ってるんだ僕らの儲けのために散って貰おう。そして、平和な世界をみんなで作ろう。
だから、もう終わりにしよう。

7/15/2023, 1:03:15 PM